◎ディアンジェロ、7か月ぶりのライヴはサイズダウンしたバンドで | 吉岡正晴のソウル・サーチン

吉岡正晴のソウル・サーチン

ソウルを日々サーチンしている人のために~Daily since 2002

◎ディアンジェロ、7か月ぶりのライヴはサイズダウンしたバンドで

【D’Angelo’s Downsized Live At Tokyo/Yokohama】

縮小版。

前回(2015年8月)のライヴの評判があまりによかったものだから、7か月で再来日。今回は東京(正確には横浜)ではキャパ(収容人数)5002の椅子付き大ホールでのライヴ。これが完売というからすごい人気だ。前回見られなかった人たちが今回こそはと足を運んだ形だ。

今回はメンバー曰く前回と比べると「ダウンサイズしたバンド」で、実際、ホーンセクション2人とバックコーラス1人がいないマイナス3の編成だ。また、ベースのピノは、イギリス本国でエリザベス女王の前でやるザ・フーの仕事が入り、その代打として彼の23歳の息子ロッコ・パラディーノが参加している。キーボードは2-3週間前に参加したばかりのボビー・スパークス。

場所が遠いこともあり早めに家を出たが途中渋滞で会場に着いたのが7時15分頃。なんとその時点で「まだ(本人)来てません」との情報! さすが、王者ディアンジェロだ。(笑) 本当は前日来日予定だったのが、飛行機に乗り遅れ一日遅い東京着になり、それで会場入りが遅れた。結局ライヴが始まったのは20時28分。58分遅れ。マドンナのこの前の2時間押しに比べればかわいいものか。(笑)

ツイッターにこう書いた。

「ディアンジェロ @TheDangelo 前回ゼップを90点とするなら今回は75点位。これには1時間の遅刻マイナス点は含まれてません。今回の遅刻の理由は本来だと昨日来日予定だったものが飛行機に乗り遅れ今日東京着になった。
前回遅刻理由→http://goo.gl/oNaEFZ 」

「良くも悪くもディアンジェロが必ずしも完璧主義者ではないことがわかった。昨夏ゼップで今のブラック音楽界ライヴバンドの絶対王者であるプリンスに一番近い男と感じたが、昨日はまだまだだと思った。きっといろいろなしがらみがあるんだろう。それでも現状では最高クラスに位置することは間違いないが」

~~~

2曲。

またセットリスト、今回のオーストラリア、ニュージーランドのものから2曲ほど外されている。短くなっているのだ。だから、本編「チッキン・グリース」まででほぼ62分くらい。これは短い。そして最後のアンコール、「アンタイトルド(ハウ・ダズ・イット・フィール)」をメンバーを一人ずつ帰しながら、最後自分がはけるという前回と同じパターン。Dが去って客電がすぐ点き、CD音源(アース・ウィンド&ファイアーの「オール・アバウト・ラヴ」=CD『ザッツ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワールド』=の後半部分)が流れそれが終わったところで21時58分。1時間半だ。前回が1時間55分だったから、こちらも「ダウンサイズ」。

また前半の音が悪く、ベースの音などはぼこぼこもごもごしていた。これがミキサーのせいなのか、プレイヤーのせいなのかは判断がつかない。

確かにホーンセクションがないとやりづらい曲があるのかもしれないが、「シュガーダディ―」「ベトレイ・マイ・ハート」などは聴きたかった。「チキン・グリース」はやってるわけだから、必ずしもできないことはないだろう。

ちなみに、オーストラリア/ニュージーランドのセットリストに入っていて東京で落ちたのは、プリンスのカヴァー曲「シーズ・オールウェイズ・イン・マイ・ヘア」と最新作『ブラック・メサイア』収録の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。どちらも前回来日時にもやっていないので聴きたかった。この2曲が入ってくれれば、80点にしてもいい。(笑)

~~~

音。

今回の会場は5000人規模の椅子ありの会場。前回の立ち見のゼップと、観客のステージに対する熱狂度が基本的に違う。凝縮感というか、人口密度が違うから、どうしても「熱気感」が拡散してしまう印象を持った。

あとベースのロッコが若干弱かったかもしれない。たぶん最初から彼なら何も言われなかっただろうが、昨年ピノで見てしまっているので、どうしても比較してしまう。ちょっとかわいそうといえばかわいそう。

