この週末に、この月2度目となるオーチャードホールへ。
珍しく、ピアノ演奏会。
とは言え、普通のピアノ演奏会などなかなか行かないのだが、この組み合わせなら観てみたい!
ジャズピアノの山下洋輔氏とクラシックピアノの横山幸雄氏のVSステージ!
もっとも、わたくしジャズもクラシックも門外漢なので、それぞれのジャンルに精通している方々ほどの知識は持ち合わせおりませんが、ジャズの中でも“フリージャズ”という何だかよく解んないスタイルの第1人者の山下氏と、クラシックという楽譜に忠実に再現するスタイルである横山氏のお二方がどう相まみえるのか?それはそれで見ものじゃね?と早々にチケット予約した次第。(笑)
それがこの「Pianos' Coversation 2021」。
ステージ上に2台のグランドピアノが向かい合うように置かれている。
5分押しでスタート。
1曲目は誰もが知ってるベートーベン「運命」第1楽章!
ホント誰もが知ってると思うので、文字上で書いてもお判りいただけるかと思うのですが、冒頭の「ジャ、ジャ、ジャ、ジャーーーーン! ジャ、ジャ、ジャ、ジャーーーーン! 」の最初の「ジャ、ジャ、ジャ、ジャーーーーン! 」の後に山下氏がアドリブで音を入れ隙間を埋めるや、また2度目の「ジャ、ジャ、ジャ、ジャーーーーン! 」が入ってくると言うね、前代未聞の「運命」。
ってか、オーケストラ作品なのにピアノだけで演奏というの自体お初か??
ま、そんなわけでクラシックの横山氏がオーケストラ部分も含めあの「運命」をピアノ演奏用にアレンジし、そこに山下氏がインプロビゼーションで音を出し絡んでいくという手法での演奏。
いや、なかなか面白かった。
あと、2人のピアノを奏でる音も違っていて、横山氏の音は1つ1つの音がしっかりと大きく出る感じ、対する山下氏の音はまるで何かのエフェクターをかけたように最初に出した音から続く音が途切れずに続いているような、うまく表現出来ないが1つ1つの音より、ある程度の尺がまとまって1つの音に聞こえるような感じなのでした。
この辺り、個性?音楽性?年齢差?(笑)
ステージングも1曲終わるごとにMCが入り、やった曲または次にやる曲のちょっとした紹介もあり、情報量の無い自分にも理解しやすいヒントが多々あった。
(最も、私などでも知ってる有名曲ばかりでしたが。)
続いて、それぞれのソロ演奏で、まず山下氏のラヴェル「ボレロ」。
あの曲の持つ美しさとリズム感を消すことなくジャズならではのグルーヴも打ち出し、終盤は山下洋輔の代名詞の「エルボドロップ」連発!(笑)
三沢光晴亡き今、エルボの名手はこの山下御大だけ!(え?)
79歳にして戦うピアニストぶりは健在。
続く横山氏ソロ演奏はショパン「ポロネーズ第6番<英雄>」。
横山氏は、ショパン・ピアニストと言われるほどショパンの作品の演奏数では多く、ギネスに載るほど。
こちらも、THE安定と思えるほどの演奏を拝聴。
そして再び2人の共演で、ショパン「ノクターン第2番」を1曲目の「運命」同様に、横山氏の軸となる演奏に山下氏が自由に絡む絡む。
1部の最後は、山下洋輔作品「キアズマ」を今度は横山氏が即興演奏で絡んでいくというクラシックがいいの?そんなことして!と思うトライだが、MCで「かつてはクラシックは作曲者が自身で演奏会でピアノを弾く際は途中自由な感性で弾いていた…」と言う事で、「ショパン作品が続いたので、ショパンぽい演奏になりそうです。」とクラシックピアニストの即興演奏を初体験。
今年デビュー30周年を迎えた横山氏のキャリアでは、このくらいも朝飯前のような堂に入った演奏でした。
20分の休憩をはさみ、お互いがそれぞれ相手に弾いて欲しい曲をリクエスト。
横山氏は山下氏にスタンダードナンバー「TEA FOR TWO」を、そして山下氏は横山氏にグノー「アヴェ・マリア」をリクエスト。
「TEA FOR TWO」軽快さの持つ心地よさ、そして「アヴェ・マリア」の荘厳さと言うか中世の教会をイメージ出来ちゃうこの曲の強さみたいなものを、それぞれ改めて感じました。
そして終盤はガーシュウィンの作品を2つ。
まず「3つのプレリュード」より第2曲。
最後に名曲「ラプソディー・イン・ブルー」。
心なしガーシュウィン作品は双方が一段とノッたプレイをしていたように映りました。
アンコールは、まずはクラシック式で会釈のみで一度登場。
2回目の登場でラストソングとなる山田耕筰「赤とんぼ」を共演。
ジャズだクラシックだなんて言っても、日本人にゃこの童謡の持つ哀愁やノスタルジーが、そんな事も忘れさせてくれる名曲なんだね~と実感したのでした。
舞台袖に掃けるのに、毎回2人の「お先にどうぞ」と譲り合う姿に可笑しさと相手への尊敬の念を感じた。
なかなか良いものを観聞きし、満足な週末を過ごせました。