米国では、乳がんに関する論文は、多く発表されています。一般の人の目につくような、乳がん撲滅サイトに載っています。
その中で、参考になりそうなものを書きます。対象の人数も多く、最近2010年のデータです。
 
女性が、乳がんであると初回に診断された後の乳がんの経過と、予後に関連する因子について調べました。
1996~2006年に、初回に、非浸潤性乳管がん(DCIS)、あるいは、I,II度の浸潤性乳がんと診断された17,286人の女性を、最高5年間、乳がんの経過を追いました。
 
ほぼ4%の人に、新たな乳がんの発症があり、その内訳は、再発者314人と、2回目の新たな別のタイプの乳がんの344人でした。 2回目のイベントが起きなかった女性の特徴は、複合的なホルモン療法をした人、80歳以上の女性でした。
 
一方、再発や新発症が起きやすい因子との関連をみました。初回の乳がんがDCISまたはステージIIBであること、エストロゲン/黄体ホルモン・レセプター受容体陰性であること、女性が50歳以下、 乳がんの家族歴がある、乳房が大きく充実している女性でした。これらの因子があると、再発イベントが多く、さらに、手術のみで放射線治療をしなかった女性で、再イベントが高くなりました。
 
通常の定期的なスクリーン検査では、再発乳がんの37.6%、2回目の新たな乳がんの36.3%が、発見できませんでした。 PMID20700648  Breast Cancer Res Treat. 2010 ;124(3):863-73.
昨日、女性ホルモンと呼吸器を書きました。
女性ホルモンは、体中のすべての細胞で機能していますが、肺では抗体産生など炎症を起こす一方、炎症を抑える方向にも働く多機能物質です。又、肺の細胞の増殖にも深くかかわっていますが、増殖作用が行き過ぎないように、他の物質とバランスをとりあっています。こうした複雑な肺を機能させている物質のひとつでも異常がおきると、私たちは病気になってしまいます。
 
女性の肺の病気で有名な、リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis、LAM)という病気があります。本日は、この話しをします。
 
この病気はめずらしい病気です。日本人では、100万人に1.2-2.3人です。平均発症年齢は、30歳です。しかし、この病気が医学界で注目されている理由は、患者のほとんどが女性であることです。子宮筋腫に似たような病態で、それが肺でおきてしまうわけで、女性の病気の原因を考えるのに、多くの示唆を与えてくれます。女性ホルモンの多い月経のある若い女性を悩ませます。増殖因子としてのエストロゲンが、細胞を増殖させてしまいます。
 
リンパ脈管筋腫症は、肺でLAM細胞とよばれる腫瘍細胞が増える病気です。この細胞は、腫瘍抑制遺伝子TSC1,TSC2に遺伝子異常を持ちます。LAM細胞の形は、平滑筋細胞様です(平滑筋とは、内臓を動かす筋肉です)。肺に多胞性(袋状のものが多数できる)の構造物ができます。
 
この病気は、どのような経過で発見されるかで、予後や経過が変わってきます。一番、予後が悪いのは、呼吸困難で発見される場合です。若い女性では、呼吸が苦しいとの訴えは、ほとんどメンタルなものが多く、頭の中で、息が苦しい気がすると感じていることが多いです。しかし、この病気は、「苦しい感じ」ではなく、本当に呼吸がくるしくなります。
 
すでに、正常の呼吸ができる肺胞構造がこわれた事を示します。酸素と二酸化炭素の交換ができない拡散障害という状態です。さらに閉塞性障害という喘息と似た状態も起きてきます。血中酸素をはかると低下しています。動くとさらに、苦しくなります。
 
一方、リンパ脈管筋腫症LAMが、呼吸困難で発見される以外に、検診などの肺のレントゲン、CT検査で多胞性の構造物が偶然みつかり、LAMが診断されることもあります。この場合の方が、病気は軽いことが多く、進行もゆるやかです。
 
リンパ脈管筋腫症では、胸水やリンパ液が胸腔内にたまったりします。気胸という肺に空気がもれる状態になることもあります。この病気が疑われれば、胸腔鏡下あるいは経気管支鏡下で肺生検(肺の組織を針でとって調べること)をします。
 
