今年早々に、肝炎の話をしました(2011年1月17日)が、女性の肝炎で、気になる論文がありましたので、紹介します。C型肝炎はなぜ、難治なのかを、考えている男性にも読んでほしいです。
 
健康診断で必ずチェックされる肝臓の数値に、AST(GOT)、ALT(GPT)、γGTPがあります。これらの数値が上昇している場合は、慢性肝炎の疑いがもたれ、精査を勧められます。特にC型肝炎ウイルスは、慢性化、肝硬変(肝線維化)、肝がんのリスクが高まるため、公費で治療が進められています。
 
急性C型肝炎を得た85%の人で、慢性化がおこります。人の免疫細胞の攻撃を逃れてC型肝炎ウイルスは生き残ります。免疫細胞はなんとかウイルスを排除しようと、果てのない戦い(炎症)を続けます。慢性感染を続けられるウイルスは、究極的に進化した生物体と言えます。免疫細胞に排除されず、生き残るからです。
 
体の中で、慢性感染が遷延すると、行きつく先は、がん化か、線維化(固くなり働けなくなる)です。この悪循環を防ぐ方法が、ペグインターフェロンとリバビリンの標準治療です。昔、慢性肝炎が多った証拠に、漢方薬には、慢性肝炎をターゲットにした(と思われる薬剤)が多数あります。当時は、慢性ウイルス感染の概念がなく、試行錯誤の治療でした。治療効果が低くとも、先がみえなくても、医療者は病気にとりくまなくてはならないのは、今も昔も同じです。当時の漢方療法には、さまざまな学派や流派がしのぎを削ったでしょう(本題からずれました)。

現在では、ペグインターフェロンとリバビリンが標準治療では、2-3型ウイルスでは、有効率が高く(ウイルスを無くせる)、1-4型ウイルスに感染では、薬の効きにくいのです。治療効果があがるのは、前者は4-5割、後者は8割です。
 
女性の肝臓の病気には、男性とは異なる特徴があります。元々、女性は感染症に抵抗性で、細菌、ウイルスなど病原体を殺す能力は高いです。C型肝炎ウイルスも同様に、男性の方がC型肝炎ウイルスによる肝炎の進行が早く、予後が悪い(肝硬変、肝がんで死にやすい)のです。女性では、元々インターフェロン産生能が良いので、それも影響するのかもしれません。しかし、女性だけで治療効果を見ると、若い女性では、治療効果が高く、一方、閉経後は治療効果が低下します。その理由は、いろいろ考察できるのですが、女性ホルモンの肝臓への保護的役割が指摘されています。今回、紹介する論文は、女性の慢性C型肝炎の治療効果と、女性ホルモンとの関連についての研究です。

女性は、閉経期になると、女性ホルモンが一気に低下します。肝臓の病気においては、女性ホルモンは、炎症を抑える方向で働いているようで、この働きが、閉経を契機に低下してしまします。この論文では、閉経後5年以内の女性で、血清インターロイキン-6、肝臓TNF-αが上昇し、この時期は、治療効果が低下することを指摘しました。女性ホルモンが低下すると、肝臓の線維化も進行する可能性が考えられます。炎症物質は、本来、ウイルス駆除に働くと考えられます。しかし、炎症が強いと肝細胞は壊れていきます。閉経から数年経つと、炎症性サイトカイン(インターロイキン-6、TNF-α)などは、低下していきます。しかし、いづれにしろ、閉経まもない女性のC型肝炎の治療成績が悪いようです。このような現象は、男性ではみられません。
 
以下が論文です。
肝臓の線維化は、若年女性(生殖可能年齢)にくらべると、更年期の女性では、進行が早くなります。 慢性C型肝炎の女性患者において、治療によるウイルス学的著効(SVR)との関連を調査しました。18才以上で治療歴のない肝炎患者について、肝炎の程度を評価しました。そのうちの女性について、年齢が更年期の前か後か?、ホルモン補充療法の有無、インターロイキン-6、肝臓腫瘍壊死因子(TNF)-αの血清濃度を調べました。
 
442人の女性から、データを得ることができました。治療によりウイルス学的著効のあった人たちは、若年女性では67.5%であったのに対し、閉経後の女性は46.0%と閉経後の女性で治療効果が低下しました(有意差あり P .0001)。男性全体のウイルス学的著効は51.1%でした。
 
多変量回帰分析をすると、治療が著効しにくい女性側の因子としては、閉経してまもないこと(オッズ比[OR]、8倍)、γ-グルタミルトランスフェラーゼの高値(オッズ2.165倍)、C型肝炎ウイルス遺伝子型が1または4型であること(オッズ3.861倍)でした。 閉経早期の女性では、遺伝子型1ウイルス の場合に、治療効果が低下しました(OR、3.933倍)。
 
