長年タイトルも分からなかった映画が… | sorariri89のブログ

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その昔、多分深夜のテレビ放送で観たと思います。どうってことない映画なのに、やけに心に残っていました。

 

タイトルも覚えていなかったのですが、ウサギが出てきて、オーロラが出てきて、確かあのバート・ランカスターがおかしみを湛えた役で出ていて、なんとも言えないしみじみとした余韻が良かったなぁ…と残っていました。

 

ずうっと気になっていたのに探しようも無かったのですが、ここにきてまたふと思い出しました。何故だか急に、もう一度見たい!となったのです。

そこで

映画」「 オーロラ」「ウサギ」「バートランカスター」で検索したところ、一発で判明!


 

そうそう、これだこれ!

 

 

長年の喉のつかえが取れてスッキリしたのは言うまでもありません。ありがたや、文明の利器!





「ローカル・ヒーロー 夢に生きた男」


1983年作のイギリス映画です。112分

監督:ビル・フォーサイス

出演: バート・ランカスター

        ピーター・リーガート

        デニス・ローソン

        ピーター・キャバルディ

       フルトン・マッケイ

      


その年の英国アカデミー賞監督賞を、NY映画批評家協会賞脚本賞全米批評家協会賞脚本賞を受賞しています。評価された映画だったんですね。ずっと心に残っていたのを改めて納得した次第です。


U-NEXTに見放題であったので、何十年かぶりに観ました。


 



スコットランドの小さな村を舞台に、用地買収のためにやってきたアメリカ石油会社のエリート社員が素朴な自然に触れながら住民たちとの交流を通して自身の人生を見つめ直す姿を描いたヒューマンドラマ。イギリスならではの独特のユーモアとペーソスが漂い、文明批判のテイストも味付けされている。




アメリカ最大の石油会社に勤めるエリート社員のマッキンタイアはコンビナート建設の用地買収交渉役に抜擢されてスコットランドの小さな漁村を訪れます。

交渉は難航すると思われていたのに、結構住人たちは乗り気。金持ちになれるなら、これまでの生活を手放しても惜しくないと思ってるのか。


たまたま宿泊した宿屋の主人アーカートが会計士ということもあり、マッキンタイアは彼とやりとりを重ねることになります。


この主人は登場したときから普通ぽく見えてかなりクセが強い。でもどこか憎めない村の不思議な住人の筆頭格で、会計士だけあってデカい数字の話にも怯まずシビアに渡り合える。


奥さんとラブラブかと思えば、ちょっと好意を寄せるマッキンタイアが村での生活にすっかり馴染んで、ここの生活を奥さん共々譲ってほしいと酔った勢いで懇願すると、真顔でOK出したりするし、

 

現地での相棒オルセンが車でひいてしまい宿屋まで連れて行ったウサギを、アーカートは料理して二人のディナーに出すという無慈悲さで、去り際に涼しい顔で「ラパンはどうだった?」と爆弾落とす。


愛くるしいウサギで、オルセンは「ハリー」と名付け、マッキンタイアは別れた彼女トゥルーディの名前をつけて面倒を見ていたというのに、あっけなく二人の胃袋に収まってしまったのです。


美味しそうに食べていた二人の顔色が急に変わって、オルセンは憤慨するのですが、マッキンタイアはというと、食べた自分も同罪みたいな態度でした。


骨折していて苦しそうだったし、信じられないなら調べてみろ、と放言されたマッキンタイアが、食い散らした残骸の骨を確かめるかのようにつまみあげる姿には、なんともいえない可笑しさがありました。

これで私は強烈に覚えていたんでしょうね。


全編に渡ってこんな調子のユーモアが溢れていて、相棒のオルセンも黙って立っていればイケてるのに、喋ったり動いたりすると、やたらにひょうきん過ぎるという、いい味出してました。


何故か海洋学者の謎めいた女性マリーナを口説く時は日本語の単語を口にするんですよね。アシカ、アシ、キス、セップンとかって…

足にキスをしてるとマリーナの足の指の間に水かきみたいな膜があるのに気づいたオルセンが一瞬固まる場面、ファンタジーなのかホラーなのかという奇妙さにこちらまで固まりつつ…


 

カネの匂いをプンプンさせる余所者たちが気になるはずなのに、遠巻きにお節介を焼く村人たちも不器用でおかしい。暮らし向きは決して豊かではないけど、すごく穏やかで足るを知る生活に見えました。


誰の子か答えられない赤ん坊をベビーカーに乗っけて面倒見てる男たちもおおらかというかシュールすぎるというか、父親が誰かわからないというなら、これもかなりブラックです。