治療は、エストロゲンを抑えることです。そのために、プロゲステロン(黄体ホルモン)による拮抗作用を利用したり、閉経状態を人工的に作り出す、GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)を用いた療法が試みられてきました。近年は、さらに遺伝子を標的とする治療にシフトしてきており、腫瘍性に増殖するTSC1,TSC2遺伝子をおさえるシロリムスで成績があがっています。
 
日本のリンパ脈管筋腫症の予後は、1995年ごろは、5年生存率70%、10年40%位でしたが、最近は、5年生存率90%、10年76%位になっています。しかし、重症例では、呼吸困難の進行が早いため、10年後には、半数の女性しか生存していないのです。
 
女性ホルモンのいろいろな機能を書いてきました。本日は、女性の初潮の発来時期と呼吸器症状との関係です。
 
女性ホルモンが、肺機能に及ぼす影響に関しては、まだ、十分には解明されていません。喘息のある女性が、妊娠した場合、妊娠が喘息に及ぼす影響に関しては、データは一定していません。妊娠中に大量に増えるプロゲステロンは、妊婦の気管支を拡張させると言われていて、胎児に酸素を供給させるために役だっている可能性があります。しかし、女性ホルモンが呼吸器に及ぼす影響は、個人差が大きい(ホルモン感受性に個人差が大きい)ものと思われます。
 
しかし、初潮の発来時期と呼吸器に関しては、ある程度、データは出ているようです。早熟で早期に女性ホルモンサイクルの始まる女性では、呼吸器への影響は望ましいものではないようです。今回の論文では、10歳以下で初潮をみた女性と、平均的な初潮の発来である13歳前後の女性をくらべて、両者の間の肺機能の違いや喘息を比べています。
 
初潮が来て、女性ホルモンが増加すると、女児の身長の伸びや、体の発育が止まります、一方、男児では、思春期以後も身長が伸び続け、特に呼吸器は20歳過ぎまで発育を続けます。その結果、男性の強くたくましい体が作られ、この時期に、小児期からの喘息の影響は消失しやすいとされています。
 
男児は、年少時期に喘息が多いですが、改善します。思春期以後は女性に喘息が多く、かつ難治になりやしぃです。先進国ほど、この男女差が目立ちます。女性ホルモンは、呼吸器にはあまり保護的に働いていないようです。女性ホルモンは、アレルギーなどの抗原感作を増加させます。膠原病の代表であるSLEでは、閉経すると、疾患活動性が低下します。今回は、こうした初潮と呼吸器の関係に関する論文を紹介します。Am J Respir Crit Care Med. 2011 ;183:8-14.

要約
初潮が早期に始まる人では、喘息、心血管疾患、糖尿病、乳がんが増えることが分かりました。

方法: ヨーロッパのCommunity Respiratory Health Survey IIと呼ばれる多施設参加の女性の健康に関する研究です。21の医療施設において、27-57歳の女性3,354人を対象に、1998-2002年にアンケート調査をして、生育歴を調べました。初潮の発来が 10歳以下は、全体の3.4%、12-13歳は51%、14歳20%、15歳以上12.5%でした。初潮時期の違いにより、両親の喘息の有無に、有意差はありませんでした。
 
初潮が10歳以下であった人では、3人以上の子どもを持つ人が23%と多かったです。また、10歳以下の初潮発来者には、肥満が多く、BMI25以上が60%でした。一方、12-13歳の初潮発来者では、BMI25以上は40%前後でした。対象女性のうち、肺機能測定をしたのは2,873人、気管支過敏症の測定をしたのは2,136人、そして、gE測定をしたのは、2,743人でした。二項回帰分析は、年齢、高さ、肥満指数、教育、喫煙、家族のサイズなどで調整しました。
 
結果:初潮が早期に始まった人では、喘息が多くなり、肺機能は低下し、1秒率FEV(1)や、強制肺活量FVCは低値でした。13歳に初潮が来た女性と比較して、10歳以下で初潮を経験した女性は、FEV(1)が113ml、低値となりFVCでは、126ml低値でした(肺機能が悪い)。早期初潮の女性で、喘息は発症が多いのみでなく、症状自体も多くなっていました。(オッズ比、1.80)、高い気管支過敏症(オッズ比、2.79;)、そして、喘息の症状得点が高くなっていました。喘息以外にも、抗原感作や他のアレルギー疾患の罹患率が、増加しました。PMID: 20732985
マイクロRNAの紹介が続きます。マイクロRNAは、メッセンジャーRNAに結合して、メッセンジャーRNAの働きを止める短いRNA物質です。がんと神経系の病気について、書きました。今回は、肺線維症(IPF)という病気における、マイクロRNAを紹介します。病気が起きてくるには、それなりの理由があります。なんらかの理由により、生体の調節が狂ってしまうのです。
 