閉経後の女性では、若年女性に比べて、肝臓の炎症が強く、線維症、脂肪肝、血清インターロイキン-6、肝臓TNF-α(P = .007)の数値が高い状態でした。
 
結論:更年期の女性で、C型慢性肝炎は治療効果が低く、肝臓の炎症が続きやすい。理由は、女性ホルモンによる炎症保護作用のためかもしれない。Gastroenterology. 2011 ;140(3):818-29
カビ(真菌)は、日常的に私たちの周りにあふれています。水虫も、癜風(皮膚に限局性の細かい鱗屑が付着する淡褐色斑紅班ができる病気)も、カビによる病気です。これらの皮膚の真菌感染は、表層感染といい、表皮の限局された場所でしか、カビは増殖できません。なぜなら、カビは、これ以上中には、入れないからです。
 
例外はあります。エイズのような免疫不全の人では、血液にカビが入り、全身感染を許してしまうのです。しかし、普通は、血液へは病原体は、入れません。もし、入ると、白血球の逆鱗にふれることになります。一方、皮膚の表面は、病原体がいても、構わないのです。少なくとも、免疫細胞は、そのように判断しています。
 
真菌は、しばしば、民間薬やサプリとして使われます。きのこのエキスなどが免疫を高めると宣伝されています。きのこも真菌ですから、免疫細胞(白血球)は、真菌であるきのこ類を危険と判断しますので、排除の免疫反応を起こすのでしょう。それが、ご都合主義的に解釈されると、免疫が高まり健康に良いとなります。免疫細胞の立場になれば、きのこ成分は排除したい物質なので、反応が起きることになります。免疫は、高まりすぎると、人は病気になります。
 
真菌(カビ)は、人にさまざまな病気を起こします。真菌による間質性肺炎、鳥飼病、アレルギー性のアスペルギローシス、カンジタ性気管支喘息などです。しかし、こうした病気は、患者側のなんらかの素因が関係し、だれもが発症するわけではありません。侵入物に対し、異常に反応してしまうという、人側の因子が大きいのです。
 
病気は、外からの原因で起こるものと、内なる異常(素因)からおきてくるものと、大きく2種類があります。現代の難病は、後者の事が多いです。しばしば、両者の鑑別が難しいです。
 
日常的に、誰でも、カビを吸い込みます。大気の1立方メートルには、10の9乗の量のカビが存在し、種類も100を超えると言います。クラドスポリウム、アスペルギルス、アルテルナリア、ペニシリウムなどが代表とされます。時に、私たちは、大掃除などで大量に浴びてしまうこともあるでしょう。しかし、多くの人では、特別の病気にはなりません。その理由を不思議に思う方はいるでしょうか?第一のミステリーです。
 
ミステリーの答えを考えてみましょう。
この疑問にこたえるべく、ネーチャー誌2009年8月27日号、460巻に、真菌と免疫細胞のせめぎあいに関する小論文がありました。
 
この論文によると、吸い込まれた真菌(アスペルギルスなど)に対し、私たちの免疫細胞は、あえて無視しているとのことでした。日常的に、肺に入ってくる真菌に対して、異物をチェックする役割の白血球(抗原提示細胞)は、免疫反応を低下させていることが証明されました。もし、毎回、そうしたカビに、白血球が反応してしまうと、すぐ肺や気管支はだめになってしまうからです。
 
ミステリーは、簡単に解かれてしまったかと思われるかもしれません。しかし、次のミステリーです。免疫反応を低下させたままでは、私たちは体が、カビだらけになっていまいます。
 
第2の疑問です。
ネーチャー誌の実験は、カビ(アスペルギルスフルミガーツス、アスプと略)を用いて調べました。人の抗原提示細胞(白血球)や、マウスのリンパ球などを取りだしてきて、カビと会わせてみたのです。カビのアスプと一緒に培養したり、マウスにカビのアスプを感染させて、白血球の動きを追ってみました。すると天然型のアスプでは、白血球は増加しませんでした。
 
しかし、カビ(アスプ)の菌糸を変質させて、外側の疎水性蛋白をとりさってしまうと、今度は、白血球は反応しました。白血球は、増殖したり、サイトカインを増加して、アスプに対して攻撃性を増しました。白血球は、インターフェロンを増やしました。カビを排除するために、白血球は、本気で臨戦態勢に入りました。この違いの決め手となるのは、カビの表層部にある疎水性たんぱく質RodAの有無でした。
 
つまり、免疫細胞(白血球)は、この蛋白をかぶっている状態のカビは安全と判断し(いつもと同じ奴だ!)、この蛋白が欠損したカビは、危険(いつもと違う!)と判断しているのです。RodA蛋白は、カビの細胞膜の多糖類にしっかりと結合しています。この結合をはがしてRodA蛋白のないカビ構造になると、違う表面構造となります。だから、白血球から怪しまれてしまうのです。生体の免疫細胞は、変装したカビを、いつもと違う危険物が進入してきたと判断しました。
 
