古典文法公式3・4:過去の助動詞:き・けり
このページは高校生の古典の学習を意図して作ったものです。
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:「き」「けり」は共に意味上、過去・回想の助動詞と言われる。
2:二つの助動詞の違いは、「京に下りしとき」「昔男ありけり」の例文にうかがえるように、「き」が直接体験(経験過去)の表現であるのに対し、「けり」は間接体験(伝聞回想)を表現している。
3:「けり」にはほかに「今宵は十五夜なりけりとおぼしいでて」などのように、あることに初めて、あるいは改めて気がついた心の揺れを表す詠嘆(気付きの「けり」とも言われる)の意味がある。和歌の末尾にある「けり」は詠嘆である。また散文においても、会話・心内語末における「けり」には注意して文脈を読む必要がある。また「なり(断定)けり・べかりけり」の「けり」も詠嘆であるケースが非常に多い。
■→接続と活用:「き・けり」とも連用形接続。「き」はカ変・サ変につく場合、「こし(用例は「来し方」のみ)・せし」など未然形につくケースもある。「き」の活用は特殊型(せ・○・き・し・しか・○)なので覚える必要がある。「けり」の活用はラ変型(ら・り・り・る・れ・れ)
■→識別問題へのリンクはこちら:「し」の識別・「けれ」の識別・「せ」の識別
B・基本問題:意味・活用形・口語訳を確認!
ア:雨のいたく降りしかば、え参らずなりにき。
イ:「げにおもしろく詠みけり」と言ふ。
ウ:あひみてののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり
エ:昔ありし家はまれなり。
オ:今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。
解答
ア・過去・已然:過去・終止
・雨がひどく降ったので、参上することができなかった。
イ・詠嘆・終止
・「なるほど趣深く詠んだものだなあ」と言う。
ウ・詠嘆・終止
・あなたにお会いしてから後の切ない気持ちに比べると、昔(あなたとお会いする前)は何も物思いをしていなかったようなものですよ。
エ・過去・連体
・昔あった家は希である。
オ・過去・終止
・今となっては昔のことだが、竹取の翁というものがいた(そうだ)。
C・入試問題
■1:傍線部を「けり」の用法に注意して口語訳せよ。
たいだいしとおぼしたるなりけりと、われにもあらぬ心地して
■2:この文章ではある規準によって助動詞「き・けり」が使い分けられている。その基準によって空欄に「き・けり」を適当な活用形に直して入れよ。
宿河原といふ所にて、ぼろぼろ多く集まりて九品の念仏を申しけるに、外より来たるぼろぼろの、「もし、この御中に、いろをし房と申すぼろやおはします」と尋ねければ、その中より、「いろをし、ここに候ふ。かくのたまふは、誰そ」と答ふれば、「しら梵字と申す者なり。己が師、なにがしと申し(ア)人、東国にて、いろをしと申すぼろに殺され(イ)と承り(ウ)ば、その人に逢ひ奉りて、恨み申さばやと思ひて、尋ね申すなり」と言ふ。
解答
1:いいかげんだとお思いになっているのであるなあ
2:ア=し・イ=けり・ウ=しか