肺線維症(IPF)は、肺の空気袋である肺胞の壁やその周囲が厚くなり、肺が固くなる病気です。(肺胞は、酸素と二酸化炭素の交換をする、いわゆる呼吸をおこなうところです)。細胞間物資が増加すると、肺胞という薄い上皮細胞で囲まれている部分での酸素交換ができなくなります。この病気にも、マイクロRNAの失調が見いだされました。

なぜ、肺が固くなっていくのかと言いますと、本来、上皮細胞となるはずの細胞が、別の種類である間質系の細胞に変化してしまうからです。その結果、肺胞から酸素を体内にとりこめなくなり、血中酸素が低下してしまします。次に何が起きるかと言うと、個体の死です。つまり、致死的な病気なんです。治療法は確立しておらず、現代の難病です。

今回の論文は、IPFにおけるマイクロRNAの役割を調べたものです。トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)は、線維化の方向へ働く主要な物質です。TGF-βの本来の役割は、傷をうけた体を修復するために働く物質です。リモデリングと呼ばれる、体の作り直しです。病気にするための物質ではないのですが、調整が狂うと、この物質が増加して暴走します。
 
肺線維症は、めずらしい病気ですが、日常的に喘息などでも、このTGF-βが働き過ぎる人では、喘息は重くなりがちです。又、カビなどを吸いこんで起きる肺炎は、間質性肺炎とよばれ、このTGF-βが増加しています。SMADは、TGF-βを調節する転写因子で、多数の種類があり、TGF-β蛋白合成を進めたり、抑えたりします。生体は、TGF-βが適切に維持されるように、調節されています。つまり、生体が傷を受けた時に、傷の部分を被いかぶせて、うまく治るように働いているのです。let-7dは、肺で働く、マイクロRNAの1種です。
 
今回、紹介する論文です。
Am J Respir Crit Care Med. 2010 Jul 15;182(2):220-9. 

要約
10個の正常肺組織と、10個のIPF組織からとりだしたRNAについて調べました。let-7dのプロモーターに、SMAD3が結合するのを確かめました。let-7dを含む18個のマイクロRNAは、IPFで減少していました。 トランスフォーミング成長因子(TGF-β)が増加すると、let-7dが低下しました。SMAD3は、let-7dのプロモーターに結合して、let-7dを低下させました。

let-7dを含むマイクロRNAが低下すると、細胞間蛋白の(N-カドヘリン-2、ビメンチン、アルファ-平滑筋アクチンACTA2、HMGA2(線維化サイトカイン)、SFTPC(肺に関連する界面活性剤タンパク質C)が増加しました。これは、肺胞上皮細胞系から間質系の細胞へと、細胞が変化する事を示すものである。これらの変化に伴い、肺機能が低下した。肺線維症において、マイクロRNAに属するlet-7dが減り、上皮細胞の消失と変質が起きていました。
肺線維症の発症には、let-7dのダウンレギュレーションが重要と考えられました。PMID: 20395557
マイクロRNAは、がん細胞の発育を止める働きをするという話をしました。マイクロRNAとは、メッセンジャーRNAに結合して、メッセンジャーRNAの働きを止める短いRNA物質です。つまり、メッセンジャーRNAに働き(相補的に結合する)、アミノ酸合成ができなくする遺伝子抑制です。がん細胞にとっては、増殖のための蛋白質が確保できなくなるため、不利な現象ですが、がんをもつ人間の立場になると、がん細胞が育たなくなるのですから、有利です。マイクロRNAの働き如何で、がん患者の生存率が上昇するわけです。
 
実は、マイクロRNAは、がん細胞に限らず、体の細胞のあらゆるところで働いています。遺伝子発現をとめるのが、主たる作用ですが、細胞が増殖し、機能する時に調節する物質で、生命現象には必須の物質です。
当初、短いRNA構造物が、遺伝子発現にかかわることなどは、人は、想像しませんでした。
 