ファンカデリックの「レッド・ホット・ママ」などはファンカデリックのロック色のでた曲でこれなどをもってくるところが、ディアンジェロならではの選曲だと思った。かなりこれでロック色が出て、後半に出てくるファンク、グルーヴ色とは一線を画していた。

今回はプリンス・ファンが多く見に来ていたそうだが、いま、プリンスを日本で見られない分、ディアンジェロを見ておこうと思った人が多いのかもしれない。

下記セットリスト、1から3までノンストップで一気にあげる。4は曲というよりもインタールードで、そこでペースを変えて、アイザイアのアコースティック・ギターの響きも印象的な「リアリー・ラヴ」に。このあたりから音もパフォーマンスもよくなった。

前回ゼップの「シャレード」のところがものすごく盛り上がり昂揚感が高まった記憶がよみがえったのだが、なぜか今回はそうならなかった。なぜだろう。会場のせいなのかな。バンドのせいなのか。

~~~

気分。

いろいろな理由で「ダウンサイズ」したバンドとセットリストになったのだろうが、ひとつ間違いないことはディアンジェロとそのバンドは、現在のブラック・ミュージック・シーンでもっとも力のあるリアル・ミュージシャンのリアル・ミュージックということは強調しておきたい。だから初めてディアンジェロを見た人にとっては、このライヴが100点満点でもぜんぜんいいと思う。

ジェシー・ジョンソンはライヴ後、「Dは、何よりヴォーカルがすごい。ジェームス・ブラウン、プリンス、スモーキー、あのヴォーカルの力は他の追従を許さないよ」と言った。彼はミュージシャン力より先にヴォーカリストとしての力を認めているようだ。

ディアンジェロには時間の感覚のようなものがない。また一般的社会生活をするための基本的な要素が欠けているようだ。ちょっと一瞬、スティーヴィー・ワンダー風なところも感じてしまう。だが、それとアーティストとしての才能、パフォーマンスはまったく違うもの。ステージでいいものを素晴らしいものを見せてくれればそれでいい。

また、けっこうDは気分屋で気分がのれば考えられないような素晴らしいパフォーマンスを見せることもあれば、あまりのらないとそれほどでもないことになる。それもアーティストとしてのDなのだ。だから逆に、我々ファンは「全部」見ておかないと、「いい時」に当たるかどうかわからない。

チャカ・カーンのライヴが一時期そうした「波」が激しかった。本当に素晴らしいときは、こちらが卒倒しそうになるくらい素晴らしい。だが酔っぱらってぐだぐだのライヴもある。そのよかった時をもう一度、と何度も足を運んでしまう。それだけの魅力があるアーティストということも言える。

Dのライヴは、ある種、そうしたこわいものみたさ的な、リスクもありますよ、でも、そんな中でとてつもなくいいもの見られる日もありますよ、ということなのだろう。

遅刻やDのそうしたキャラクターを含めて彼を理解していくと、よりファンになっていけるかもしれない。

今回ジェシーと30年ぶりにゆっくり話ができたので、その模様は後日、本ソウル・サーチン・ブログでご紹介します。

(この項続く予定)

