2年ぶりの緊急事態宣言の無かったゴールデンウイークを楽しまれましたでしょうか?観光地はどこもすごい人出でしたね。今後のコロナ感染者数が心配ですが、このまま突き進んでいくのでしょう。
今日のお昼のニュースで北朝鮮で初のコロナ感染者が出たと言っていました。これには驚きました
今まで感染者が出なかったというのがかえってうすら寒く感じてしまいます
4月に読んだ本のアップです
16)白蔵盈太著『あの日松の廊下で』
あの忠臣蔵の話がこんなに共感して読める日が来るとは思いませんでした。と言って、これは忠臣蔵の物語ではありません。
松の廊下刃傷事件の目撃者であり、「殿中でござる」と浅野内匠頭を抱きかかえた、江戸城大奥の警備と雑用を担当する旗本梶川与惣兵衛(かじかわよそべえ)の目から見た松の廊下の話。
吉良上野介と浅野内匠頭と共に勅使奉答の儀式に関わっていた与惣兵衛。どうして内匠頭が吉良に切りかかったのかを与惣兵衛の視点から書かれることですごく納得できる物語になっていた。
浅野内匠頭は親しみやすい人情を重んじる懐の深い大名であり、吉良上野介は真面目一徹で私利私欲の無い高潔な人とする、与惣兵衛の人物の捉え方の物語にすごく共感した。
やっと吉良上野介が報われたような気がして嬉しかったです。
ちなみに私が忠臣蔵を嫌いなのは吉良上野介を悪役にしすぎるからです。
17)森沢明夫著『海を抱いたビー玉』
昔懐かしいボンネットバス。
捨てられていたボンネットバスがレストア(修理復元すること)職人さんによって甦り活躍するという本当にあったことがステキな物語りになりました。
瀬戸内海の大三島で実際に運行していたボンネットバスが、運行停止になり廃車となりました。その後ゴミ同様の扱いをされボロボロになりますが、一人のクラシックカーマニアに救われ、レストアされ博物館に展示されることに。そして大震災に見舞われた新潟県山古志村で震災で心の折れた大人や子供のため活躍するという物語。
物語は人々の活躍とボンネットバスの独り言と、そしてバスの中に落ちていた青いビー玉がいいアクセントになり展開していきます。
とても温かな物語でした。
森沢明夫作品をこの頃よく読むようになりました。どの作品も温かくてジーンとしてしまうものが多く次々読みたくなります。
そして嬉しいのは地元千葉県船橋市ご出身だということです。
18)原田マハ著『ギフト』
20話のショートショートと1話の短編からなる作品集。
カバーと物語と物語の間に描かれた尾柳佳枝さんのパステルカラーの水彩画(?)が優しくて温かくて素敵だった。内容より挿画の方を楽しみに読んでしまいました。
“慌ただしい日常の中に潜む小さな幸せを描き出す心温まる物語(ギフト)”と書かれたカバー背の言葉通りでした。
19)森沢明夫著『ライアの祈り』
「縄文時代」の言葉に惹かれてまた森沢明夫作品を読みました。
八戸で眼鏡店の店長をしてるバツイチ大森桃子の物語と、縄文時代の少女ライアの物語が交差しながら紡がれていきます。
桃子は眼鏡店のバイト桜ちゃんに強引に誘われ、人数合わせ要員として参加した合コンで、風采のあがらない考古学者クマゴロウさんと出会う。クマゴロウさんから誘われて発掘作業に参加したことから縄文時代に関心を持ちクマゴロウさんにも興味を持つ。しかし桃子には離婚の際に持ったトラウマがあり心を開くことができない。
一方、縄文少女ライアは巨大イノシシとの格闘で大けがをし、シャーマンとしてムラの人々の幸せを祈る立場として生きていくことになった。
縄文時代を物語にするのはとても難しいことだと思いますが、とても素敵な物語に仕上がっていました。私の好きな縄文時代をこんな素晴らしい物語にしてくださってありがとうと言いたいです。
森沢明夫さんは縄文時代が大好きなんですね。あとがきに“縄文時代は平和で人々が助け合いながら「幸せ」に生活していた時代で、弥生時代からは水耕栽培がはじまったことで土地や水利を奪うようになり殺し合いもはじまった。縄文人が願ったのが「幸福」だとしたら弥生以降の人が願ったのは「裕福」だ。”と書いておられました。
その通りだと思います。感動しました。個人的な「裕福」を追い求めた結果が戦争ですよね
20)宇山佳佑著『君にささやかな奇蹟を』
絵本作家をあきらめた阿部伊吹(あべいぶき)は、人材派遣会社から紹介でトップクラスの売上を誇る三枝屋百貨店の販売員となる。
ある日社長に呼び出され「サンタクロースと結婚しないか」と言われる。
日本にあるという聖ニコラウスの血統を継いだ「サンタクロース家」!
108代目のサンタクロース(明日真・ニコラオス・聖也)に会うことになった伊吹。そして伊吹に惚れこんだサンタクロース。しかし、伊吹にはサンタクロースに対するトラウマがあり受け入れられない。
伊吹の高校時代の友人野江小雪とサンタクロース家の戸中井(トナカイ)・曽利(ソリ)・神宮ベル(ジングーベル)の執事たちがとても頼りになり頼もしくて楽しい。
笑いながら泣けるハッピーエンドの物語。軽いとバカにされそうですが幸せを感じさせる物語ほど素敵なものはないと言いたいですね。
21)山本甲士著『迷犬マジック』
ちょっと冴えない日々を送る4人のもとに、何故か突然現れた迷い犬(首輪に「マジック」と書かれていた)。
飼い主を捜す間、めんどうをみることにした4人に訪れたものは?
春:古稀を過ぎた七山高生。この頃のもの忘れっぽさを長男から認知症を疑われる始末。マジックが来たことで近所の人との会話が増え、その上監禁女性を救い出すという大活躍も!
夏:津軽三味線で聴者の希望の曲を演奏する路上ライブをしている自称サムライミュージシャン屋形将騎。マジックとのサムライトークが受け、それがプロ活動につながることに!
秋:親の店を継いだが客足がイマイチの理髪店「カットハウスいわや」の岩屋充。メタボで独身中年。マジックの散歩中に知り合った女性からイージートレーニング講座に誘われ受講することに!規則正しい食事と体を動かす事で見も心も変化していく。知り合った女性ともいい関係に!
冬:他人と会いたくない、話したくない気持ちで祖母が住んでいた空き店舗で一人暮らしを始めた鷹取苺。そこにマジックが住み着くことに。ふさふさのマジックの毛に癒される苺。マジックの飼い主を捜すことに一生懸命になる苺は自分のやりたいことをやるのが私だと気づくことに!
「マジック」が、それぞれの一時飼い主に起こすマジックに心が和む。
それぞれの物語に前作の主人公とつながりがあってそれも楽しく読めた。本当に“ワンダフル・ストーリー”でした!