しかし、近年、マイクロRNAの研究分野は、どんどん広がってきており、2011年のネーチャー1月号にも、二編のマイクロRNAの論文が載っています。ひとつは、心筋梗塞に関する論文で、もうひとつは、脳炎に関する論文です。
 
脳炎に関する論文は、実験的に、マウスに脳脊髄炎をおこす研究で、目的は、人の病気である多発性硬化症を研究するためです。
 
脳にはニューロンと呼ばれる神経細胞と、それを守るグリア細胞が存在します。グリア細胞の一部は、神経細胞ニューロンとは異なり、血液系の白血球に由来します。血液細胞のマクロファージは、肺や、腸管など、どこにでも仲間がいます。マクロファージの細胞群は、脳内では、病原体や異物処理に働いています。
 
神経難病である多発性硬化症では、脳内活性化T細胞が増加し、マイクログリアが活性化しています。脳の王様である脳細胞が死んでしまう病気ですが、動物モデルから、そうした自己細胞の破壊がなぜ、おきてしまうのかを研究しているのです。Nature medicine2011;17:64
 
本来、脳内の活性化マイクログリア細胞は、脳内の病原物質を排除する時に活躍するためにあるのです。しかし、多発性硬化症という脳脊髄の病気は、活性化マイクログリア細胞により、神経細胞のニューロンが消えてしまいます。脱髄という病的変化が起きる結果、神経細胞は消えていきます。神経細胞とその神経線維が無くなれば、もはや、頭からの指令が、体に伝わららなくなります。多発性硬化症と言う病気が知りたい方は、ウキペディァです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9A%E7%99%BA%E6%80%A7%E7%A1%AC%E5%8C%96%E7%97%87
 
 
正常の脳や脊髄では、マイクログリア細胞がおとなしくしている状態が、脳が健康状態にあることを示し、細胞内では、マイクロRNA-124(miRNA-124)が、増加しています。正常な脳のマイクログリア細胞では、マイクロRNAの働きは高まっています。脳脊髄炎を発症しているピーク時には、マイクロRNAが減少しています。活性化したマイクログリア細胞は、MHCクラスIIや、CD45と呼ばれるアンテナ蛋白をたくさん細胞表面に表出しています。こうしたアンテナが多いと、T細胞などの炎症細胞同士が交流でき、炎症を拡大することができるのです。一方、脳では、マイクログリア124の十分量が細胞内に存在していると、転写因子の働きがおさえられ、遺伝子転写がすすみません。
 
マクロファージは、血液中の単球(白血球の1種)に由来して分化した細胞ですが、体内に異物を感知した時、活性化マクロファージとなります。そうした活性化には、C/EBP-αという主要な転写因子が働き、遺伝子活性化がおきます。こうして炎症に向かって突き進む時、マイクロRNA-124は、それを抑制しており、マクロファージの分化に働くPU.1(転写因子)の働きを抑えます。
 
マイクロRNAによるタガがはずれてしまうと、PU.1(転写因子)は、単球の遺伝子に働いて、d45、CD11b、F4/80、MHCクラスIICD86などの表面マーカーを増加させ、その結果、マクロファージは武装化(活性化)します。戦うための勢いを得たマクロファージは、異物を食らいこむ能力が高まり、異物処理役として活躍します。
 
マイクロRNA-124は、脳に存在するマイクログリアの過剰な活性化を抑え込んでいます。正常時は、脳内異物は存在せず、脳細胞のニューロンを死においやる必要はないのですが、何か脳内のバランスが壊れると、タガが外れた武装化マイクログリアが増加してきて、多発性硬化症が発症すると思われています。
 
今回の研究では、マイクロRNAが、多発性硬化症などのような自己免疫を抑え込めることが証明できました、今後は、治療手段として、利用の展望を広げたいと、著者は書いています。まだ、マウスの実験の結果のようですが・・・。
 
 学とみ子著の「女性ホルモンと言う名の神話」が発売中です。http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-10239-9.jsp
 
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人が困難に直面した時、人はどう、立ち直るのでしょうか?この小説の主人公の栄子は、そうしいた状況を想定しながら、次のように言っています。
社会的地位や、知名度などでは、人は評価できない。不幸や、重い病気を得た時に、それにどう立ち向かえるかで、その人の評価がきまるのではないか?と。