マッキンタイアは本当は違うのにスコットランド出身ということで白羽の矢が当たった訳ですが、社長から面と向かってもう一つの使命を仰せつかっています。


現地の空の様子に変化があればつぶさに報告するようにと命じられたのです。とくに乙女座。

社長のハッパーは実は天文オタクで、社長室には自前のプラネタリウムまで備えつけているのです。大事な会議の時でもイビキをかいて眠りこけているし、ちょっといってしまってるセラピストには嫌気さしていて、とにかく関心があるのは星のこと、空のことなんですね。


マッキンタイアにはどうでもいいことだし、面倒臭いことこの上無しだったのが、予想外の天文ショーに遭遇して放心するほど身体に電気が走ったようで、次の日から遅々として進まない用地買収そっちのけで、背広を脱ぎ、靴を脱ぎ、磯で貝殻を拾ったりするようになります。自然の力は偉大ですね。



ハッパーへの報告手段は岸壁にある赤いボックスの公衆電話のみ。そこでコインを途切れないようにくわせながら、交渉の進捗状況や獅子座流星群のことを告げます。国際電話になるからその度に小銭をたっぷりかき集めないといけなくて、こんなまだるっこしい方法、若い人たちには信じられないでしょうが、私たち世代にはすごく懐かしいですよね。


村の祭りの夜にオーロラが現れたときは思わず公衆電話に走り、ハッパーに興奮した口調で実況中継します。見せてあげたいとまで口にするマッキンタイア。確実に村での時間が彼を変えていったのが伝わってきて、微笑ましかったです。


交渉においては駆け引きの末にまとまりそうになった大詰めで、浜辺の小屋に暮らすベンだけが土地を手放すことに同意せず、暗礁に乗り上げてしまいます。


答え合わせはされませんでしたが、彼の苗字はノックス社の創業家と同じというのもシャレてるなあと感じました。ベン曰くスコットランドでは由緒ある家柄ということです。


ベン・ノックスの生き方には芯が通っていて、大金に目がくらんだりはしません。幸せとは何か、本当に大事にして守らなければならないものが何か分かっているからです。かといって世捨て人でもないところが魅力的で、スノッブの体現者のようなハッパーと胸襟を開いて歓談できるのですから、二人には相通じるものがあったわけです。




タイトルの「ローカル・ヒーロー」については、まるで戦隊もののようで内容に直結しにくいし、サブタイトル「夢に生きた男」が余計な付け足しのような気もしたのですが、改めて見るとなかなかに深いと唸ることになりました。


最初は村人たちに新しい生活を与えるべくやってきたマッキンタイアがヒーローということなのかなと思ったりもした後、

実は海や土地を守ったベンがそうであり、さらにには実際その目で素晴らしい自然を見るやベンに同調していとも簡単に決定を覆し、自然保護の研究所を作ることにしたハッパーがラスボス、ヒーローだったんだ…とたどり着いたのです。


名優バート・ランカスターが全てをかっさらっていくという、痛快な心地良さ。してやられましたね。


マッキンタイアはエリートとはいえ所詮は雇われ社員、現地でのお役目終了となれば速攻新たにヒューストン本社での任務に向かわされることになり、ヘリコプターに乗り込んで慌しく村を離れるのですが、ここで村人の一人が慌ててマッキンタイアにサインをねだるという小技が挟まれていて、純朴で不思議な村人のちょっとズレた可笑しさは最後まで健在でした。


高層マンションの自宅に帰りつき、ポケットから何を出すかと思えば、ビーチで拾った貝殻たち。切なくなりました。ボードに数枚写真を貼り付けたあと、心を村に置いてきたようなマッキンタイアがベランダから眺めた風景は…


あんな時間を過ごした後の現実に、何が見えるというのでしょう…


イヤでももの悲しさがつきまとうラスト…


ところがオーラス

何なの、この心の浮かび方は!なのです


昔の電話の音ってあったかみがあっていいですね。


こんな時代にはもう戻れないとはっきり言える今見るからこそ、余計に胸に沁み入るものがあります。


そして、劇中の音楽がこれまた良いのです。美しく素朴な自然と調和して琴線に触れ、波の音と重なって郷愁をそそります。


ずっと心に残っていた映画と再会できただけでなく、私のベストイギリス映画のひとつに確定したという飛び出すハート


(個人的に違和感覚える翻訳が2つありましたが…)   


スコットランドの村の自然が何よりのヒーローかも、と思いつつ

おススメです


youtubeにサントラと映像の動画が何本かありましたので、あげておきます。本編の流れからご覧になればもっとグッとくると思いますが…






ありがとうございました😭