個別銘柄の投資戦術①【長期投資の場合】で紹介したのは、個人投資家にとって株式の適正価格を見極めるのが大変難しい為に取る方法の一つです。日本株ではオリンパスで起きた不祥事が一つの事例になるかと思います。
株の購入タイミングや適正価格の判断はそもそも容易ではありません。加えて、日本市場では長期投資で利益を上げることもそれほど容易ではないように思います。米国に比べ、日本市場の方が難しいため、僕は日本市場では短期投資と中期投資をしているのです。最近は上昇が続いているので実感がわきにくいかも知れませんが・・・。僕の一つの意見ではありますが、最後まで読んで頂けると嬉しいです。
リーマンショックの前に、例えば、武田薬品のネームバリューや配当に魅かれて購入した人は最近までずっと株価が購入価格を下回っているかと思います。JR東日本、みずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャルグループ、三菱商事、住友商事、三井物産、丸紅、ホンダ、日産、東芝、小松製作所、DMG森精機、三菱マテリアル、AGC、住友化学、石油資源開発、なども日本を代表するような銘柄ですが同様にマイナスですね。買うタイミングによっては優良企業でも10年以上経ても株価が戻らないこともあります。そして、それは日本において珍しい話ではないと思います。
1989年12月29日に日経平均終値は38,915円87銭をつけました。この時に日本の市場に上場していた銘柄を買った場合、2020年末時点でも引き続き上場している銘柄の、凡そ三分の二程度が値を戻していないそうです。1989年末に投資をした人が仮に保有株を損切りできたとしても、人間の心理として、その後に下がった場面で買いを入れた可能性は十分にありますね。そして、同じパターンでその後も売買を繰り返してズルズルと損失が拡大したかも知れません。これが株の恐ろしいところだと僕は思います。
一方、同じようなタイミングで米国に投資をした方々は、多くの場合、すばらしいリターンを得て、億り人になったというケースもあるかと思います。何故でしょうか。
これは米国の成長と適切な物価上昇の両方からの恩恵があったように思います。額面的な円高進行の影響は軽微でした。米国は国として金融リテラシーが高かったのだろうと思います。
計算を簡単にするために仮に米国の物価が年率平均1.5%、日本が0%としてみます。30年で米国の物価は約1.56倍になります。そして実質GDPが年率平均2%で成長したとすると更に格差は拡がりますね。この間、為替は円高となりましたが、1.56倍になったわけではありません。1989年のドル円は142円くらいでした。現在109円とすると、単純計算では円はドルに対して1.3倍になっただけですね。単純化した世界ではドル円が今91円程度であれば購買力が維持されたことになります。
それにしても、米国では、物価上昇だけでも、上の想定では30年の間に1.56倍になり、同時にGDPが成長してS&P 500が年率8%程度で上昇したわけです(上の想定では物価上昇を差し引いても年率6.5%)。GDPに占める雇用者収入は50%程度だど思いますので、当然、米国では給料も上がっていることになります。日本のGDPは同レベルですから、当然のように我々の給与も30年間ほとんど変わっていない状況です。
当時の米国国債の利率は8%程度だったと思いますが、仮に30年間、国債で運用していたとしても10倍、S&P 500でも10倍ですね。米国民は国の恩恵を受け、投資家は米国から資本主義の恩恵を受けたのです。米国では経済危機が起きた後も、日本ほど長期に株価が低迷しなかった為に、投資における自信喪失も免れたのかも知れません。これは米国の市場が世界最大であり、様々な参加者が市場を活性化した結果だと思われます。
過去を見る限り、日本市場で長期投資を成功させることはかなり難しい戦いだったと思います。日本でお金を持つ人たちにとってデフレはお金の価値が上がるから悪くはない、という話もあったようですが、事実ではないと思います。
過去10年の米国消費者物価指数や実質GDP成長率は以下のグラフの通りです。
米国消費者物価指数の推移
<CEIC HPから抜粋>
米国実質GDP成長率推移
<CEIC HPから抜粋>
今後、日本の成長を信じているならば、マクロ経済の環境とともに、その成長に貢献する会社を見つけるのが正攻法ですね。過去30余年で株価が上がった企業が三分の一だったとすれば、多くの企業でPBRが低いのは市場の評価を的確に表しているのかもしれません。PBRが1.0を下回る企業は、減損処理をしてもおかしくない資産があると評価されていることになります。減損処理は一般的に経営の失敗と考えられていますので、かなり手厳しい評価だと思います。
ちなみに過去30年で大きく株価を上げた銘柄はニトリ、日本電産、キーエンス、HOYA、ピジョン、ユニチャーム、東京エレクトロン、ディスコ、村田製作所、等々です。ソフトバンクやユニクロの上場は1994年ですね。これらの会社が日経平均の上昇を牽引しているのですが、逆に多くの上場企業は鳴かず飛ばずが長く続いたのでした。新聞などでご存じの方も多いかと思いますが、キーエンスは平均給与が大変高いことで有名ですね。それでも営業利益率は50%程度もあるのです。経営次第では、このようなことも可能ということでしょう。
これまでの30年で、株価が低迷している企業には、高度成長期に蓄えた資産のおかげで存続しているところもあるかも知れません。アジアにおける先行者利益を直接的、間接的に、享受したわけですが、多くの企業でその後の成長投資戦略や経営(人材)戦略などに何等かの問題があったのかも知れません。強い企業ではオーナー社長の存在が目立ちます。これも偶然ではないと思われます。いづれにしても、30年は長すぎると思うのです。日本ではこの30年で何が変わったのかが、今後の30年で顕在化される筈ですね。仮に過去の延長であれば、相当な目利きでなければ数少ない成長企業を見つけることは至難の業かも知れません。
僕は、人口減少が続く日本市場で長期投資をする場合は、グローバルな視点を持ち、優秀で、まだ比較的に小さな、しかし意欲ある創業者と情熱をもった社員がいる会社だろう、と思っています(当たり前でしょうが・・・) しっかりと利益を上げる戦略と仕組みを構築できるかどうかは企業である限り、やはり重要です。そういった会社は市場から退場しないでしょうし、成長し社会にも貢献するだろう、と思うからです。