がんや難病など、予後の悪い病気と診断された場合、すみやかに立ち直れるかで、人の資質が試されるであろうと、栄子は考えています。がんや難病ではなくとも、慢性の病気や、診断の付かない症状に向き合う勇気も、しかりです。健康は、なにより大事と彼女は、考えていました。
 
しかし、そんな栄子は、40歳代半ばで、解決できない不快な身体症状で悩み始めます。そして、症状を解決しなければと思うほど、症状がつきまといます。さらに、大変な病気ではないか、これ以上悪くしてはならぬとの不安が募ります。
 
女性は、しばしば、体の症状が気になってしかたなくなる時期があります。代表的なものに、のどがつまる、咳がでる、胃の調子が悪い、頭痛がする、お腹が痛い、手がしびれる、胸がどきどきする、息が苦しい、めまいや耳鳴りがするなどは、女性に良く見られます。不眠や、やる気がなくなるなどは、女性の不安な心が背景にあります。 
この小説には、栄子以外にも、心の病気が、体の症状にすりかえられている女性たちが登場します。
化学物質に過敏と感じている主婦が登場しますが、日常的にがまんの人生を送っています。子どもができないことなどで悩む人もいます。選択肢が少ない、抑圧された人生を長く過ごすと、女性の心が痛んでくる様子が、小説に描かれています。

主人公の栄子は、独身でまじめに仕事をこなしてきた人生です。仕事にのめりこんだ若い日に充実感はあったものの、そうした時は過ぎてしまいました。さらに、栄子は、女性として悲しい体験をし、そしてそれを忘れようと努めました。毎日を、空しいと感じるように生きてはならぬと願い、展望はなくても、気を取り直してがんばりたいと、自分自身へプレッシャーをかけてきました。それらが、栄子の不安定で不安な心をつくっていきました。そして、体の不調として表にでてきました。しかし、最初、栄子さんは、そうした心と体の因果関係に気付きませんでした。病気の恐れは、さらなる不安を呼び、体の異変は進行していきました。
 
今は、健康不安をあおる情報や広告はあふれています。女性ホルモンが低下すると、女性は病気になるというのも、そうした不安をあおるものです。若さを維持することが、女性が求めるものとされています。

肝炎のところで書きましたように、女性ホルモンは、女性の炎症を抑える効果があります。しかし、そうした効果が拡大解釈されて、女性の健康すべてを守る物質としての神話が生まれます。実際の女性ホルモンは、女性の年齢やホルモン量によって、体への影響は多彩に変わるものです。そして、必ずしも、女性の健康を庇護する面ばかりではありません。

医師は、女性ホルモンの良い作用を強調しますが、栄子は、もっと、もっと、女性ホルモンと体の関係が知りたいのです。しかし、医師は患者がそこまで求めている事に気付いてくれません。栄子と医師の溝が深まります。

しかし、幸いなことに、栄子は、複数の診療科や、別の医師たちと触れ合うことができます。医師との話し合いの中から、栄子自身の気持ちが整理され、栄子自身で判断できるようになっていきます。
そして、栄子は、医師ごとに女性ホルモンの位置づけや考え方が異なることを知るのです。

つまり、何かに頼り、他力本願になっている間は、結局、人は満足も解決もできません。そこから、一歩前に出て、その人自身で考え、判断した時に、何らかの達成感を感じたり、体の不安が軽減していきます。
 
女性は、いくつになっても、年齢を増すことに傷つきます。そうした社会環境に対抗するのは難しいです。しかし、社会の価値観は変わって行きます。女性にとっても、年齢を増すことが評価される社会になりつつあるように思います。
マイクロRNAの配列は、相補的な配列を含む標的メッセンジャーRNA(mRNA)に作用して、mRNAからアミノ酸合成(翻訳と呼ぶ)を抑制すると考えられています。マイクロRNAは、1993年、原子動物の線虫や、植物のシロイヌナズナにおいて、遺伝子調節の仕組みとして働くことが発見され、遺伝子発現の抑制にかかわっていることがわかりました。マイクロRNAの基礎知識を知りたい方は、ウキペディアを参照ください。http://ja.wikipedia.org/wiki/MiRNA
 