それでは、RodA蛋白を持つアスプ(カビ)であれば、人の体内で、どんどん増えてしまう危険はないのでしょうか?恐らく、免疫細胞は、アスプ(カビ)を見逃すことをやめ、急きょ、臨戦態勢となるのだと思います。このミステリーの続きは、以後に・・・
このブログでは、時々、ナーチャーの論文を紹介しています。チェルノブイリと、福島の事故についての記事で、日本語訳がありましたので紹介します。
http://www.natureasia.com/japan/nature/special/nature_news_032811.php
 
ネーチャー社では、世界中からの論文を掲載していますが、質の高い論文を出せる施設は限られています。どこの研究施設からの論文が採用されたかの数を元に、ネーチャー社では、研究施設ランキングを発表しています。
 
一方、高度高齢化を突き進んでいる日本では、国の元気度も低下してきています。そこに、今回の災害も加わり、多くの人が日本の将来に、不透明性と不安をかかえています。医療制度は迷走しており、地域医療も崩壊が進んでいます。要となる医療現場に、医師やナースが確保できません。金融、医療の分野をコントロールしてきた役人たちも自信を失ってきています。そんな混沌とした現在の日本で、今後の科学技術は、どうなっているのでしょうか?
 
2010年、ネーチャー社は、従来同様に、世界の科学研究所の評価を発表しました。ネーチャー誌への掲載された論文数の数から世界の研究機関を評価し、格付けランキングの発表です。2010年のネーチャーアジア版に結果が載っています。
 
今回は、震災前のデータですが、1-5番にランクされたのは米国と欧州で、1番目からハーバード大学、フランス(Centre national de la Recherche Scientifique)、ドイツ(Max Planck)、スタンフォード大学、マサチューセツの工科大学とあり、6番目に東大が入っています。理研が23位、京都大学25位、Chinese Academy of Sciences(中国科学院)が32位、大阪大学33位となっています。
 
中国の躍進はめざましく、1998年はネーチャー誌への6論文が、2010年には149論文になっているとありました。中国のトップの研究機関であるChinese Academy of Sciencesは、とにかく研究者の数が多いそうです。その数にくらべ、シンガポールの研究機関は、480万人の総人口の割りには、がんばっているとの編集人からの評価がありました。それぞれの国の背景を生かして、これからもアジアの競争は続いていくでしょうが、日本はどこまで落ちてしまうのでしょうか?
 
ネーチャー誌の読者数も、この10年で、中国、韓国、台湾では飛躍的に増加していますが、10年前には断トツ、アジアでトップだった日本のネーチャー誌購読者数は、それほど増加はしていません。今後の科学技術に対し、日本の高齢化問題も影響を与えるでしょう。東大における研究の現状の記事もネーチャー誌アジア版に書かれています。東大が研究費獲得のトップにいること、海外交流も盛んで、若い頭脳がしのぎを削っていると紹介されています。東京の一等地に、大名屋敷の面影を残す三四郎池などの写真と友に、研究者や学生の写真が紹介されていました。www.natureasia.com/publishing-index
 
日本の強みは何なのでしょうか?それは、平均力が高いということではないでしょうか?特定の人のみが優秀であるのではなく、皆が競争に参加できる社会は、活気があると思います。社会全体が、研究活動に興味を持てば、研究レベルはあがります。
 
光通信の分野(Nature Photonics)は、日本は世界にトップのまま、君臨しているようで、このネーチャーアジア版のディレクターのデヴィット氏が触れています。日本のある学会で、外国の講演者が、美しい顕微鏡写真を見せながら、「これは日本の機器を使って撮影したので、個々まで鮮明です。他の機器ではここまでの解像力はない」と、日本人を喜ばせたエピソードを思い出しました。
 
日本の若年者のQOLが低下し、不安を感じやすい人が多いようです。それでも、日本は平均力の高さがあります。多くの日本人は、常識的で知的、狭い日本で、お互いに遠慮・配慮しあって暮らしています。貧富の差が少なく、そこから又、新たなエネルギーが沸いてくると期待できます。医療へのアクセスが悪くなっても、日本人は自分で考え、医療を変えると思われます。いづれにしろ、多くの人が自分の体に興味を持ち、自らの考えを発信してほしいです。
 
放射線に関連して発症するがんとして、甲状腺がんは有名ですが、自然暴露量の環境でも、甲状腺がんが生じてしまう人がいます。広島で被爆した人の中には、ほとんど問題とならない線量の人から、甲状腺がんの発症があります。前々回のブログで、はっきりした被ばく量のあった人の細胞では、遺伝子再編成という大きな染色体異常が生じやすいことを紹介しました。被ばくした放射線量の多い人では、遺伝子再編成というイベントが生じやすく、点変異はすくなかったという2008年の広島大学の研究論文をすでに紹介しました。

しかし、この遺伝子再編成というイベントは、がんに限定した遺伝子変化ではありません。Elisei Rら(Clin Endocrinol Metab. 2001 ;86(7):3211-6).は、RET/PTC遺伝子の再編成は、良性の甲状腺結節でも見られると言います。彼らのグループは、チェルノブイリで被爆したベルルーシの小児の甲状腺がんや、良性の甲状腺結節の細胞を調べています。さらに、彼らの研究では、被ばくとは無関係に発症したイタリア人の甲状腺がんの小児や、治療で放射線を受けた後に発症した甲状腺がんにおいて遺伝子の再編成を調べています。それによると、がん細胞では、55%の高頻度で、RET/PTC遺伝子の再編成が起きていたそうです。RET/PTC遺伝子の再編成は、放射線暴露の無いがんでも検出され、さらに、まだ良性の結節の時点でも、すでにこの遺伝子異常を持つ人がいるようです。
 
