〇カマシ・ワシントン・ライヴ~その全貌の5%を垣間見た
【Kamasi Wasington : 5% Of Their Ability Setlist At Billboard Live Tokyo, August 19, 2018-First Set】
一部。
かつてカマシ・バンドのようにダブル・ドラムスで超ドファンクを演じていたジェームス・ブラウンに、ライヴを見た後、「昨日とライヴが違いましたね」というと、「君はまだ俺ができることの5%しか見とらんよ」(笑)と言われた。1998年のことだ。そのとき、「あー、そうなんだ。ミュージシャンの可能性っていうのは、無限なんだな。聴き手が考えているよりはるかに多くの引き出しがあり、多くのことができるんだ」と強く思った。あの「まだ5%しか見とらんよ」発言は、以後、ライヴを見たり、CDを聴いたりするときに何かのたびに思い出す。
カマシ・ワシントンのライヴ(2018年8月19日日曜・ファーストセット)を見ている時も、その5%発言が何度も頭をよぎった。つまり、今見ているこの90分ほどのセットは、カマシのきっと5%くらいなんだろうな、と。特に、下記セットリストで紹介するように、ファーストとセカンドで一曲もだぶりがない。つまり、2セット見てやっと1本見た、ということだ。
カマシは、ハーヴィー・メイソンのライヴで2014年に来た後(その時にアフロとファッションが気に入った)、『エピック』を発売、2015年ブルーノートで単独、2016年ビルボードで単独、2017年フェスに登場、その後一枚、『ハーモニー・オブ・ディファレンス』を出し、今年(2018年)またまた問題作3枚組の『ヘヴン&アース』を出し、今回のサマーソニックとビルボードライブの登場となった。僕は2015年のブルーノート以来の観戦。
前回ブルーノート来日時のキーボード、ブランドン・コールマンの代わりにラスラン・シロタが参加。他は全員同じだ。
毎回どうやらそのときのノリと雰囲気でソロ回しの部分などやアレンジが違うようだ。今回も感じたことは、何より「勢い」があるバンド、ミュージシャンたちということ。かつて、ボビー・ブラウンの初来日ライヴや、MCハマーの初来日ライヴを見た時のような強烈な「勢い」を感じた。それは、まさに今「旬」で、ジャズ世界の頂点に立っているという自負による自信かもしれない。特にドラムスのロナルド・ブルーナー・ジュニアのドラミングは、とにかく「早く」「強く」「音をラウド」にという一心で圧倒する。ロナルドの「動」とカマシの「静」はこのバンドのなかでひじょうに対照的だ。
カマシをして「ブラック・ライヴズ・マターのジャズの声」と評する言葉があったが、なるほどと思った。コンセプトやインタヴューなどでの発言にそうしたニュアンスが感じられる。
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グラミー。
カマシの『ヘヴン&アース』は来年のグラミー賞のジャズ部門でまちがいなくノミネートされ、うまくいけば受賞もできるだろう。グラミーでライヴができるかどうかは、他のアーティストの兼ね合いなのでまだわからないが、ノミネートだけでもさらに知名度があがるだろう。もし5分以上のライヴができたら、一挙に世界的な知名度を獲得することになる。
さらに、僕は彼のこの『ヘヴン&アース』が単純にジャズの枠を超えて、広く一般に受け入れられていることを強く感じる。まだオファーはないようだが、ハリウッドの映画界から彼にサントラをやってくれ、という話が次々舞い込むようになるのは時間の問題だ。それがクリント・イーストウッドなのか、スパイク・リーなのか、タランティーノなのか。
カマシは、自分で曲を書き、編曲し、プレイし、プロデュースする。ジャズ界でいえば、次世代のクインシー・ジョーンズだ。まちがいない。彼の何がいいって、ベースが音楽院にあるのではなく(もちろん、基礎勉強はしているのだが)、ストリートにある点だ。ストリートから出てきたジャズ、しかも、新世代という点で、「ニュー・ジャック・ジャズ」という名にふさわしい人物と言える。
まだ我々はカマシの5%しか見ていないのだ。ライヴを見て改めてそれを痛感した。
(今回ひじょうに短い時間ではありましたが、カマシにインタヴューできたので、それも近々含めてまとめます)
■ソウル・サーチン、カマシ関連記事
カマシ・ワシントン『ヘヴン&アース』の序文翻訳
「ナイト・サーチン46」~カマシ本人の序文
2018年07月07日(土)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12388936797.html
カマシ・ワシントン前作『ハーモニー・オブ・ディファレンス』時インタヴュー
カマシ・ワシントン語る~新作のコンセプト、LAから受けた影響など
2017年10月13日(金)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12318769684.html
(初めてのライヴのときのレポート)
カマシ・ワシントン・ライヴ(パート1)~広範なブラック・ミュージックの要素全部入れ~「俺のジャズ」
2015年11月01日(日)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12090418968.html