マイクロRNAがなぜ、臨床医学で大事になってきたかですが、マイクロRNAが、がん細胞の増殖にかかわっていることがわかってきたからです。つまり、人の遺伝子情報から、ある人のマイクロRNAの抑制作用が機能しやすい体質かどうか、すなわち、がんが発症した時に、予後を評価できるツールとして使えるかどうかが話題になっているからです。
 
今回は、肺の非小細胞がんについての、マイクロRNAのお話です。マイクロRNAの働き次第で、がんが増殖しやすい?手術後の予後が良いか?に影響を与えるようです。
 
マイクロRNAは、一連の塩基配列部分から、類似した多種の前駆体マイクロRNAが生じてきます。1種類のマイクロRNAは、何十、何百か所のメッセンジャーRNAに結合しますので、メッセンジャーRNAの転写、蛋白合成に多大に影響を与えるものと思われます。
 
塩基配列の違いにより、前駆体マイクロRNAの働きの効率が異なってきます。うまく、機能するマイクロRNA型であれば、メッセンジャーRNAへの抑制作用により、蛋白合成が進まず、がん細胞の異常な増殖活動を止める事ができます。従って、マイクロRNA塩基変異は、生体の細胞への影響は大きいものです。マイクロRNAによる細胞抑制が、しっかり、働かない人では、がん細胞が増殖しやすく、予後が悪くなるわけです。

中国のがん患者における遺伝子解析結果が、2011年、リリースされました。Am J Respir Crit Care Med. 2011 Mar 1;183(5):641-8. 以下が論文です。
 
マイクロRNAは、がん抑制の大事な遺伝子の働きのひとつとして、予後評価に使えることが期待されています。マイクロRNA(miRNA)の塩基配列に変異のある人では、非小細胞肺がん(NSCLC)の生存率が向上することを以前に報告しました。
 
今回、中国の非小細胞肺がんにおいて、マイクロRNAの塩基配列が、非小細胞肺がんNSCLC患者の予後と関連するかを調べました。中国で発症した923人の非小細胞肺がん患者の遺伝子を調べ、マイクロRNAの一連の塩基配列上に85個の遺伝子多型がみつかりました。 
 
RNA配列の特定部位(miR-30c-1 rs928508)の塩基に変異がある非小細胞肺がんの患者は、がん生存率が向上しました。AA遺伝子型にくらべ、AG/GG遺伝子の型のがん患者では、生存率が向上し、このマイクロRNA遺伝子型は、がんの進展を抑える効果がありました。特に、手術などで治療可能な初期(ステージI/II)がん患者において、rs928508多型AG/GGタイプの人は、死亡率が半分に減り、生存率が良いことがわかりました。
 
マイクロRNAの遺伝子型の違いは、非小細胞肺がんの5年生存率を予想するのに役立ちます。つまり、がんの臨床像に、遺伝子因子を加えて生存率を評価したところ、5年生存率(ROC曲線)が、0.658から0.741に上昇しました。
 
結論: プレマイクロRNAの両端領域に存在するマイクロRNA多型(恐らくrs928508の部位)を調べると、非小細胞肺がんの予後判定の精度が上がると思われる。 PMID: 20889907
前回、私たちは、カビの胞子を日常的に吸い込んでも、呼吸器の免疫細胞は反応しない、すなわち病気にはならないというお話をしました。
 
しかし、日常的に、カビが多い職場環境、例えば酪農従事者や農業従事者(きのこ栽培者)などは、どうなのでしょうか?呼吸器にとってはあまり良い職場環境ではないかもしれません。職業上やむを得ず、特定の物質に、長期間暴露されることがありますが、私たちの呼吸器はどのような影響をうけるでしょうか?カビや細菌由来物質、有機物質などには、人の免疫細胞は、慢性の反応を起こすようです。
 
職業病はすべての人で起こるわけでではなく、加齢や個人差の問題をどこまで考慮すのかなど難しい問題があります。一方、酪農家の子どもは、乳児期に納屋に出入りすることで、アレルギー疾患を減少させる効果があります。カビや細菌由来物質は、乳期の防御免疫を発達させるのです。乳児の免疫細胞は、卵や牛乳、ダニより優先的に、カビや細菌由来物質を排除しようとして、免疫が発達するからでしょう。
 
しかし、すでに免疫が成熟した成人においては、カビや細菌由来物質は、人の免疫細胞を刺激し、慢性炎症を起こすようになるようです。今回は、環境が呼吸器に与える影響について、考えてみます。