このような事実は、発がんに至るまでの遺伝子異常の様相は、個人差差や人種差があることを示します。細胞に遺伝子再編成という大きなイベントが起きても、その内容如何でがん発症に至りません。
 
それぞれの人種では、遺伝子背景が違いますので、世界のがんは、皆人種の遺伝子背景の違いを反映しているので、遺伝子の顔付きが違います。放射線の影響ひとつをとっても、がん発症へのい遺伝子解析はむずかしいというところでしょうか?

本日分は、同じ広島大学からの報告です。被爆後発症のがんにおいて、点変異など塩基配列の変化を調べています。発がんの初期に生じると考えられるBRAF(V600E)遺伝子の異常の頻度についての研究成果です。BRAF(V600E)遺伝子の変化は、少量の放射線を浴びた成人型の乳頭状甲状腺がんに特徴的に見られた遺伝子変化であったとしています。このタイプの遺伝子異常のあるがんは、発がんまでの年数が長い傾向(発育が遅い)でした。
 
RASとBRAF遺伝子の点変異や、RET/PTC遺伝子の再編成が起きると、細胞分裂に関係するMAPキナーゼの働きに異常が生じていきます。被爆歴のない(0mGy)17人と、被爆歴のある47人の合計64人から発症した甲状腺がんについてBRAF(V600E)遺伝子変異を評価しました。 BRAF(V600E)変異は、成人型の乳頭甲状腺がんで高頻度に見つかりました。
 
BRAF(V600E)変異のあるがんを持つ人と、変異のないがんを持つ人では、被ばく時に受けた放射線量に差がありました。線量の中央値は、BRAF(V600E)変異(+)がんは18.5 mGyであり、変異(-)がんの156.9 mGyでした。BRAF(V600E)変異(+)がんの被ばく放射線量は、有意に低値でした。さらに、がん発症までの年数を比較すると、BRAF(V600E)遺伝子変異(+)がんは29年、変異(-)がんは21年となり、変異(+)がんで、発症までの潜伏期が長い結果でした(有意差あり、P=0.014)。
 
ロジスティック回帰分析により、放射線量と潜在年数は、それぞれが独立した変数であると確認できました。以上のことから、被爆後の甲状腺細胞は、異なる複数の遺伝子異常に由来して、性質の異なるがんが発症してくると推定されました。Mol Carcinog. 2007;46(3):242-8  PMID: 17186541
現在の福島原発では、爆発などの事故は回避できているものの、放射能汚染水の海への流出は続いています。
余震も続いており、次なる重大事故の起きないことを祈るばかりです。

東京の飲料水も、一時100ベクレルを超え、突如、厚労省が、水は小児に危険であるとのおふれを出しました。これには、多くの人がびっくりました。安全と言っていたではないか?との政府への不信感が盛り上がりました。小児科学会などは、インターネットを通じて、急きょ、飲料水としてもさしつかえないとのコメントをだしました。
その言い方は、微妙な言い回しで、安全であるとは言っていませんでした。100ベクレル超えた水が安全であると保障できる人はいないのですが、専門家としてもう少し踏み込んで「与えて良い」との表現の方が、母親たちに理解しやすいです。
 
結局、この問題は、「安全とは何か?」をつきつめることになるのでしょう。微妙な判断を問う時は、専門家は方向付けをしないと、一般人は困ります。たとえ、安全基準は、人の価値観で変わっても・・・。
東京近郊に住んでいて、普段より汚染された大気環境の中で、水だけ飲まないでいても、将来どこ位の益があるのでしょうか?
 
世の中には、答えの出ない問題は、多数あるわけですが、常に問題意識を持つことが答えなのかもしれません。

昨日のテレビでも、某キャスターが、学校での放射能の安全基準がないではないかと、怒りの発言がありました。しかし、安全基準をつくれるなら、もう、できていると思います。安全基準を作るのは、極めて難しいものと思います。元々、放射線障害は、域値がない(ここからが危ないという危険域)が、設定できません。子どもの心身の発達への影響を最小限にして、最大の予防効果があがる落とし所はどこか?誰も答えを持たないと思います。
 
お母さんたちの中には、子どもを外で一切、遊ばせないとか、窓にテープでシールを貼るとする人がいるようです。少量の放射線が、人の体へ及ぼす影響は、答えがなく、放射線の健康被害は、判断のためのデータが少ないです。判断材料が少ないと、人は判断ができません。
 
