先日のブログ記事でもお話しましたが,令和3年6月5日に横浜で開催された親子ネット講演会「子どもの未来を問う4人の弁護士」に参加をさせていただきました。私は岡山からズームでの参加となりました。
6月5日土曜日/親子ネット講演会/「⼦どもの未来を問う4⼈の弁護⼠」に参加します
詳しい講演会の内容は,後日ネットでもご覧いただけるようになると聞いておりますので,ぜひご覧いただければと思います。私がお話をさせていただいたのは,私が担当している①離婚後単独親権制度違憲訴訟(東京高裁),②子の連れ去り違憲訴訟(東京地裁),③自由面会交流権訴訟(東京地裁)の3つの裁判で問題となっていることは,実は相互に密接に関連しており,全ての問題は,民法が規定する離婚後単独親権制度が生み出している,ということです。
この3つの問題のジレンマを,なんとか解決しないといけないと考えて,今日はいろいろなご提案のお話もさせていただきました。その中で,予想外に会場に参加してくださった方,中でも国会議員の方にとても好評をいただいたのが,「親子審判」の創設のアイディアなのです。
現在の法律制度には,「労働審判」という制度があります。その制度がなかった頃は,労働問題が生じたら,訴訟を申し立てて,最高裁まで争われると,2~3年かけなければ,最終的な解決が実現しない,という状態でした。それでは,労働者の方からすると,労働者の権利はいわば絵に描いた餅のような存在です。訴訟手続による権利の実現を断念された方も多かったのではないかと思います。
そのような問題を受けて創設されたのが,「労働審判」制度です。原則3回以内の期日で,当事者双方の和解を模索して,和解が成立しない場合には,裁判所が判断を行う,その裁判所の判断までを含めて,3回の期日で全てが終わるようにする,という制度なのです。
実は私は,その「労働審判」のご相談を受けていた時に,「同じような制度を,両親が別居をすることになった親子の問題の解決に使えばいいのではないか。そのような制度を創設すればいいのではないか。」と思ったのです。
例えば,夫婦の一方が,相手配偶者との別居を希望したとします。夫婦には子が1人います。別居を希望した人が子を連れて別居することも希望した場合,裁判所に「親子審判」の申立をします。
裁判所で裁判官が,夫婦の双方と,さらには子に対しても,別居についての意見と,別居後の子の生活場所についての希望を聞きます。
その当事者の意見や,当事者の主張を踏まえて,原則3回以内の期日で,別居と子の生活場所について,当事者の合意を形成し,どうしても合意ができない場合には,裁判所が判断を出します。そしてその判断の際に,Aさんが子を連れて別居後は子を養育するが,他方配偶者のBさんは,子に自由に面会交流ができること,を確認する,自由面会交流権の確認までを,3回の期日で行う,というものです。それが私が考える「親子審判」です。
この親子審判の第1回期日までに,夫婦の双方に,収入が分かる資料の提出を求めれば,3回の期日の中で,別居後の婚姻費用の額も決めることができますね。
この「親子審判」制度が創設されれば,「子の連れ去り問題」は解決され,さらに「自由面会交流権問題」も解決されることになります。
私が今まで思っていたのは,今の調停制度などの法律制度が,早期の判断を求められる親子の問題の解決に合っていないのではないか,マッチしていないのではないか,ということです。子が別居親と会えないことで心理的にどれだけ重大な影響を受けるかを考えると,面会交流の実現や合意形成に数か月以上必要な現在の面会交流調停は,明白に社会のニーズを満たしていないと思います。
また,面会交流の不履行について,不法行為法の民法709条が引用されることも,結局は他の制度の転用であって,面会交流そのもののための制度が創設されていないことを意味しています。
今日の親子ネットの講演会に参加してくださっていた方々,特に国会議員の方々から,「親子審判」という言葉が複数回講演会の中で登場しました。私のアイディアが,現実の法律制度となり,親子の問題を早期に解決するお手伝いができるのであれば,とても光栄なことです。
私としては,担当している3つの違憲訴訟の中で,「親子審判」などの国会が行うべき立法案を提案して,それが判決に影響を与えるような主張を,今後検討したいと思っています。「親子審判」が創造される日を,既に待ち遠しく感じています。