高橋幸宏の遺言~映画「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」 | 新・迷って、悩んで、でも笑ったりもして…。

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不惑の40代などと言うものの、40代になってから「踏んだり蹴ったり」、「弱り目に祟り目」な日々…。
あれから幾年過ぎ、日々の一喜一憂を好き勝手にほざいてる次第です。

昨日から、ある音楽ドキュメンタリー映画が公開となった。

トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代

日本で、加山雄三と並びシンガーソングライターの基盤を作った加藤和彦を振り返る作品。

日比谷シネマズシャンテの最終回、登壇者挨拶もあってか超満員!

ちなみに上掲画像は左から、MC:上柳昌彦アナウンサー(ニッポン放送)、松山猛、尾崎亜美、小原礼、高野寛、石川紅奈、高田漣、相原裕美監督。

まずは、この面子で加藤和彦の思い出や印象を語る。

加藤氏の人柄や、作り出した作品が今も愛されるその魅力を近しい人物、ミュージシャンの立場から語られていく。

 

そして、本編。

まずは、あの迷曲!「帰って来たヨッパライ」を一躍メジャーに導いたラジオ「オールナイトニッポン」の顔だった斉藤安弘氏が久々に「オールナイトニッポン」にて喋っているシーンから。

「トノバン」とは加藤和彦のニックネームで、英国シンガーソングライター〝ドノバン”をもじって「殿バン」というところからのようだ。

果たして、今の世の中で老若男女問わず「トノバン」、「加藤和彦」と言ってどれほど知っているだろうか?

また知ってる方々もその印象がそれぞれ違うのではないか?

1960年代半ば、関西の大学生たちがフォークグループ「ザ・フォーク・クルセイダーズ(通称フォークル)」を結成。

学生生活終了の記念に自費制作版のアルバムを作り、その中で現代では普通な宅録を行ない、テープの録音・再生の回転数を上手く利用し、それまでに無かったポップスを作り出した。

それが「帰って来たヨッパライ」だった。

この曲が、関西のラジオで火が付き、前述の「オールナイトニッポン」で全国区のヒットとなった。

自分も、当時団地住まいで2階に住んでるヒロミちゃん家に行くとお父さんがステレオでよく聞かせてくれたのを覚えている。

その後、朝鮮の名曲「イムジン河」を2ndシングルで発売準備し発売直前で朝鮮総連から国として正式にクレームが入り発売中止。

その代わりに咄嗟に作成したのも「悲しくてやりきれない」という名曲!

これらの中心人物こそ加藤和彦。

ここまででもかなりのドラマだし、その辺りの事も映画では関係者が当時を振り返り色々と語る。

今でこそ、フォークソングと言うと前世紀のダサい音楽とされているが、当時は現在で云うK-POPと同じ立ち位置で、若い世代は皆夢中で聴き、自らパフォーマンスを行なった。

時代の最先端の音楽で、そのルーツはアメリカの大学生たち。

K-POPと違うのは、PPMやボブ・ディラン、ジョニ・ミッチェル、そしてドノバンらが、社会に対してメッセージも発して時代を変えていくほどのものだった。

そんな米英のフォークを皆こぞってコピーするさなかに、アジアのしかも朝鮮の曲を取り上げるあたり既にグローバルなアンテナと感覚を持っていたのが加藤氏だった。

学生生活も終えるにあたり、フォークルは解散するが、その後加藤氏はいきなりロックバンドを作る。

まだ日本にロックミュージックなど無い時代だ。

当時、世界を席巻していたグラムロックやハードロックの要素をいち早く取り込み「サディスティック・ミカ・バンド」を結成し、なんと日本でなく先にイギリスで注目を浴びる。

そして、50年前にあの日本初のロック名盤「黒船」を、ビートルズやピンクフロイドを手掛けたクリス・トーマスを日本に呼び制作した。

この辺りのクリス氏が日本のスタジオで何したか的な話はかなり面白かった!!

イギリスのテレビ番組で行われたライブシーンも音色も含めとても綺麗に仕上がっていて感激。

この時のドラマーが高橋幸宏だった。

その高橋氏が、相原監督の前作「音響ハウス Melody-Go-Round」に出演した際、監督に「もっと加藤和彦が評価されるべきだと思うんです、今なら僕も色々話せると思う…」と言って、この映画は生まれる事になった。

だが、高橋氏はこの映画に携わることなく他界。

言ってみればこの映画は高橋幸宏の遺言とも言えるだろう。

 

映画は、加藤氏の音楽面はもちろん、ファッション、食、女性、その生きざまを許される範囲で描いていた。

改めて、加藤和彦という未来先取り感覚に秀でたアーティストの面白さを伝えてくれる。

最後は、教科書にも載る「あの素晴らしい愛をもう一度」を、坂本美雨、石川紅奈、高野寛、高田漣、きたやまおさむ、坂崎幸之助、他、加藤氏本人の歌声もAIを使い時空を超えてリメイクし、この名曲を次世代に残したい=加藤和彦の存在を残すためのバトンとなって終わる。

 

全国順次ロードショーらしいので、今月~来月に公開される映画館もあるようだ。

ご興味のある方はご覧ください。