発がんに関しては、予想できない運のようなものがあります。何をすると発がんしやすいかを並べることはできます。でも何をすると、がんにならないですむかを並べることは難しいです。対がん協会のだしている乳がん撲滅キャンペーンのポスターも、「検診は、乳がんになっていないことを確かめるためのもの」などを謳っていますが、これは、考え方が間違っています。こうしたものが、専門医のアドバイスを受けずに、日本中に出回ってしまうのは悲しい事です。
 
さて、このブログでは、爆心地から、1.5km離れた場所にいた被爆者における、その後の発がんなどのデータを紹介しました。1.5kmなどの数値は、恐ろしい近い数値です。そこにいた方は、ひどい外傷うけ、外傷後症候群や感染などで命を落としたと思います。しかし、重症なやけどを克服できた方はいるわけで、並はずれた生命力の強い方は生き残りました。
今回は、近距離で被爆し、放射線の直接障害を受けた人(やけどと脱毛が起きた大量被爆者)の、その後の発がんの状況です。

論文の結論は、外傷(やけど、脱毛)を受けた人で、特にその後に発がんが増えた事実はなかったということでした。チェルノブイリでも、小児の甲状腺の発がんは、爆心地よりやや離れたところで多発していました。予想とは異なり、外傷のあった人で、必ずしも、がんが増えなかった事実は、原爆を生き延びた人がとても強い人たちだったからかもしれません。
 
重症外傷のある被爆者の、その後のがん死に関する2002年の論文を紹介します。Int J Radiat Biol. 2002 Nov;78(11):1001-10
LSS研究(長崎・広島被爆者の長期的の追跡研究)からのデータです。爆心地に近く、外傷を負った人と、そうではない被爆者の、その後のがんの発症を比較した研究です。
白血病は、外傷を負った人々で発症の頻度がふえましたが、単純集計によると(他因子を考慮しない)、統計学的に白血病発症の相対危険度が上昇しました。しかし、その他の因子を加え計算し直すと、外傷があった被爆者で白血病が増えるという事実が確認できませんでした(統計学的に有意差がない)。さらに、白血病以外の固形がんやその他、良性新生物、心血管疾患、非-ガンなど)に関しても、外傷を受けた被爆者での増加は確認できませんでした。
PMID: 12456287
乳頭状甲状腺がんにおける発癌のイベント
がんは、どのように生じてくるのでしょうか?このところ、毎晩のようにブログをお送りしています。放射線を浴びると、がんのリスクが増えるのですが、それは、細胞が異常に増殖できる能力を獲得してしますからです。放射線を浴びた人の方が、染色体異常が積み重なって起きています。小児では、被ばくして5年位でがんが診断されていることから、がん細胞が増殖して大きくなり、診断される(人に見つかる)までには、その位の期間が必要なのだろうと思います。がん細胞は生き残る能力を獲得しないと、人の免疫や薬で消されてしまいます。がん細胞の増殖・転移には、どのような遺伝子変化を獲得していかなければならないか?
 
放射線障害により発症する発がんには、自然発症するがんで起きる遺伝子異常とは、異なることもわかってきました。こうしたがん細胞のいろいろな遺伝子変化は、以前の技術では調べられませんでしたが、今は、細かなところまで遺伝子検査が可能となっています。そのため、以前から保存していたがん細胞を、再度、取り出してきて、遺伝子検査を追加検査することができます。
 
人が生活のための水や電気を引くと同じように、がん細胞が体内で増殖、転移していくためには、栄養血管を増やし、増殖のための足場を確保していかなければなりません。がん細胞は、自らの増殖に有利な遺伝子をふやしますが、大きな遺伝子変化が起きないようにします。あまり、遺伝子がかわってしまうと、大事な細胞代謝の能力が失われてしまうからです。遺伝子再編成(リアレンジメント)といわれる遺伝子変化は、1塩基置換などとは異なり、大きなイベントである遺伝子変化です。すなわち、ある長さのある染色体が壊れ、一旦、ばらけた後、遺伝子が再度、かきあつめられて並べ直された(再編成)遺伝子です。したがって、大きな遺伝子の欠損・脱落が起きることになります。原爆のように、大量の放射線を浴びるような一度の大きなイベントでは、細胞が一気に破壊されますので、点変異のような小さな変化でなく、複数の遺伝子再編成が起きるようです。
 
細胞分裂を促進する活性型プロテインキナーゼ代謝は、RET、NTRK1、BRAF、RAS遺伝子が関連します。 被ばくと早期に発症する小児甲状腺がんと、成人の甲状腺がんは、遺伝子異常に違いが見られます。小児の乳頭状甲状腺癌において、主要な発がんのイベントは、RET/PTC遺伝子におきる再編成です。この再編成は、放射線被曝の有無と関係なく起きています。一方、成人発症型の乳頭状甲状腺癌においては、BRAF(V600E)遺伝子の1個の塩基が入れ替わる点変異が起きていますが、再編成は起きていません。この点変異が、成人の発がんを決定づける大事なイベントです。下部に、実際の論文を示します。
 
