「イングリッシュ ペイシェント」
(原題:The English Patient)
1996年11月15日公開。
ブッカー賞受賞の人気小説を映画化。
日本ではあまり知られていないが、欧米では有名な作品。
アカデミー賞9部門を受賞。
興行収入:232百万米ドル。
原作:マイケル・オンダーチェ『イギリス人の患者』
監督・脚本:アンソニー・ミンゲラ
キャスト:
アルマシー:レイフ・ファインズ
ハナ:ジュリエット・ビノシュ
ジェフリー:コリン・ファース
キャサリン:クリスティン・スコット=トーマス
カラヴァッジョ:ウィレム・デフォー
ドイツ軍将校:ユルゲン・プロホノフ
マドックス:ジュリアン・ワドハム
キップ:ナヴィーン・アンドリュース
あらすじ:
1944年。
アフリカの砂漠での飛行機事故で全身に火傷を負い、記憶の大半を失って生死をさまよう男が、野戦病院に運び込まれた。
戦争で恋人も親友も亡くして絶望にかられていた看護婦のハナ(ジュリエット・ビノシュ)は移動する部隊を離れて、爆撃で廃墟と化した修道院にその患者を運び込み、献身的な看護を続ける。
男は断片的に甦る思い出をハナに聞かせる。
彼の名はアルマシー(レイフ・ファインズ)。
ハンガリーの伯爵の家柄に生まれた冒険家の彼は、英国地理学協会に加わり、アフリカはサハラ砂漠で地図作りに没頭していた。
1938年、協会のスポンサーとして夫ジェフリー(コリン・ファース)と共に参加していたキャサリン(クリスティン・スコット=トーマス)は、夫が英国情報部のカイロに戻った後も砂漠に居残った。
アルマシーはたちまち彼女に心を奪われる。
猛烈な砂嵐に見舞われた一夜、2人きりで過ごしたジープの中で互いの心を知った彼らは、カイロに戻ってアルマシーの宿舎で結ばれた。
人目を忍び密会を重ねる日々に、キャサリンは愛し愛される喜びと、夫に対する罪悪感の狭間で揺れる。
折りしも戦争の機運が高まり、彼女はアルマシーと別れて帰国しようとするが、彼には彼女のいない人生は考えられなかった。
2人の関係はやがて夫のジェフリーに知れる。
ジェフリーは嫉妬に狂い、復讐の決意を胸に、小型機の助手席に妻のキャサリンを乗せ、洞窟の近くでキャンプの引き上げ作業にあたるアルマシーの元へ向かった…。
ハナと患者の前にカナダ人のカラヴァッジョ(ウィレム・デフォー)が現れ、納屋に居候する。
戦前のカイロで英国情報部に出入りしていたこの男は、スパイ容疑でドイツ軍将校(ユルゲン・プロホノフ)に親指を切り取られたが、その原因がアルマシーだと思い込み、報復を果たそうと行方を探していたのだった。
さらに、爆弾処理専門のインド人中尉キップ(ナヴィーン・アンドリュース)が修道院の中庭にテントを張って住み始め、ハナとキップの間に愛が芽生える。
やがて迎えた終戦の日。
人々が祝うさなか、キップの部下が事故で爆死し、ハナは悲しみを分かち合おうとする。
一方、カラヴァッジョが敵意を剥き出しにしてこう言った。
「アルマシーがスパイだと知って、おまえの親友マドックス(ジュリアン・ワドハム)は拳銃自殺したんだぞ」。
この言葉で、アルマシーの記憶が一気に甦った。
あの日、キャサリンとアルマシーもろとも自殺をもくろんだジェフリーは、地上のアルマシーに向かって飛行機を突進させるが失敗し、ジェフリーは絶命した。
アルマシーは瀕死の重傷を負ったキャサリンを洞窟に運ぶと「必ず戻ってくる」と約束し、三日三晩、砂漠を歩き続ける。
だが、アルマシーはようやくたどり着いた町でスパイと疑われ、逮捕されたが、護送列車から脱走し、愛する人の命を救いたい一心で、地図を燃料と交換し、飛行機でキャサリンの元へ急いだ。
ついに洞窟に到着したが、時すでに遅く、彼女は息絶えていた。
キャサリンが死亡したことを確認したアルマシーは、彼女の亡骸を飛行機に乗せ、彼女の故国イギリスを目指して砂漠を飛び立った。
だが、彼の機は撃墜され、彼は英国人の患者として収容されたのだった…。
この話を聞いたカラヴァッジョは復讐を断念した。
その後、アルマシーはモルヒネの入った数瓶をハナに押しつけながら、もうたくさんだと彼女に告げた。
彼女は動揺するが、彼の願いを聞き入れ、致死量を投与した。
