◎カマシ・ワシントン・ライヴ(パート1)~広範なブラック・ミュージックの要素全部入れ~「俺のジャ | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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◎カマシ・ワシントン・ライヴ(パート1)~広範なブラック・ミュージックの要素全部入れ~「俺のジャズ」全開

【Kamasi Washington : Explosion Of West Side Jazz: West Coast Get Down - Sky Is Limit


(強烈なライヴを見せたカマシ・ワシントン・ライヴ評とその父リッキーとのトークなど、そのパート1)

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大音量。

ジャズのウェッサイ(ウエストサイド)、LAジャズ注目の新人サックス奏者、カマシ・ワシントンの自身名義として初のライヴ。カマシの来日は昨年のハーヴィー・メイソン・ライヴのサポート以来2度目。一言、期待にたがわぬ強烈なライヴだった。

ファーストが押したせいか、お客さんの数が多いためか入場に時間がかかり、開演も14分ほど遅れた。超満員。しかし、全員がそれぞれ音を少しだし、演奏が始まると、最初の印象は音が大きいなあ、ということ。

ドラムス2人、ベース、キーボード、トロンボーン、そしてサックスのカマシ、ヴォーカルのパトリースの計7人がオンステージ。なにより、2人のドラムというのが強烈だ。

最新CD『エピック』(3枚組、170分の演奏時間)でも2人ドラムス、2人ベース、2人キーボード、その他という重量編成で大作を作り上げていたが、その中でドラムスだけ2人来日した。

今回の来日は、カマシを中心とした「ウェスト・コースト・ゲット・ダウン」というグループの中核メンバーだ。彼らは音楽だけで繋がっているのではなく、ふだんからベスト・フレンド同士だという。まさに仲間が一緒になって作りだす音楽だ。もし全部を呼ぶとすると10数人がステージに乗らなければならなくなる。つまり、われわれはカマシ・グループのほんの一部しかまだ見ていないことになる。

それにしても、ステージで2人のドラムスが並ぶのを見るのは、ジェームス・ブラウンのかつてのライヴ以来。

あとからわかったが、ファーストとセカンドは1曲もかぶりなし。全曲違った。

次々と繰り広げられる楽曲、演奏は1曲がかなり長く、その中で、それぞれのソロ・パートを大フィーチャーする。大音量、大音圧、エネルギー爆発だ。(下記のコンサート動画参照)

その中には、ジャズだけでなくありとあらゆるブラック・ミュージックの要素が、肩ひじ張らず自然な感じで詰め込まれていた。オーネット・コールマンのようなフリー・ジャズかと思えば、Pファンク、ジェームス・ブラウンのような「どファンク」、ロック的な要素、オーソドックスなジャズ、R&B、そして、ヒップ・ホップの要素も感じられた。女性シンガー、パトリースが歌っているときなど、あのロータリー・コネクション(ロック、ジャズ、ソウルを融合したミニー・リパートンを擁したグループ)さえ思わせた。

ここまで広範なブラック・ミュージックの要素を入れ込んでるジャズ・ミュージシャンはなかなかいないのではないか。

つくづく才能のあるミュージシャンたちは、つねに我々が想定する「枠」「限界」を突き抜けるものだなあ、と思う。ミュージシャンの可能性は本当に無限なのだ。カマシとそのご一行様は、無限の可能性を秘めている。まさにSky Is Limit.

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ワイルド。

舞台下手(向かって左手)にいたキーボードのブランドン・コールマンは、ベイビーフェイスなどでも来日しているが、ベイビーフェイスのときにはとても想像できないほどワイルドなプレイを見せていた。ファミコンのような音もおもしろかった。

圧巻は二人のドラマー、舞台下手のトニー・オースティンと上手(右手)のロナルド・ブルーナーのドラム・バトル。これほどまでのドラム・バトルを見たのは、ジェームス・ブラウン全盛期のライヴでドラマーを二人使っていた頃のステージ以来。圧巻だった。

そして、途中からブルーノートのメンバー表には名前のなかった特別ゲスト、ソプラノ・サックス、フルート奏者リッキー・ワシントンがサプライズで登場。彼はカマシの実父。彼の登場を見て、かつてアレステッド・デヴェロップメントにいたババ・オジェイを思い出した。ババ・オジェイはグループの精神的主柱(スピリチュアル・リーダー)だ。

もちろん、カマシの巨体から奏でられるサックスの音色は静かな曲は抒情的で、アップテンポの曲はスピード感もあふれ体を揺らしながら圧巻だ。

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サウス・セントラル。

ロスの黒人街サウス・セントラルに1981年に生まれ、育ったカマシは現在34歳。他の多くの仲間たちがN.W.A.や他のギャングスタ・ラップ、ヒップ・ホップに傾注する中、親や周囲の影響でジャズの道に進む。よくその環境でジャズに進んだなと思った。そのせいもあってか、実際に会って話すとアティテュード(突っ張ったところ)などまったくない本当にナイスガイだった。