~~~

ちなみに2日目大阪はほぼ同じセットリストながら横浜以上に盛り上がったようです。

また上記ライヴ評はあくまで、前回の物と比べて書いている部分が多いので、ディアンジェロのライヴ・アーティストとしての本質的な魅力については、前回ライヴ評で書いてありますので、そちらをごらんください。

~~~

下記記事は、本ソウル・サーチン・ブログに掲載されているディアンジェロ関連記事です。まだご覧になっていなければ、ぜひお読みください。

特に前回来日時43分遅れた理由というのは大変おもしろいです。アイザイアとディアンジェロとの出会いもなかなか興味深いです。

■ディアンジェロ関連記事

アイザイア・シャーキー、ディアンジェロとの出会いを語る
2016年03月21日(月)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12141237540.html

「ソウル・サーチン・ラウンジ第6回」満員御礼レポート(パート3)~ラルフのトーク絶好調
2016年03月20日(日)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12140363681.html
(ディアンジェロ1995年初ツアーのドラマー、ラルフ・ロールがディアンジェロのデビューについて語る)

なぜディアンジェロの開演は43分遅れたのか (パート1 of  2)
2015年10月09日(金)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12081901171.html

なぜディアンジェロの開演は43分遅れたのか (パート2 of  2)
2015年10月10日(土)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12082126042.html

ディアンジェロ・ライヴ@ゼップ(パート1)~リアル・ミュージシャンのリアル・ミュージック~
2015年08月20日(木)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12063447784.html

ディアンジェロ・ライヴ評(パート2)~ライヴでのもっともソウルだった瞬間10
2015年08月21日(金)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12063894114.html

ディアンジェロ・ライヴ評まとめ
2015年08月26日(水)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12065505502.html

上記「ライヴ評まとめ」に、加えて2015年9月30日にアップされたアベハ・マリポッサさんのライヴ・レポート。

これは素晴らしいライヴ・レポート。読み応えたっぷりの長文と美しい写真も。今回のディアンジェロ・ライヴ評で一番読ませます。前座Jディラのセットリストへのリンクも。(本文内) 

サイト: STRONGER THAN PARADISE 踊るシャーデー鑑賞記
筆者:Abeja Mariposa (アベハ・マリポッサ) 踊るシャーデー・ファン。
2015年9月30日公開

http://strongerthanparadise.blog122.fc2.com/blog-entry-513.html

ディアンジェロが『タヴィス・スマイリー・ショー』に2日にわたり出演(パート1)
2015年09月06日(日)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12069707600.html


■セットリスト ディアンジェロ、2016年3月28日(月)神奈川 パシフィコ横浜 国立大ホール(収容人数5002)
Setlist : D’Angelo, March 28, 2016 @ Pacifico Yokohama, National Convention Hall Of Yokohama

CD: J Dilla : Think Twice / One For Ghost / Rico Suave Bossa Nova / Workinonit / B.B.E. (Big Bobby Express) / Brazillian Groove (EWF)
Show started 20:28
01. Devil’s Pie (From “Voodoo”)
02. Red Hot Mama (Funkadelic’s cover)
03. Feel Like Makin’ Love (From “Voodoo”, Roberta Flack, Marlena Shaw cover)
04. (Brent Fischer Interlude)
05. Really Love (From “Black Messiah”)
06. The Charade (From “Black Messiah”)
07. Brown Sugar (From “Brown Sugar”)
08. Left And Right (From “Voodoo”)
09. Chicken Grease  (From “Voodoo”)
Enc. Untitled (How Does It Feel)  (From “Voodoo”)
CD (end part of) All About Love – Earth Wind & Fire
Show ended 21:58

■メンバー

◎D'Angelo (Vocals, Electric Piano, Guitar)
◎Jesse Johnson (Guitar I)
◎Isaiah Sharkey (Guitar II)
◎Rocco Palladino (Bass Guitar) (new)
◎Chris Dave (Drums)
◎Bobby Sparks (Hammond/Keyboards) (new)
◎Jermaine Holmes (Background vocals)
◎Charles “Red” Middleton (Background vocals)

~~~

■ディアンジェロ・アンド・ザ・ヴァンガード“ブラック・メサイア" 来日記念最強盤(期間生産限定盤/初回仕様) Limited Edition



通常盤

Black Messiah
Black Messiah
posted with amazlet at 16.03.29
D'Angelo And The Vanguard
Rca (2014-12-23)
売り上げランキング: 1,239


衝撃の『ブラウン・シュガー』

Brown Sugar
Brown Sugar
posted with amazlet at 16.03.29
D'angelo
EMI (2002-08-01)
売り上げランキング: 2,717


『ヴードゥー』

Voodoo
Voodoo
posted with amazlet at 16.03.29
D'angelo
Emi (2002-08-01)
売り上げランキング: 8,371


ライヴ

Live at the Jazz Cafe London
Live at the Jazz Cafe London
posted with amazlet at 16.03.29
D'Angelo
Virgin Records Us (2014-03-25)
売り上げランキング: 5,177


ライヴ・アット・ザ・ジャズ・カフェ・ロンドン-ザ・コンプリート・ショウ
ディアンジェロ
ユニバーサル ミュージック (2015-07-08)
売り上げランキング: 67,908


~~~~

Hitnrun Phase One
Hitnrun Phase One
posted with amazlet at 16.03.29
Prince
Npg (2015-09-14)
売り上げランキング: 1,231



ENT>MUSIC>LIVE>D’Angelo