彼が眠りにつくと、ハナはキャサリンが洞窟に一人でいたときにアルマシーに宛てて書かれた最後の手紙を彼に読み上げる。
翌朝、ハナはアルマシーの本をしっかりと握りしめながら車で走り去る。
アルマシーの最後を看取ったハナの心にも、死を乗り越えて存在する愛の奇跡が深く刻み込まれたのであった。
コメント:
第二次大戦を挟む激動の時代に二つの大陸にまたがって繰り広げられる愛のロマンを描く映像叙事詩。
原作は、世界で最も権威ある文学賞といわれるイギリスのブッカー賞を受賞したマイケル・オンダーチェの同名長編小説(日本語名:『イギリス人の患者』)。
原題は、原作のマイケル・オンダーチェの同名長編小説と同一。
日本語タイトルは、英語の原題をそのままをカタカナ表記にしているため、何のことか分からない。
『イングリッシュ・ペイシェント』は、マイケル・オンダーチェの1992年の同名小説を基に、アンソニー・ミンゲラが自身の脚本で監督し、ソウル・ゼンツが製作した1996年の壮大なロマンチックな戦争ドラマ映画。
同名の主人公は、英語のなまりで話す、認識できないほど燃え上がった男であり、一連のフラッシュバックで自分の歴史を回想し、彼の本当のアイデンティティと戦前に巻き込まれた恋愛関係を観客に明らかにする。
彼は映画が終わるまで、自分の身元を認めず、世話をする看護師や彼を疑う男にも全てを明かさなかった。
この形式は、モルヒネの影響下で患者が自分の過去について語る原作とは大きく異なっている。
この映画は、ラースロー・アルマシー(1951年死去)やその他の歴史上の人物や出来事について、高度にフィクション化された記述であるという決定的な画面上の声明で終わる。
この映画は第69回アカデミー賞で12部門にノミネートされ、作品賞、ミンゲラの監督賞、ジュリエット・ビノシュの助演女優賞を含む9部門を受賞した。
また、デジタル編集された映画で初めてオスカー編集賞を受賞した作品でもある。
主人公を演じたレイフ・ファインズとクリスティン・スコット・トーマスは、その演技でオスカーにノミネートされた。
この映画は英国アカデミー賞5部門とゴールデングローブ賞2部門も受賞した。
英国映画協会は『イングリッシュ・ペイシェント』を20世紀で最も偉大なイギリス映画の55位にランク付けした。
アメリカ映画協会は本作を史上最高のラブストーリーの56位にランク付けした。
この映画で美しい肢体を披露している不倫の妻・キャサリンを演じたクリスティン・スコット=トーマス。
この人は、イングランド、コーンウォール州出身のイギリス人女優。
実父も継父も飛行機のパイロットで、どちらも事故死しているという、この映画を想起させる因縁を感じさせる。
1994年公開の『フォー・ウェディング』で英国アカデミー賞助演女優賞を受賞。
1996年公開の本作『イングリッシュ・ペイシェント』でアカデミー賞主演女優賞の候補にもなった。
ロンドンのセントラル・スクール・オブ・スピーチ&ドラマ及びパリの国立舞台芸術技術学院で学び、フランス語が堪能なため、自分が出演した作品のフランス語版を自ら吹き替えることもある。
2008年、アントン・チェーホフの『かもめ』でローレンス・オリヴィエ賞を受賞した。
2010年、第63回カンヌ国際映画祭のオープニングセレモニーの司会を務めることが決定した。
現在でも尚女優として活動している。
2003年にはOBE(大英帝国勲章第4位)、2015年にはDBE(大英帝国勲章第2位)に叙され、Dame(ディム)の称号を持つ他、2005年にレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受章している。
主な出演作品は以下の通り:
『フォー・ウェディング』
『ミッション:インポッシブル』
『イングリッシュ・ペイシェント』
『モンタナの風に抱かれて』
『ランダム・ハーツ』
『ゴスフォード・パーク』
『ずっとあなたを愛してる』
『サラの鍵』
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』
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