そして彼がスヌープなどのヒップ・ホップ・アーティストから、ラファエル・サディークなどのR&Bアーティストらとも普通に交流でき、音楽を作っているところが、いかにも今風だ。それはたとえばロバート・グラスパーやロイ・ハーグローヴなどとも同じように、ひとつのジャンル、枠にとらわれずに活躍の場を持っているところがとてもいい。

「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」「俺のおでん」「俺のハンバーグ」なんて、「俺の~」シリーズが流行っているが、カマシのライヴはメンバーそれぞれの「俺のジャズ」だった。

(この項続く)

カマシの父、リッキー・ワシントンとカマシとの立ち話など。明日以降に。

■動画『エピック』リリース・コンサート

ブルーノートでのライヴの興奮が蘇ります。

Kamasi Washington's 'The Epic' in Concert (約2時間01分に編集)(コンサート自体は4時間を超えたようだ)
https://www.youtube.com/watch?v=0YbPSIXQ4q4


■オフィシャル・サイト
http://www.kamasiwashington.com/

■関連記事

時代的には彼らの仲間はみな、このあたりのラップ、ヒップ・ホップを聴いていた。

映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』~アルバムから映画まで27年を経てのブラックムーヴィーのの金字塔~日本公開12月に決定
2015年09月27日(日)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12077294077.html

■参考記事~カマシを理解するためにとてもいいインタヴュー記事2本

2015.7.12
ケンドリック・ラマーもFly-LoもSnoopも絶賛! カマシ・ワシントンと甦るウェストコーストの黒いジャズ (文・柳楽光隆)
http://wired.jp/2015/07/12/kamasi-washinton/

2015.08.10
Interview with Kamasi Washington
ロサンゼルスのジャズの遺産とヒップホップの現在までを繋げるサックス奏者
(取材・文:バルーチャ・ハシム、原雅明)
http://arban-mag.com/interview_detail/12

遂に来日! カマシ・ワシントン
2015-10-29 21:56:17 (沖野修也ブログ)
http://ameblo.jp/shuya-okino/entry-12089723927.html


■セットリスト カマシ・ワシントン
Kamasi Washington @ Bluenote Tokyo, October 30, 2015 (Second Set)

Show started 21:44
01. Askim
02. The Next Step
03. Abraham (Miles Mosley)
04. Re-Run
Enc. Malcom’s Theme
Show ended 23:13

同日ファースト・セット(ブルーノート・ウェッブサイトより)
http://www.bluenote.co.jp/jp/reports/2015/10/31/kamasi-washington.html

2015 10.30 FRI.

1st
1. CHANGE OF THE GUARD
2. ANAYA
3. HENRIETTA OUR HERO
4. FINAL THOUGHT
EC. THE RHYTHM CHANGES

■MEMBER

Kamasi Washington(sax) カマシ・ワシントン(サックス)
Patrice Quinn(vo) パトリス・クイン(ヴォーカル)
Ryan Porter(tb) ライアン・ポーター(トロンボーン)
Brandon Coleman(key) ブランドン・コールマン(キーボード)
Miles Mosley(b) マイルス・モズレー(ベース)
Tony Austin(ds) トニー・オースティン(ドラムス)
Ronald Bruner Jr.(ds) ロナルド・ブルーナーJr.(ドラムス)

Special Guest:

Rickey Washington
リッキー・ワシントン(ソプラノ・サックス、フルート)

(2015年10月30日金曜、ブルーノート東京、カマシ・ワシントン・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Washington, Kamasi

■ブルーノート・オフィシャル
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/kamasi-washington/

■The Epic [輸入盤 / 3CD] (BFCD050)_117
KAMASI WASHINGTON カマシ・ワシントン
3作目、3枚組の超大作、そのタイトルは『エピック』(叙事詩、大作の意味)。来年のグラミー・ノミネート候補まちがいなし

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売り上げランキング: 27,443


カマシ・ワシントン『プロクラメイション』(1枚目)

ザ・プロクラメイション
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売り上げランキング: 601,475


『ライト・オブ・ザ・ワールド』(2枚目)
ライト・オブ・ザ・ワールド
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売り上げランキング: 670,266


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ブランドン・コールマン

SELF TAUGHT [解説付 / ボーナストラック収録/ 日本独自企画 / 国内盤] (BRC492)
BRANDON COLEMAN ブランドン・コールマン
BEAT RECORDS (2015-12-02)


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