最初に結論を言うと、酪農、農業従事者では、呼吸器の慢性の症状が多いという結果でした。毎日のように咳や痰などに悩まされているのですが、それが日常的であるために、夜にめざめは増えていませんでした。人の体は、調節能力にたけているので、夜間、呼吸器のトラブルが高まり、朝の咳や痰はでるものの、夜間は睡眠がとれる状態になっていて、慢性炎症が調節されているものと思われました。しかし、こうした状態が続くことは、望ましいことではなく、結局は、呼吸器のトラブルが多い人は、仕事を早期に引退してしまうかもしれません。
 
病気の発症を調査するような疫学データでは、健康な人が対象として残りやすく、データが実際の病気の影響より良い結果となる可能性が指摘されています。いずれにしろ、マスクなどで注意して、作業をしてほしいです。

以下が論文です
干し草、わら、家畜動物への餌やりなどの作業は、呼吸器症状や肺機能にどのような影響を与えるのでしょうか? 1993-1994年に、酪農や農業従事者を募集し、追跡集団としました。医師らは、この集団の人々の呼吸器症状を、長期に追跡していきました。酪農・農業作業者に加え、事務職従事者を対照群として3群の観察グループとして、各群の呼吸器症状を比較しました。喫煙者(元喫煙を含む)酪農家28%、農業52%、対照47%でした。

肺機能は、強制肺活量(FVC、最大に吸って、最大に吐き出す検査、いわゆる肺活量),
1秒率は、
(FEV(1)と略される肺機能の測定法のひとつで、1秒間に最大吐き出せる空気の量を測り、全体の肺活量のどの程度が1秒以内に、吐き出せるかを測る。これが低下すると、気管支が狭くなっていることがわかる。ヒューヒューしたり、喘鳴が起きたりして喘息に近い病態となっている。

1993-1994年以後、死亡や転居なので、最初の集団(母集団)から若干の人で追跡ができず、2006年、呼吸器の経過を評価することのできた人数は、次のようでした。母集団の82.6%にあたる酪農家の人219人、集団の62.5%にあたる酪農でない農業労働者130人、母集団の66.4%にあたる事務職の99人でした。
 
それぞれの3群の人々に、アンケート回答、酸素測定、肺活量測定などを行い、3群の集団の人々の呼吸機能がどのように変化したかを比較しました。医師から喘息と言われた人は、酪農家7.0% 農業 3.9%、対照5.15%でした。毎朝、咳が出る人は、酪農家10.8%、 農業9.1% 対照5.1%でした。毎朝痰が出る人は、酪農家13.6% 農業13.6% 対照4.0%でした。咳で夜に起きてしまうことがあると答えた人は、酪農家11.8% 農業9.2% 対照 15.5%でした。

酪農家の人々では、コントロール(事務職)に比べて、朝の痰は、4.27倍(95%のCI 1.41-12.95)に増えており、農業従事者では、3.59倍(95%のCI 1.16-11.10)に増加していました。 家畜の餌やり作業者は、喘鳴(p = 0.01)と、朝の痰(p = 0.04)が増加していました; 干し草作業者は、喘鳴の発症する率が増加しました(p = 0.008)。対象集団の人々の喫煙、年齢、慎重、性、標高、酪農の有無を調整して、検討しました。
 
干し草を取り扱う期間が長くなると、肺機能低下がみられました。  農業労働者でも干し草、わら、動物の餌やりは、気管支症状と関係しましたが、1秒率の低下などの肺機能の低下は、家畜の世話作業と関係していました。家畜に餌やりをすると、粉末や穀類を吸い込む量が増加し、その結果、喘鳴や喘息が増えるとの推定されました。MID:21030452 Eur Respir J. 2011 Apr;37(4):767-74. 
このブログでは、時に乳がんを話題にしてきました。放射線障害でも、乳がんは問題が大きいですね。美しいスーちゃんが亡くなりました。少し、予備知識も持っておきましょう。
クイズ形式にしてみました。

