学とみ子著の「女性ホルモンと言う名の神話」が発売中です。http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-10239-9.jsp

人が困難に直面した時、人はどう、立ち直るのでしょうか?この小説の主人公の栄子は、そうしいた状況を想定しながら、次のように言っています。
社会的地位や、知名度などでは、人は評価できない。不幸や、重い病気を得た時に、それにどう立ち向かえるかで、その人の評価がきまるのではないか?と。
がんや難病など、予後の悪い病気と診断された場合、すみやかに立ち直れるかで、人の資質が試されるであろうと、栄子は考えています。がんや難病ではなくとも、慢性の病気や、診断の付かない症状に向き合う勇気も、しかりです。健康は、なにより大事と彼女は、考えていました。
しかし、そんな栄子は、40歳代半ばで、解決できない不快な身体症状で悩み始めます。そして、症状を解決しなければと思うほど、症状がつきまといます。さらに、大変な病気ではないか、これ以上悪くしてはならぬとの不安が募ります。
女性は、しばしば、体の症状が気になってしかたなくなる時期があります。代表的なものに、のどがつまる、咳がでる、胃の調子が悪い、頭痛がする、お腹が痛い、手がしびれる、胸がどきどきする、息が苦しい、めまいや耳鳴りがするなどは、女性に良く見られます。不眠や、やる気がなくなるなどは、女性の不安な心が背景にあります。
この小説には、栄子以外にも、心の病気が、体の症状にすりかえられている女性たちが登場します。
化学物質に過敏と感じている主婦が登場しますが、日常的にがまんの人生を送っています。子どもができないことなどで悩む人もいます。選択肢が少ない、抑圧された人生を長く過ごすと、女性の心が痛んでくる様子が、小説に描かれています。
化学物質に過敏と感じている主婦が登場しますが、日常的にがまんの人生を送っています。子どもができないことなどで悩む人もいます。選択肢が少ない、抑圧された人生を長く過ごすと、女性の心が痛んでくる様子が、小説に描かれています。
主人公の栄子は、独身でまじめに仕事をこなしてきた人生です。仕事にのめりこんだ若い日に充実感はあったものの、そうした時は過ぎてしまいました。さらに、栄子は、女性として悲しい体験をし、そしてそれを忘れようと努めました。毎日を、空しいと感じるように生きてはならぬと願い、展望はなくても、気を取り直してがんばりたいと、自分自身へプレッシャーをかけてきました。それらが、栄子の不安定で不安な心をつくっていきました。そして、体の不調として表にでてきました。しかし、最初、栄子さんは、そうした心と体の因果関係に気付きませんでした。病気の恐れは、さらなる不安を呼び、体の異変は進行していきました。
今は、健康不安をあおる情報や広告はあふれています。女性ホルモンが低下すると、女性は病気になるというのも、そうした不安をあおるものです。若さを維持することが、女性が求めるものとされています。
肝炎のところで書きましたように、女性ホルモンは、女性の炎症を抑える効果があります。しかし、そうした効果が拡大解釈されて、女性の健康すべてを守る物質としての神話が生まれます。実際の女性ホルモンは、女性の年齢やホルモン量によって、体への影響は多彩に変わるものです。そして、必ずしも、女性の健康を庇護する面ばかりではありません。
医師は、女性ホルモンの良い作用を強調しますが、栄子は、もっと、もっと、女性ホルモンと体の関係が知りたいのです。しかし、医師は患者がそこまで求めている事に気付いてくれません。栄子と医師の溝が深まります。
しかし、幸いなことに、栄子は、複数の診療科や、別の医師たちと触れ合うことができます。医師との話し合いの中から、栄子自身の気持ちが整理され、栄子自身で判断できるようになっていきます。
そして、栄子は、医師ごとに女性ホルモンの位置づけや考え方が異なることを知るのです。
つまり、何かに頼り、他力本願になっている間は、結局、人は満足も解決もできません。そこから、一歩前に出て、その人自身で考え、判断した時に、何らかの達成感を感じたり、体の不安が軽減していきます。
女性は、いくつになっても、年齢を増すことに傷つきます。そうした社会環境に対抗するのは難しいです。しかし、社会の価値観は変わって行きます。女性にとっても、年齢を増すことが評価される社会になりつつあるように思います。