Cancer Res. 2008;68(17):7176-82.
今回は、被爆者50人と、被ばくのない21人を含む71人の乳頭状甲状腺癌の細胞において、RET/PTC再編成とBRAF(V600E)突然変異を調べました。 がん細胞では、RET/PTC遺伝子の再編成は、被ばくした放射線量が増加するに関連して増加していきました(P= 0.002)。一方、高い放射線量(P=0.001)に暴露された人では、RET/PTC遺伝子の再編成が先に起きており、BRAF(V600E)遺伝子の突然変異は、頻度が低下していました。 RET/PTC再編成のある発がんは、より早期に発症しました。RET/PTC再編成は、放射線に関連して生じやすく、早期の発癌に重要な役割を演ずるものと思われます。これらの調査結果は、多変量ロジスティック回帰分析によって確かめられました。
PMID: 18757433
このところ、シリーズで、放射線障害とがんに関する論文を紹介しています。この関連は、一言では言えない事が多く、複数の論文に触れると、何か見れるかもしれません。関連評価の難しさです。
原爆は、日本人にとって大変な出来事でしたが、この時の放射線障害の程度は、世界の基準値になっています。日本人のデータは、短期及び長期において、人が放射線から、どのような影響を受けのか評価の根拠となっています。
日本では、1957年に原爆被害者における法律が本格的に整備され、被爆者の長期影響に関する医学的研究が行われてきました。今回は、複数のがんが、同じ人に生じた場合のデータです。
体のどこかの臓器組織から1回目のがんが発症し、それとはまったく別の臓器(組織)から、異なるがんが発症することがあります。顕微鏡を用いた組織学的検査をすれば、別物のがんであることがわかります。例えば、乳がんと胃がんとか、がん発生源が異なるわけです。
原爆以外にも、初回のがんで放射線治療を受けた後、別のがんが発生することがあります。なんとも、やりきれない話ですが、実際には、そうした現実があります。今回は、複数がんの発症と、放射線の関係について、2008年発表された成績です。長崎大学の追跡調査で1968年から始まっています。原爆による影響を観察している集団は、女性54915人、男性36975人です。
被爆者における複数の異なるガンの発症と、その他の各種因子(爆心からの距離、被ばく年齢など)が、どのように関連するかを調べました。1968年から1999年まで、観察中の人たちから、がんと診断された人の数は7572人でした。そのうち、複数のがんの発症は511人でした。92.6%の人は、2か所のがん、 5.7%の人が3か所でした。2回目のがんは、男女共50歳以上で多く生じています。10万人当たりの換算では、複数がんは、1年につき27.6人でした。男女別では、女性242人(10万人当たり21人)、男性269人(10万人当たり38.3人 )でした。2回目のがんの臓器別では、男女共、大腸、胃、肺、直腸、が最も多く、次は、女性では乳房と皮膚、男性では前立腺、肝臓、尿路となっていました。1回目のがんから、2回目のがんまでの年数は、1年以内が、女性12.3%、男性19.4%、さらに、5年以内は、女性27.8%、男性36.9%でした。
2回目のがんは、爆心から近い距離出被ばくした人に発症が多くなり、爆心からの距離が離れると、複数がんは減少しました。2回目がんの発症は、1km以内では、10万人当たり57人、1.6-2.0kmでは26人、3km以上では24.7人でした。1.0kmにつき0.89倍となりました(95%の信頼区間、0.84-0.94)。
被ばく時に加齢していた人の方が、複数がんは減少しました。2回目のがんの発症は、年齢が1年増えると、0.91倍となりました( 95%の信頼区間、0.90-0.92)。爆心地からの距離効果は、2回目のがんで、はっきりと出ました。60年以上にわたる長期の観察で、傾向がわかってきました。Cancer Sci. 2008 Jan;99(1):87-92. PMID: 17979995
長崎・広島で被爆した人における、乳がんの発症率は、1年間につき、10万人当たり54人前後と計算されています。爆心から遠い程、乳がんの発症は減少する傾向がでていますので、放射線は、乳がんの発症に影響することが示されています。乳がんの発症は、爆心から1km以内であれば、90人前後、1.1-1.5kmでは130人前後、1.6-2kmからは、50-55人前後が、おおよそのめやすの数値のようです。
 
今回、紹介する研究論文によると、観察を続けている長崎・広島被爆者の中から、1968-1999年に、593人の乳がんが発症しました。乳がんが発症した人のうち、爆心より1.5km以内に居住した35名、爆心より1.5km以上離れた地域に居住した32名、対照群(がんがあるが被ばく無い群)30名の人を、研究対象としました。各群に属する人たちから、乳がんの細胞を採取しFISH法という方法を用いて、がん遺伝子の状態を検査しました。予想された通り、近距離で放射線を浴びたグループの方が、がんの遺伝子異常が複数で重複して生じていたという結果が得られました。
 
一般的に、発がんには、HFR2、およびC-MYCと呼ばれる遺伝子が変化することが知られており、乳がんにおいてもHFR2、およびC-MYC遺伝子に異常が起きています。今回は、がん細胞に見られるHFR2、およびC-MYC遺伝子異常のうち、遺伝子増幅と呼ばれる現象を調べました。