Q:日本では、年間、どの位の女性が乳がんと診断されるか?A:推定5万人
Q:いつから、増加しているか?A:1975年から直線的に増加、とくに1997年より著明増加
Q:最近の年間死亡者数 A2009年11900人
Q:女性のがんで死亡の多い順は?A:大腸がん、肺がん、胃がん、膵がん, この次が乳がん
Q:乳がんを増加させる因子は?A:乳がん家族歴(特に姉妹の乳がん、BCLA遺伝子の変異)、出産、授乳、乳腺腫瘍の既往、閉経後の肥満、ホルモン補充療法、初潮が早い、
Q:マンモフラフィーによる乳がん診断率は?A:0.27%、370人に一人、多くが非浸潤性(7割)
Qマンモフラフィーで、どの位の発見してもらえるのか?がんは全部、みつけてもらえるのか?A:50歳代では、90%のがんをみつけてもらえる(1割はチェックをもれる)が、40歳代は7割位、乳腺組織の多い人は、がんでなくともチェックされる(偽陽性)。つまり、がん発見率が低下する。
Q:乳房温存療法はどの程度に行われているか?A:20年前から増え始め、2010年では、6割で実施されている。
Q乳房温存療法は、どのような場合に適応されるか?A:腫瘍の大きさが3cm以内、画像で広範な広がりはない、多発型でないとされる場合
Q:悪性化の所見とは?A:腫瘍が5cmを超える。顕微鏡的に悪性度が高い。4個以上のリンパ節転移がある。増殖が早い、腫瘍組織に血管が多い
Q:治療の選択は?乳がん細胞に発現している受容体の有無や、月経の有無により、治療が異なる。
 
エストロゲン受容体(ER)陽性の乳がんには、エストロゲンの作用を抑える治療をする。1つは、LH-RHアゴニスト製剤(脳の下垂体に作用させて、卵巣のエストロゲン産生を抑える方法)。ゾラデックス(一般名酢酸ゴセレリン)、リュープリン(一般名酢酸リュープロレリン)の皮下注射薬。 2つ目は、エストロゲン受容体(ER)をブロックする薬で、タモキシフェン(商品名ノルバデックスなど)という経口剤。閉経後は、副腎皮質から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)を、エストロゲンに変換させるアロマターゼという酵素の働きを抑える薬を使う。アロマターゼ阻害剤には、アリミデックス(一般名アナストロゾール)、フェマーラ(一般名レトロゾール)、アロマシン(一般名エキセメスタン)の経口剤。

上皮増殖因子受容体(ハー2、HER2)陽性の乳がん細胞であれば、トラスツズマブ(モノクローナル抗体)を使う。
 
ER陰性、HER2陰性には、化学療法(いわゆる抗ガン剤で、免疫抑制、脱毛などがおきる)
昨日、記事の続きです。カビが私たちの体内で生き残ろうとする姿は、ミステリー仕立てです。本日の肝炎ウイルスもそうですが、感染因子は、免疫細胞との壮絶な戦いを生き抜いています。カビは、肺内に吸い込まれたとしても、しばらくは、発芽せず増殖体にはならず、チャンスを待ちます。RodAで武装して、免疫細胞の監視から逃れています。この時点では、怪しい奴は発見できません。しかし、カビの細胞膜には、βグルカン、マンナンなどの、免疫細胞を刺激する構造物があります。免疫細胞も、カビの構造をとりこぼしなく
、みつけるように進化してきたのです。カビは、高等動物だけでなく、植物や原始的な動物にもとりつきます。原始生物は、カビと戦闘する能力を、人に与えてくれました。この免疫系をトールと呼びます。
 
吸い込まれたカビは、肺のマクロファージ(抗原提示細胞)に取り込まれます。マクロファージは、自らの細胞内の食胞といわれる構造物の中にカビを閉じ込め、蛋白分解酵素使ってカビを殺しにかかります。しかし、カビは分解を逃れて、表面蛋白構造を保ちます。
 
ここまではうまくいっても、カビが体内で増えようとする時、事件となります。カビが増殖を開始すると、表面蛋白構造の一部が露出してしまい、カビの正体がこぼれてしまいます。免疫細胞の監視の目は、カビの小さなミスをみのがさないのです。私たちの体内物質がすばやく、カビの変化を感知します。デクチンと呼ばれる物質が、カビに取り付きます。これは、カビをマーキングして、マクロファージが見つけやすくするためです。抗体などもマーキングに活躍します。つまり、監視役は、複数的に増えていくのです。