タクシー運転手―約束は海を超えて を観たよ!
茨城県の片田舎から、韓国で大ヒットした映画、「タクシー運転手―約束は海を超えて(原題:택시 운전사/タクシー運転手)」を見るために新宿まで行ってきました!
去年8月に韓国で公開され、数々の賞を受賞し、ポスターによると観客動員が1200万人を超えた、大ヒット作品。内容が1980年に韓国で起きた悲劇、光州人民蜂起の実話をもとにしていて、主演がソン・ガンホ/송강호。韓国ではトップ俳優の一人(だが、日本文化の中で育った僕には、どうしても毒蝮三太夫さんに見えてしまう)。
これは必ず見るべきだと思い立って上映館を調べてみたら、なんと、僕の居住・勤務地域周辺である茨城県、埼玉県、栃木県には上映館が無かったんです!なので、片道2時間、常磐線と山手線を乗り継いで1,660円かけて新宿へ!
上映30分前には、上映館、シネマート新宿に到着してチケット購入!すでに満席に近く、最善列から2列目の左右にしか席がなく、左側の2列目の席で観ました。上映開始時にはもう満席でした。
前半はコメディタッチに、11歳の娘を一人で育てるソウル在住の保守的なタクシー運転手の様子が描かれますが、10万ウォンという高額な報酬につられて外国人のジャーナリストをそれと知らず乗せて遠距離の全羅南道、光州/광주に乗せて行った後半に入ると、光州/광주で軍隊がデモ隊に容赦ない暴力や銃撃を加える様子を見て、初めは外国人ジャーナリストの邪魔ばかりしていたのが、徐々に協力し、助け合う関係になっていきます。
このとき、光州市内では多くのタクシー運転手が負傷者を病院へ乗せて行ったりして大活躍したそうです。映画にはそのような地元のタクシー運転手たちも登場して一緒に活躍します。
この映画のすごいところはなんと言っても、その民衆虐殺シーンの生々しさです。これは筆舌に尽くしがたいので実際にご鑑賞ください!まるでドキュメンタリー映画を観ているようでした。
韓国軍兵士たちの残忍さと、撃たれた人々の無残な姿がリアル過ぎて、涙を抑えることができませんでした。
北と南に分断された後、同族同士で殺し合った朝鮮戦争が韓国の恥ずかしい歴史だとしたら、南側に過ぎない韓国内で権力者が市民に対してジェノサイイド/GENOCIDE(大量虐殺)を行った、この光州事件は、それにも劣る恥辱の歴史の最たるものだと思いました。そう考えるとまた涙が...
また、光州市を道路封鎖と電話網の切断により完全に隔離し、情報を漏らせない状況にして大量殺人を行った殺人鬼大統領、全斗煥/チョン・ドゥファン/전두환。メディアは民衆の抵抗を危険な勢力や暴徒の反乱と表現し、市民を完全な悪者として報道しました。死者数、負傷者数も実際よりもずっと少なく公表したのです。
この映画に登場したドイツ人ジャーナリストが決死の覚悟で撮影した映像が海外の電波に乗ることによってようやく世界が真実を知り、事件が収束を迎えることになったのです。 この権力と戦わずに従うばかりの韓国メディアの報道姿勢は、福島原発事故後の日本のメディアが向かっている方向と同じだな、と思ったのは僕だけではないでしょう。
映画のオープニングは、主人公がタクシーを運転しながら、チョー・ヨンピル/조용필の1979年のヒット曲、短髪頭/단발머리を流して一緒に歌いながら運転しているシーンです。この歌に合わせて映画のシーンを編集した動画をご紹介します。
この歌を、今人気の兄妹デュオ、悪童ミュージシャン/악동뮤지션 がカバーしています。お兄さんは兵役中だそうですが、彼らのバージョンで映画のシーンを編集した動画がありましたのでぜひご覧ください。
また、光州市民たちが歌う、戦いの歌、뿌리파 の歌詞が違っているバージョンが歌われました。
光州人民蜂起を扱った映画としてはもう一つ、「光州5.18/華麗なる休暇/화려한 휴가」 をご紹介しましたが、こちらの主人公もタクシー運転手でしたね、地元光州の。