◎エリカ・バドゥ @fatbellybella 「ザ・クイーン」真のアーティスト降臨
【Erykah Badu : The Queen Control Musicians, Audience And Air At Venue】
(内容について出ますので、これからご覧になる方で事前に情報を見たくない方はご注意ください)
アーティスト。
エリカ・バドゥーは絵も描き、詩も書き、ファッションにも一家言(いっかげん)あり、自身で衣装をデザインすることもある。そして、表現手段の一つとして音楽がある。つまり、エリカ・バドゥーは単なるミュージシャンではなく、アート(芸術)の表現者、真の意味でのアーティストだ。だからステージ毎に衣装は変わり、演じる曲やパフォーマンスもその日の観客の反応、自分の気分などによって万華鏡のように変化する。そうして「エリカ・ワールド」が形作られて行く。CDも音楽表現のほんの一つだが、ライヴはそれ以上のエリカ・バドゥーというアーティストの表現の場であるから、見るべきもの、感じられるものがCD以上のものになっている。かつてジェームス・ブラウンは「君が今日見たオレのライヴは、(オレの)5%でしかない」と言った。果たして、この日、我々はエリカの何パーセントを見たのだろう。
今回は2017年9月30日に来日して以来、7公演を行い、10月13日離日予定まで2週間の長きにわたって滞在する。
そんな彼女の1998年2月初来日以来7回目の来日公演、その2日目(2017年10月3日)を見た。(過去来日履歴は本記事の最後参照)
まさに「神降臨」といった感じだ。
なんといっても、その存在感が周囲の空気をぴりっとしたものにするほどだ。そして、ミュージシャンを統率する力、本人のミュージシャン力、自己プロデュース能力が圧倒的にずばぬけている。それは前回までの来日公演でも十分垣間見られていたが、今回それに磨きがかかったかもしれない。
隣にたまたまシスター(黒人女性)3人組が来ていて、始まる前からえらく盛り上がっていたのだが、クイーン登場とともに「Yes, Queen, Yes!!!」と大声を出すので、隣の僕まで気分が高揚した。まるでアメリカで(ひょっとしてエッセンス・フェスあたりで)ライヴを見ているかのような錯覚に陥った。そして、「オン・アンド・オン」や「アップルトゥリー」などのおなじみの曲では一緒に歌う歌う。合いの手もいれる。ま、とにかく声がでかい。(笑)
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過去現在未来。
エリカは事前にセットリストを作らないので、毎日、少しずつ演奏曲が変わる。そして、その演奏される曲はエリカがすべてコントロールし、キューを出したり、歌いだすことによって、ミュージシャンが即反応し、対応していく。
バンドマスターはキーボードのRCだが、彼によれば、「もう10年以上やっているから大丈夫だ」という。
このミュージシャンの統率力は、ジェームス・ブラウン、プリンス、女性だとロバータ・フラックあたりを彷彿とさせる。
こうした事前にセットリストを作らないライヴは、それぞれのミュージシャン力が問われ、一朝一夕にはできないのだが、今回のドラマー、マイク・ミッチェルは2週間ほど前に入ったばかりの新人。しっかり対応しているように見えた。たぶん、これからどんどんと鍛えられるのだろう。ずいぶん若くて荒々しかったので、ちょっとロナルド・ブルーナー・ジュニアを思わせたが、なんと彼らは友人同士だという。
エリカのライヴは、まさにソウル・ミュージック(ブラック・ミュージック)の過去・現在・未来という点を見事に線につないでいる。
たとえばエリカ自作曲「アイ・ウォント・ユー」(マーヴィン・ゲイ曲ではない)の前後には、ドナ・サマー、ヤーブロー&ピープルズなどを結び付けて披露する。ほかにも、いろいろな過去のヒットをちょこっといれたりする。また既存曲も大幅にアレンジを変えて、2017年ヴァージョンにアップデートしているところも常に現役感を出す。このあたりが大したもの。
その音楽は、ソウル、R&B、ヒップ・ホップ、ファンク、ジャズ(古いものから新しいものまで)、そしてポエトリー・リーディングのようなものまで、あらゆるところを縦断し、自分のものにして、独特のけだるいメローな「エリカ・ワールド」を醸し出す。もちろん彼女はいわゆる「ネオ・ソウルのクイーン」であることはまちがいないが、もはや「ネオ・ソウルなんて、どこかの悪徳弁護士がでっちあげたものよ、関係ないわ、私は私の音楽をやってるのよ」と言いそうなくらい自信にあふれている。「ネオ・ソウル」はもちろん、要素の一部だが、もはやそれ以上の「エリカ印」「エリカ・ワールド」を作っているのは特筆すべきところだ。
そして彼女の場合、ファッションを含めたカルチャー・エンタテインメントの粋を見事なまでに昇華する。たとえばレーザーや照明、映像などには、1960年代後期のヒッピー・カルチャー、フラワー・ムーヴメント、サイケデリックなどの影響も垣間見られる。
その佇まいは、まさにソウル・ミュージックを基軸にした広範なカルチャー・イヴェントの司祭、プリーチャーそのもの。シンプルな繰り返しが多く、観客もどんどんトランス状態に入っていき、そして、音楽的な自由度も高い。
そしてその頃の空気感も含めて、エリカが「ラヴ&ピース(愛と平和)」を見せていたのが印象的だ。とてもスピリチュアルな感じもする。
しいてひとつだけ難点を言えば、この日のショーが短いということ。この日は初日より少し長かったようで、アンコール含めて80分だったが、90分くらいやってもらえると、満足度は高くなる。
