韓国の現代史の恥部を描いた映画「光州5.18」
(初投稿日: 2015年1月7日 過去記事を加筆修正した記事です)
以前から見たいと思っていた映画、「光州5.18」/<화려한 휴가/華麗な休暇>をDVDで見ました。ベテラン名優、アン・ソンギ/안성기、聖徳女王/선덕여왕の主役、イ・ヨウォン/이요원、イルジメ/일지매の主役、イ・ジュンギ/이준기など、豪華キャストを揃えています。
この映画は1980年に全斗煥/전두환/チョン・ドゥファン将軍(当時)が起こした全羅南道/전라남도の光州/광주で行った人民大虐殺のときの光州市民の戦いを描いた作品です。似つかわしく思えない原題、「화려한 휴가/華麗な休暇」とは、政府軍が光州市民を一掃するために5月18日に開始された作戦の名称だったのです。
この事件は正式には5.18光州民主化闘争/광주 민주화 운동あるいは光州民衆抗争/광주 민중항쟁ですが、非公式に単に光州事件と呼ばれることもあります。
1980年には僕は16歳。ちょうど高校生の頃で、学校の先生や両親から色々な話を聞いたし、その後も学ぶ機会が何度もあったので知っているつもりでいましたが、まさかこの映画に描かれたような残酷な事件だったとは、とても思い描くことはできませんでした。
一言で言えば、光州市民の大虐殺でした。市民の中に何人かいると思われた共産主義思想を持った活動家を捕らえるために全市民を銃殺しようとしたのです。なんという不条理でしょうか!光州市民はこの卑怯な攻撃に甘んじて簡単に引き下がらず、兵役経験がある男性たちを中心に市民軍を結成し、訓練し、大いに対抗して命がけで韓国軍を相手に戦ったのです。
何人市民が死んでも暴漢扱いで、テレビのニュースには暴漢たちによって軍人が犠牲になったが、市民は一人も殺されていないという報道がなされていたのです。後の政府発表によると、実際には170人の尊い命が犠牲になり、そのうち144人が民間人だったそうです。
いくら何でも、この映画に描かれているような皆殺しのスタンスだったとは想像もできませんでした。こんなにひどい市民大虐殺という重罪を犯した全斗煥/전두환/チョン・ドゥファンがクーデターにより大統領になったことで、16年間軍事独裁政権を続けた朴正熙/박정희大統領が暗殺された後もなお、新たな軍事政権が登場したわけです。
全政権下で韓国人たちは常に赤狩りのような恐ろしい弾圧に怯え、度々戒厳令が引かれ、大学生を中心とした民衆運動が日常的に繰り広げられるという大変な時代を過ごしたのです。1988年に次の大統領に交代するまでこの状態が続くのです。1988年といえばソウルオリンピック/서울 올림픽の年。韓国はこのとき初めて平和的な政権交代が行われ、ようやく、いわゆる民主主義国家の形を作り始めたのです。
この映画により韓国は僕が20代半ばの頃までとんでもない軍事国家だったということを再認識しました。民主国家になってまだ30年にもなってないんです。ですので、そのとき実体験した人々は生き残っています。その体験がこの映画製作に生かされたことでしょう。
この映画にハッピーエンドはありません。
日本では白竜がロック・シンガーとして「光州City」という歌を歌い、この歌の歌詞が問題視されて、LPレコードが発売禁止になったことも話題になりました。
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