遺伝子増幅は、発癌した細胞に見られる重要な所見です。遺伝子の増幅とは、遺伝子の数が増えることを言います。遺伝子増幅とは、がん細胞の現象で、特定のがん関連遺伝子(この場合は、HFR2、およびC-MYC遺伝子)において、この遺伝子の数が増加しています。正常細胞では、遺伝子の数が増える現象は決して起きないように調節されていますが、がん細胞では、染色体の正常構造が壊れて、遺伝子を含む染色体が増える(増幅すると表現)という異常事態がおきています。生存に必要な能力を多く、獲得したがん細胞は、浸潤性で悪性度が高いのです。遺伝子増幅は、特殊な能力を獲得した細胞となるので、一般的にがんの悪性度も増強します。
 
原爆生存者で乳がんが発症した人では、がん遺伝子増幅は、どのように起きているのでしょうか?又、他のがん悪化因子や放射線暴露と、どのように関係したのでしょうか?今回の研究では、乳がんを持つ被爆者が居住していた地域が、爆心とどの位離れているのかを考慮して、近距離暴露群、遠距離暴露群と分け、被ばくの無い対照群と比較しました。
 
被ばく群の乳がんの97人(67人の生存者と、30人の死亡者)と対照群から、浸潤性乳管ガン細胞を得ました。蛍光ハイブリッド法により、がん細胞遺伝子のHER2とC-MYC遺伝子増幅の有無を検査しました。これらのがん細胞は、ホルモン受容体の有無についても検査されました。
 
爆心に近い距離で被爆した人の方が、乳がん発生率は増加しました(1kmごとに1.47倍、95%の信頼区間は1.30–1.66)。 HER2とC-MYC遺伝子の増幅は、近距離暴露群の方が、それぞれの遺伝子増幅が多く見られました(近距離暴露群に、HFR2、またはC-MYC遺伝子異常が高率に証明された)、さらに、HFR2、およびC-MYCが共に増幅する現象は、対照群と1.5km以上の遠距離暴露群では、1名づつでしたが、爆心より1.5km以内の近距離暴露群では、8名にみられました。爆心より近距離群では、HFR2、およびC-MYC遺伝子増幅に加え、ホルモン受容体や組織学的検査で判定されたがん悪性度も高くなっていました。Cancer. 2008 ;112(10):2143-51  PMID: 18348306
本日、福島の事故の大きさが、レベル7という最高値に引き上げられました。今後、さらなるひどい事故が起き、放射能汚染が進んでも、7以上にはならないわけですから、皮肉な評価です。
 
7の評価は、3月15日前後ではなく、さらなる事故を想定した今だからなのか?今後、さらなる事故が起きなくても、7の汚名は、続くのか?などの疑問を感じます。本日の報道では、福島は、チェルノブイリ事故の際の放射能汚染の10分の1位と報道されていましたが、これにも驚きました。なぜ、今、引き上げが必要なのか、どういう背景が潜むのか、マスコミではあまりコメントはありませんでした。
日本のように科学技術が進んだ国の事故だから、7になったなどと、理解できない説明もありました。

チェルノブイリは、多くの小児の甲状腺がんがでました。ヨード不足地域において、ばらまかれた放射性ヨードがあっという間に(24時間以内)に、甲状腺にとりこまれてしまい、食品の汚染も相まって、子どもに内部被ばくが起き、影響が出たと言われています。しかし、論文によると、チェルノブイリ付近の土壌への汚染の程度は、何万から何千キロベクレル/1平方メートル当たりという単位でした。日本では、原発外の周辺でそうした土壌の汚染単位は聞いていないです。10倍どころの違いではないですから・・・。日本では、空にばらまかれた量が多く、空に拡散してしまったとか、条件の差が大きいのでしょうか?いづれにしろ、レベル7の評価については、専門学会の見解などを、追っていきたいと思います。
 
今回の日本の事故で、体に問題量を超える放射線がとりこまれてしまった人はいませんでした。放射能によるやけどなど直接障害は、重症度が数値で予想できますが、将来的な病気発症との関係を評価するのは難しいです。人の体質の多様性から、一定の域値の数値を出すのが困難です。
 
このところ、ずーと放射線障害の論文を紹介しています。放射線と病気の関連は、データ処理の苦労がみえます。疫学的な検討は、予想された結果と異なることや、データがばらつくことがしばしばで、著者の思惑が入ることもあります。やはり、いくつかの報告を読んで、それぞれの読み手が考える作業が必要だということでしょう。
 
放射線の過剰暴露は、がんの発症のリスクを高めますが、がんは他の因子でも発症しますので、線量に比例して、がんがおきるわけではありません。大きな単位となる1シーベルト(こんなに浴びたら大変な量)になると、さすがに用量依存性が出てきます。前回に書きましたように、女性の乳がんでは、エストロゲンに暴露されている時間が長い人に起きやすく、その因子の方が、放射線より大きく影響するわけです。
 
