珍しくピアノ・ライブへ行った。
4年前に一風変わったライブに行って以来。
今回は「穐吉敏子 メモリアル・コンサート」。
あ、「あきよしとしこ」と読みます。
日本のジャズピアニストとしてはもちろんすべてのジャズプレイヤーの最高齢奏者ではないかと思われるピアニスト/作曲家の穐吉敏子95歳のメモリアル・コンサート。
あのナベサダ(渡辺貞夫)だって、彼女のグループに雇われて頭角を表したのですから。
以前、テレビで彼女の人生を振りかえると共に今の時代に与えた影響を収めたドキュメントを観た。
戦争を経験し、まだ女性が仕事を探すのが難しい時代に、バーのピアノ弾きの仕事に着き、そこから才能と努力でバークレー大学に入学し、ジャズの本場アメリカで活躍する。
もちろん、女性、日本人という差別や偏見もある中で、ジャズの殿堂入りを果たすまでになる。
実は、穐吉敏子は名前は知っているが、レコードも聴いた事はある、ホントそのくらいだった。
あ、あとMONDAY満ちるの母親ってこととか。(苦笑)
(そういえば昔、斑尾のフェスで一足先にMONDAY満ちるのライブは見たなぁ。)
なので、ほぼ一見リスナーなので、詳しく語れるほどではない。
この番組を観て、機会があれば彼女の演奏を生で聴いてみたいと素直に思った。
会場は、本来はクラシック音楽用の会場である第一生命ホール。
20年ぶりくらいの再訪。
今回は2階席の一番後ろ。
予定より早めに会場に入ったので、まだ観客はまばら。
ステージ上にズームしてみます。
この日のライブは、穐吉敏子(p)、ルー・タバキン(sax&fl)、金森もとい(b)、高橋信之介(ds)という布陣。
客電が落ち、メンバーが登場。
穐吉女史はもう歩幅が小さく95歳ならではの登場だが、拍手喝采!
オープニングは必ず決まっている。
「Long Yellow Road」でスタート。
正直、ピアノの音が他の楽器に消される感があり、やや残念…。
そりゃ、上原ひろみや小曾根真と比較しちゃいけません。
前述のようにここはクラシックホールなので、生音で演奏していることもあるだろう。
伴侶でもあるルー・タバキンのサックスの音がやはり勝っている。
1曲目が終了、挨拶をしようと思ったら、なんと制作側のチョンボでMCマイクを用意していなかった。
地声で、穐吉女史とルー氏が一生懸命語る。
すると、ルー氏がその事もあってか、「プログラム・チェンジ」と言い舞台から捌けて、ピアノトリオでの演奏。
2曲目が終わると、ルー氏がスタッフを伴い舞台に登場。
スタッフがここでマイクを穐吉女史に渡すと。「マイクが来ました。」の第一声に割れんばかりの大拍手が起きた!(笑)
2曲目ではピアノがしっかり聴けた!(嬉)
とてもたおやかな、でも時々見せるアグレッシブな音がいいポイントになって大変聴きやすいプレイ。
さ、ここからこのメンバーでの演奏が拍車をかけて始まるぞ!と思ったのだが、個人的印象は「穐吉敏子メモリアル・コンサート」と言うより「ルー・タバキン・ショー 時々ゲスト穐吉敏子」といった感じのステージだった。
やはり、年齢的な事もあるのかな?
プログラムの半分くらい穐吉さんが演奏から外れ、ピアノの陰に隠れ立っていた…。
舞台から捌けるのも大変なんだろう…だったらピアノの後ろに椅子くらい用意してあげてもいいのに…。
しかしながら、ルー・タバキン氏が思いのほかカッコよかった!
生音での演奏なので、マイクが無く、ステージ上をあちこち動き、時折ステップを踏みながらの熱演。
ルー氏だって80歳代ですよ!
サックスだけでなくフルートも吹くのだが、和風な音階作品ではフルートがもう篠笛にしか思えない音色で、日本の音楽もかなり勉強されたのだと思います。
なので、ルー・タバキンのリーダー・グループの演奏も、観てみたいと思ったほど。
第2部は穐吉ソロで「The Village」でスタート。
改めて95歳とは思えない演奏を実感。
彼女は実はほとんど自身がリーダーでのグループ演奏をやって来た方なのだが、一度だけ他人のグループに在籍した事があり、それがかのチャールズ・ミンガスのグループ。
全盛期のミンガスは結構武勇伝があるらしく、穐吉曰く「だいたい、そういう話って本当の事なの」とおっしゃる。(笑)
そんな思い出を生き証人として語れるのだから、少しでもお元気で長く生きてほしい。
そのチャールズ・ミンガスに捧げた「Farewell To Mingus」や、広島で原爆被爆者を家族に持った僧侶からの願いで書いた「Hope」などを演奏。
ジャズや日本の歴史をも音楽に出来るのがやはりスゴイと思う。
そして説得力が違う。
自分の母も先日卒寿を迎えたが、ほぼ寝た切り生活。
穐吉さんには、出来るだけ長く元気にピアニスト/作曲家として活躍して欲しい。