先日も、当たりのある稽古をしていました。
これ、中国武術では定番で、初めは柔らかくやっているところから、徐々に強くして当てることが求められます。
前腕を使ってやるのですが単純に前腕を強化すること自体が目的と言う訳ではありません。
ちゃんと勁の通りを強化するための内側の練功なのですが、でも、最も基本としてはやはり腕の強さを高める要素も存在しています。
中のことだけを考えてやっていても、必然腕自体は物に当たるので鍛えられてゆくことにもなります。
この時もひたすら瞑目するように意識は内側のラインにだけ向けてやっていたのですが、終わったら左手の甲に内出血が出来ていました。
これはですね、ここに繋がっている血管からの物ですね。
前腕に何かダメージがあったからここに血が流れて来たと言うことです。
どっか強くぶっけたんだろうなあ、と思っていたのですが、一晩寝たら手首の近くが腫れていました。
折れていればもっと内出血するし腫れあがります。触診してみても折れてる感じもありませんでした。おそらくは骨膜の打撲ですね。
まぁ私は、よく知らない間にどこかを強打していてこうなることがあるのです。
学校でも鍼を打たれている時たまに「痛くないんですか?」と訊かれることがありますが、そんなん痛いとか痛くないとか考えたこともない。
足の裏とかにも自分で平気でガンガン打ったりしています。
質問に対しては「もうどっかぶっ壊れてるんだと思う」と答えていたのですが、長くに渡る稽古のせいで痛みを感じる機能が鈍くなっているのではないかという気がしていました。
が、これね、授業で習ったことでちょっと思い当たることが出てきました。
鍼の効能の一つに、麻酔鍼という物があります。
これ、効果を顕す方法として「痛くないといけない」という変な機序があります。
鍼で痛くすることによって、下降性痛覚抑制系と言う鎮痛機能が働くのですが、これは痛みを与えることで脳幹にある橋のノルアドレナリン分泌と、延髄のセロトニン分泌が作用して、痛みを感じなくなるというシステムです。
この、ノルアドレナリンとセロトニン、オピオイドと言われている物質です。
オピオイド、アメリカでは病院で処方されて大量に中毒者が発生して社会問題になっていますが、まさにそういう物なのです。それが人体では精製されているのですね。
これね、そういう訓練があるんです。武術に。
苦行や荒行と呼ばれる修行というのは、それを目的とした物だと言う人も居ます。
これを経ると脳の分泌系が発達して、容易に脳内麻薬が出やすくなり、ブーストが掛かりやすい人間になるのです。
私はそういうことをしてきたので、もしかしたら知らない間にすぐに脳内麻薬が出て、平素から痛みを感じにくくなっているのかもしれません。
鍼や点穴を学ぶと経絡を突いて外部からこれを行うことが出来るようになるのって、ちょっと面白いことではないですか。