カマシ・ワシントン(パート2)~父リッキー・ワシントンの教え~ニュー・ジャック・ジャズの新スター
2015年11月02日(月)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12090535232.html
(時代的には彼らの仲間はみな、このあたりのラップ、ヒップ・ホップを聴いていた)
映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』~アルバムから映画まで27年を経てのブラックムーヴィーのの金字塔~日本公開12月に決定
2015年09月27日(日)http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12077294077.html
(ジェームス・ブラウンの5%の話がでてきたときの記事)(1999年5月30日付け、JBエスケープ・ウェッブ、1998年12月のライヴ)
http://jb-escape.sakura.ne.jp/jbinfo/19990530.html
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カマシ・ワシントンの2018年8月19日・日曜ビルボードライブでのファーストセットとセカンドセットのセットリストです。
■セットリスト
Setlist : Kamasi Washington At Billboard Live Tokyo, August 19, 2018-First Set
Show started 16:30
01. Street Fighter Mas (From “Heaven & Earth”)
02. Will You Sing (From “Heaven & Earth”)
03. Re Run (From “Epic”)
04. [Drum battle : Drum Solo – Tony & Ronald]
05. The Space Travelers Lullaby (From “Heaven & Earth”)
06. The Rhythm Changes (From “The Epic”)
Show ended 18:05
セカンドセット Second Set
01. Change Of The Guard (From “The Epic”)
02. Journey (From “Heaven & Earth”)
03. Truth (From “Harmony Of Difference”)
04. The Psalmnist (From “Heaven & Earth”)
05. Fist Of Fury (From “Heaven & Earth”)
■MEMBERS
Kamasi Washington(sax) カマシ・ワシントン(サックス)
Patrice Quinn(vo) パトリス・クイン(ヴォーカル)
Ryan Porter(tb) ライアン・ポーター(トロンボーン)
Miles Mosley (b) マイルス・モズレー(ベース)
Tony Austin (ds) トニー・オースティン(ドラムス)
Ronald Bruner Jr. (ds) ロナルド・ブルーナーJr.(ドラムス)
Ruslam Sirota (keyboards) ラスラン・シロタ (キーボード)
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CD
⑥HEAVEN & EARTH (2018/6)
KAMASI WASHINGTON
YOUNT (2018-06-22)
⑤Harmony of Difference [帯・解説付 / 国内仕様輸入盤CD] (YTCD171JP) (2017)
Kamasi Washington カマシ・ワシントン
Young Turks (2017-09-22)
④The Epic [帯解説 / 国内仕様輸入盤 / 3CD] (BRFD050) (2015)
KAMASI WASHINGTON カマシ・ワシントン
BEAT RECORDS / BRAINFEEDER (2015-05-16)
売り上げランキング: 4,102
最初の3枚はいわゆる自主制作。2と3はその後、配給元がリリースした。
③ライト・オブ・ザ・ワールド (2008)
カマシ・ワシントン
エル・エー・サウンズ (2012-09-19)
②ザ・プロクラメイション (2007)
カマシ・ワシントン
エル・エー・サウンズ (2012-09-19)
① Kamasi Washington And The Next Step (2005)
Live At 5th Street Dick's (2xCDr, Album) Not On Label (Kamasi Washington Self-released)
ENT>MUSIC>LIVE>Washington, Kamasi
ENT>MUSIC>ARTIST>Washingto, Kamasi
ENT>MUSIC>West Coast Get Down (WCGD)