古典文法公式5:強意の助動詞:つ・ぬ
このページは高校生の古典の学習を意図してつくったものです。
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:「つ・ぬ」は、基本的に完了・強意・並列という三つの意味がある。
2:「一夜のうちに塵灰になりにき」の「に」は完了。「き・けり」などと結びつき「てき・にき・てけり・にけり」などと用いられるケースも多い。完了のニュアンスの違いとしては、「つ」が人為的意志的・「ぬ」が自然的無意志的と言われるが、それを覚えたり、とらわれわれたりする必要はないだろう。
3:「つ・ぬ」で大事なのは「髪もいみじく長くなりなむ」などのように「つべし・ぬべし・てむ・なむ・つらむ・ぬらむ」のように推量系統の助動詞と結びつくときは強意の意味で解釈するのが基本である。「風吹きなむ」であれば「風がきっと吹くだろう」と解釈する。「む・べし」が意志の場合でも、「このこと成じてん」なら「ぜひとも成し遂げたい」のようにその意思を強調する働きをする。
4:並列は「行きつ戻りつ」という現代に残る表現を思い出せばそれでよい。
5:完了・強意が高校文法の一般の覚え方であって、それでいいが、本来的には確述の助動詞とするのが正しいかもしれない。完了という言い方がよく考えると難しい。生徒が「先生が来た」と言う場合、先生が教室に到着した状態を表すと同時に、まだ到着していないのに、むこうからこちらに来つつある先生の状態も「~た」と表現される。また全くのついでだが、朝起きて窓を開けたら一面の銀世界であったとき、「あ、雪が降ってる」と言うが、それは今雪が降っているという状態も指すと同時に、すでに雪は止んでいる状態をも示す表現である。
■→接続と活用: 「つ・ぬ」とも連用形接続、活用は「つ」は下二段型(て・て・つ・つる・つれ・てよ)、「ぬ」はナ変型(な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね)
■→識別問題へのリンクはこちら→「ぬ」の識別・「ね」の識別・「に」の識別
B・基本問題:意味・活用形・口語訳を確認!
ア:用ありて行きたりとも、そのこと果てなば、とく帰るべし。
イ:黒き雲にはかに出で来ぬ。風吹きぬべし。
ウ:このことかのこと怠らず成じてむ。
エ:乾飯の上に涙おとして、ほとびにけり。
オ:かばかりになりては、飛び降るとも降りなむ。
解答
ア・完了・未然
・用があって行ったとしても、その用が終わったならすぐに帰るのがよい。
イ・完了・終止:強意・終止
・黒い雲が急に出てきた。きっと風が吹くだろう。
ウ・強意・未然
・このことやあのことを怠らずにきっとやり遂げよう。
エ・完了・連用
・乾飯の上に涙をおとして、(乾飯は)ふやけてしまった。
オ・強意・未然
・これくらい(の高さ)になっては、飛び降りたとしてもきっと降りられるだろう。
C・入試問題
■傍線12「ぬ」の文法上の意味は何か。
松はひとりになり(1)ぬべきにやと、遠き旅寝の胸にたたまり、人びとの別れ、芭蕉の名残、ひとかたなら(2)ぬわびしさも、つひに五年の春秋を過ぐして、再び芭蕉に涙をそそぐ。
解答:1=強意・2=打消