本日の記事の最後に紹介するのは、男性の乳がんです。男性の乳がんは、数が極めて少ないのですが、放射線量との関連がきれいに観察できたタイプのがんのようです。今回は、男性乳がんに関する論文を紹介します。生殖器に関連するめずらしいがんは、放射線との関連がでるのかもしれません。
 
男性の乳がんの発症は放射線暴露と良く相関しました。被爆者のホコート調査LSS研究に含まれる男性45 880人において、男性の乳がん発生率を評価しました。
男性の乳がんは、1958年から1998年末までに診断されました。がんの発症数は、組織的に調査されている広島・長崎の腫瘍発症集計を使用しました。LSS研究に属する被爆者では、男性の乳がんは9人に発症し、1年間に換算して10万人に1.8人の割合でした。一方、被ばくしていない集団の男性では、1年間に換算して10万人に0.5人でした。
 
暴露線量があがるとがんの発症も増加する用量反応関係も見られました。1シーベルト上昇するごとに超過する相対危険度は8となりました(95%の信頼区間0.8から48)。
 
(がんの発症数は、1シーベルト上昇するごとに8倍上積みされる。1.8倍から49倍までの範囲の数値と言えば、95%正しい答えと言える)
PMID: 15840883 J Natl Cancer Inst. 2005 Apr 20;97(8):603-5.
今までのブログには、放射線に暴露されると、小児の甲状腺がんが、多く発症することを書きました。それでは、成人の甲状腺がんは、どの位の増加があるのでしょうか?その参考になる研究論文を紹介します。
 
今回の研究は、1970-1986年間に広島と長崎の被爆者で、甲状腺がんと診断され登録された人と、同地区に居住し甲状腺がんの無い人を、対照者として、がん発症に関連する家族歴や生活スタイルを比較したものです。1986-1988年に、質問票とインタビューから、それぞれの人から、家族歴や生活歴の情報を得ました。

甲状腺ガンは、組織学的に診断されました。 75才以下で、甲状腺がんと診断された362人と、同地区の居住者、性、年齢をあわせた甲状腺がんの無い対照者362人です。
 
甲状腺がんの発症者は、男性57名、女性305名と、女性に多く発症し、がんが診断された年齢は、30歳以下31名、30-39歳88名、40-49歳113名、50-59歳92名、60歳以上38名でした。
甲状腺がんの発症者が浴びた放射線量は、 63%が5ミリシーベルト未満のごくわずかな暴露で、5ミリシーベルト以上の暴露は、57名でした。5-49ミリシーベルトが13人(3.6%)、50-499
ミリシーベルトが14名(3,9%)、500ミリシーベルトが12人(3.3%)でした。1974年から1984年に多くの人が発症しました。対照群も、5ミリシーベルト以上の被ばく者57名が含まれています。(この放射線量は、体内に取り込まれたと計算された値です。)
 
被爆の状況は、LSS研究のデータをもちいました。統計学的検討は、多因子ロジスティック回帰を用いました。
 
すでに甲状腺腫(甲状腺が腫れている人)や、甲状腺の小結節(甲状腺に固い小塊がある)の病歴があった人では、甲状腺がんの発症が多くなりました。甲状腺腫のある人では、甲状腺がんの発症が25倍になりました。甲状腺結節のある人では、甲状腺がんの発症が5倍になりました。また、家系的にも、ガンの家族歴を持つ人では、甲状腺がんの発症が増加しました。1等身(親と兄弟)にがんがある人では、甲状腺がんは1.48倍となり、兄弟・姉妹にがんのある人では、甲状腺がんは2.7倍となり、特に姉妹にがんのある場合には、甲状腺がんは4.25倍になりました。

甲状腺がんになった人のうち、5ミリシーベルト以上を被ばくした人の群(有群)と、無い群とに分け、それぞれの群ごとに、がんの発症を比較しました。被ばく無群では、甲状腺腫があると、がん発症リスクは、26倍となりましたが、被ばくを受けた群の人では、その倍率が3.75倍なりました。がんの家系の有無については、被ばくが無い群の人では、がんの家族歴があると、がん発症は1.55倍となりましたが、被ばくを受けた群では、がんの家族歴があると、がんの発症は1.43倍となりました。
 
(訳者注;被爆者は、甲状腺腫やがん家族歴を持ち合わせなくても、甲状腺がんになる(素因が無くてもがんになる)可能性があるが、患者数が少なく統計学の計算では有意とはならない)。喫煙とアルコール飲酒は、甲状腺がんの発症のオッズ比(0.45-0.6倍)がさがりました。J Epidemiol. 2007 May;17(3):76-85. 17545694
 
訳者の感想 今回は、甲状腺がんの発症は、断然女性が多く、アルコールや喫煙は、がんの発症をあげていないようです。この解釈は、いろいろですが、解毒能力の高い人、つまり、酒も飲め、煙草をすえるような高機能な体を持ち合わせると、放射線の排除能も高いのでしょうか?但し、このコメント、根拠ありません。