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なお、10月7日の「ソウル・キャンプ」でのライヴは1時間45分(105分)くらいやったそうだ。おそらく、3日のライヴよりはるかによかったのだろうと想像する。僕が見た2010年のものは2時間超だったので、ヴォリュームたっぷりでそれくらいは普通にできるわけだ。
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SNS。
今回のライヴがネットなどで大変好評なのは嬉しいのだが、2010年のときも、そういう点では中身はすごかったのに、それほどの話題にはならなかった。もちろん、エリカのライヴが進化していることもあるだろうが、よく考えてみると、ツイッターなどのSNSが今のように普及し始めるのが、2010年以降。2011年、12年あたりから徐々に普及したので、それ以前のライヴだと、一か月遅れの紙媒体などで話題になっても、リアルタイムではどれだけすごくても話題にならなかったのかもしれない。(もちろん、ブログなどはあっただろうが)
逆にそれ以降のライヴだと、ツイッターなどですぐに大きな話題になって拡散している。もちろん、初めてエリカを目の当たりにする人も多く、その衝撃をSNSに出した。そういう意味では2010年以降、あるいはツイッター普及以降の音楽ライヴの感想、反応という変化はちょっと大きいかもしれないと感じた。要は以前は素晴らしいライヴを見ても、それを見た人たちしか直接に語れなかったものが、今ではツイッターなどのネットでの意見表明の機会があるので、ライヴの感想がより幅広く可視化され、早く拡散されたということだ。
それにしても、エリカの存在感は大きい。次回の来日はいつになるのだろう。日米での人気格差があって、今回は高額のチケット代になってしまったが、次回は大きなホールでできるだろうか。
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面会。
ライヴ後にエリカに会う機会があった。実際に会った彼女は、実に気のいい、しゃべりやすい気取りのないシスターだった。たぶん、ダラス出身という南部出身の人たち共通のやさしさみたいなものがどこかにあるのだろう。
名刺を渡すと、それをまざまざと見て、一瞬考えた間があり「あなたのこと、知ってるわ。あなた、ソウル・ミュージックの歴史とか、詳しいんでしょう? 誰かに聞いたわよ」と言われた。いわゆる社交辞令ではないような気がしたのでこれには心底びっくりした。どこで知られたんだろう。(笑)
左Erykah Badu+右Soul Searcher=Yoshioka Masaharu
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今回のバンドは、バンド・リーダーのRCは、自身のRC&ザ・グリッツとして2017年2月23日~24日ブルーノート東京でライヴを行っている。
Feel
Rc The Gritz
Rexamillom
Pay Your Tab
Rc & The Gritz
CD Baby (2013-11-26)
右RCウィリアムス
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ライヴはこの後、次の通り。ビルボードでは東京で1回、大阪で2回。
2017年10月 12日(木)ビルボードライブ東京
http://www.billboard-live.com/pg/shop/index.php?mode=top&shop=1
開場 : (平日)18:30 (日・祝日)17:30
開演 : (平日)20:00 (日・祝日)19:00
サーヴィス・エリア=43,000円、カジュアル・エリア=33,000円
ビルボ―ドライブ大阪
2017年10月9日(月・祝)、10日(火)
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=10637&shop=2
それぞれ1日1回公演。
10/9(Mon)1st Stage Open 17:30 Start 19:00
10/10(Tue)1st Stage Open 17:30 Start 19:00
サーヴィス・エリア=43,000円、カジュアル・エリア=38,000円
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■エリカ・バドゥー・セットリスト
Erykah Badu Setlist @ Billboard Live Tokyo, October 3rd, 2017
(セットリストは毎日微妙に変わります)
[ ] denotes original artist/s
Show started 20:47
01. Intro
02. Caint Use My Phone
03. Hello / Hello It’s Me [Todd Rundgren]
04. Out My Mind, Just In Time
05. On & On
06. … & On
07. Love Of My Life
08. Piano intro - Happy To See You Again (Happ-E-2-C-U-A-Ginn) [Graham Central Station]
09. Appletree
10. A riff of Love To Love You Baby [Donna Summer] – I Want You - Don’t Stop The Music [Yarbrough & Peoples] – I Want You
11. Cleva - It’s Gonna Be Alright [Zapp & Roger]
12. Back In The Day
13. Danger
14. U Don’t Have To Call
15. Next Lifetime
16. All Night Long
17. Outro
Show ended 22:07
(RCの協力を得て作りましたが、もし、他にやった曲などがあったりしましたら、お知らせください)
■Members
エリカ・バドゥ / Erykah Badu (Vocals)
ラ・ケンドラ・ジョンソン / La Kendra Johnson (Background Vocals)
テロン・オースティン / Terron Austin (Background Vocals)
デュランド・バーナー / Durand Bernarr (Background Vocals)
アールシー・ウィリアムズ・ジュニア / RC Williams Jr (Keyboards)
ブレイロン・レーシー / Braylon Lacy (Bass Guitar)
ブラック・ダイナマイト / Blaque Dynamite (Michael Mitchell)(Drums)
フランク・モカ / Frank Moka (Percussion)
ラシャド・リンゴ・スミス / Rashad Ringo Smith (DJ)
■過去関連記事・ライヴ評
7回目の来日でエリカ・バドゥーは何を見せてくれるか
2017年09月29日(金)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12314608552.html
エリカ・バドゥー3年ぶりの来日~その需要と供給
2017年07月16日(日)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12292219478.html
エリカ・バドゥー~堂々としたその存在感
2010年04月17日(土)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10510442722.html
2005年のエリカ・ライヴ評~パープル・クイーン・エリカ
April 03, 2005
Erykah Badu: Purple Queen
http://blog.soulsearchin.com/archives/000014.html
■過去ライヴ履歴
(修正・初来日は2000年ではなく、1998年2月でしたので、通算7回目の来日になります)
⑦2017年10月(「ソウル・キャンプ」とビルボードライブ東京・大阪で来日)
2017年10月1日(日)、3日(火)、6日(金)、12日(木)ビルボードライブ東京
2017年10月9日(月・祝)、10日(火)
ビルボ―ドライブ大阪
2017年10月7日(土)=「ソウル・キャンプ」イヴェント出演
⑥2014年9月(「スターフェス」で来日)
9月20日 幕張海浜公園 StarFes.’14 特設会場(千葉県千葉市)、(StarFes.’14)
⑤2010年 一般公演 4月16日 Zepp東京、17日 横浜ベイホール
エリカ・バドゥー~堂々としたその存在感
2010年04月17日(土)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10510442722.html
④2006年、スプリング・グルーヴ出演
4月1日 大阪城ホール(Springroove 06)、2日 幕張メッセ(Springroove 06)
③2005年 Misia & Erykah Badu feat.
3月31日 愛知万博・長久手会場EXPOドーム
4月2日土曜、新木場スタジオ・コースト
そのエリカ・ライヴ評~パープル・クイーン・エリカ
April 03, 2005
Erykah Badu: Purple Queen
http://blog.soulsearchin.com/archives/000014.html
②2000年 11月14日 横浜ベイホール、15日 大阪MOTHER HALL、18日 Zepp Fukuoka、19日,20日 恵比寿ガーデンホール
① 1998年2月、2月3日=渋谷クアトロ、2月5日=梅田ヒートビート、2月6日=新宿リキッドルーム、2月7日=横浜ベイホール
Baduizm
Erykah Badu
Umvd Labels (1997-02-11)
Live
posted with amazlet at 17.09.27
Erykah Badu
Umvd Labels (1997-11-18)
MAMA'S GUN
ERYKAH BADU
MOTOW (2000-11-27)
Worldwide Underground
Erykah Badu
Motown (2003-09-16)
New Amerykah Part One: 4th World War
Erykah Badu
Motown (2008-02-26)
New Amerykah Part Two: Return of the Ankh
Erykah Badu
Motown (2010-03-30)
BUT YOU CAINT USE MY PHON [Analog]
ERYKAH BADU
MOTOWN (2016-11-18)
(2017年10月3日火曜・ビルボードライブ東京、エリカ・バドゥー・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Badu, Erykah
ENT>ARTIST>Badu, Erykah