新日本浪山紀行 -4ページ目

日本百名山 其之伍 両神山

2007/08/25(土) 秩父国定公園 両神山


今回の山行記録を書く前に、いくつかのリンクを記載しておきます。

私は、基本的に公共機関を使っての山行が多く、電車やバスの時刻を調べます。

が、辺鄙な場所にある登山口までのバスの時刻を調べるとなると、それなりに大変です。

情報量としても少ないですし。。

ですので、今回の山行で参考となったページのリンクを以下に載せておきます。
これから両神、秩父へ行かれる方々の参考になれば幸いです。

1:西武鉄道のホーム
レッドアロー号の時刻や予約方法が調べられます。
2:小鹿野町バス
西武秩父駅から日向大谷、白差井方面へのバスの時刻が調べられます。
3:両神伝説
両神山の伝説が調べられます。
4:秩父市のホーム

秩父の町について調べてください。

5:わらじカツ丼

秩父名物らしい・・B級グルメ


04:00 起床

つい、1ヵ月程前であれば、この時間帯でも朝日が眩しく照り付けていたが晩夏ともなれば、辺りはまだ薄暗い。今回も急遽決定した、両神山。

時間的な制約があるにもかかわらず、決行とした。


04:45 出発

辺りはやはり、まだ薄暗い。

ひんやりとまではいかないが、空気は既に初秋のものであった。

夏の湿り気と、秋のさわやかさが混じった朝であった。

こういう、えもいわれぬ感覚は、とても好きである。

なんというか、自然と一体となった感覚とでも言おうか。

駅へ向かう途中、行過ぎる夏を惜しむ人たちに出会う。

皆、思い思いに、夏を楽しむのであろう。 2007年夏、最後の思い出か。


05:00 JR東海道線乗車

1つ早い電車であったが、乗り換えに不安があったのと、朝食を途中で摂るため早めに動いた。

車内は人は疎らであったが、途中の駅からは旅行者らしき人々が、たくさん乗込んできた。


06:20 JR池袋駅到着

JRから西武線への乗換であったが、早めに行動してよかったと思った。

初めての西武線なので、乗り場等の情報が、ある程度調べてたとは言え、まったく無かった。

特急レッドアロー号の座席指定券など、どこで買えるのかまったく分からなかった。

池袋駅で朝食を摂ろうと思っていたが、それどころではなく、指定券を買うために時間を費やしてしまった。

特急券は、ネットなどで、予約しておくと、改札前の券売機で発行することができるがそれ以外だと、改札を入り、駅構内の1番線(結構歩く)の特急車入り口付近まで行かないと買えない。

私は、それをまず、買うために、急いだ。

買うと、トイレに行きたくなり、駅員にトイレを聞くと、下まで降りなければ無いと言われる。

初めての駅は、とても不便だ。

朝食は車内で食べようと思い、漸く開店し始めた売店で、サンドウィッチとおにぎり等を買い車内に入る。


06:50 西武池袋出発


特急ちちぶ(レッドアロー号)

RYO001レッドアロー号
車内は両側2座席のゆったりした空間であった。

窓際に座り、朝食を摂る。

車内はそれほど、混んでいない。

曇り空の下、電車は進んでいく。埼玉西部へは初めての旅となる。

朝食を摂り終えると、ラジオを聴きながら、寝てしまった。

気が付くと、背中向きに走っている・・・。

そして、車窓からは、先ほど見ていた都会の風景とは異なる、深い緑が見えた。

どうやら、秩父に着いたようである。


08:13 西武秩父駅到着


西武秩父駅前

RYO002西武秩父駅
駅は大きな駅であった。西武秩父線と、秩父鉄道が交差している。

(駅自体は離れているが、徒歩ですぐである)

駅を降りると、帽子を落としていることに気づく。。

結構気に入っていた帽子だし、今日の天気を考えると、かなりの痛手であった。

つまり、駅を降りると、快晴であった。

バスの時間が迫っていることもあり、帽子は帰りに聞こうと思い、売店で水と行動食を買い込みバスに乗込む。蝉が鳴いていた。

バスに乗ると、5分前だというのに、エンジンはまだかかっておらず、運転手は新聞を読んでいる。

そして、乗客は1人いて、携帯電話でワンセグを、大音量で観ていた。

意外にも車内は涼しい。 出発時刻を3分ほど過ぎたあたりで、やっとエンジンがかかり、出発となった。


両神 上野沢行きバス

RYO003駅前バス停


08:25 西武秩父駅出発

バスは4番線に待っているので、「両神、上野沢」行きに乗車すればOK。

ワンセグを観ていた、おじさんも発車と同時に、見るのを止めた。

なかなかマナーがある人だなあ、と思っていたが・・。

バスは秩父の町を通り抜けていく。

目の前には、鉱山らしき大きな山がそびえている。山肌は掘削機によって、かなり削られていて、痛々しい。

秩父はその昔、織物や鉱山で栄えたと聞いていたが、町並みは古く、ところどころに旧家がそのまま残っている。

のどかな田園風景を楽しんでいると、「ピピピ・・・」と携帯電話が鳴る。

先ほどのおじさんの電話のようであった。

おじさんは、何のためらいも無く、電話に出た。

「今、秩父なんだよ!!バスに乗ってるから!!」かなりの怒り口調である。。

そうして、一方的に電話を切った。まずまず、普通の行動である。

すると5分後。。またも電話が鳴る。

おじさん「今、バスだっていってるだろう!!!なんなんだい!!」

非常に笑えた。

その声がとても大きく、運転手もバックミラーで後方を確認している。。

また、一方的に切った。

そのやり取りが、5回以上は続いた。

相手は恐らく、そのおじさんの奥さんだろうと思うが、もう少し、やさしい言い方はできないのだろうか?

それと、おじさんも気を利かして、切っているのだろうが、それなら、話てくれたほうがいい。

一回で済むから(笑

マナーを重視しているようで、逆に迷惑になっている最たる例だと、身につまされる思いがした。


08:55 小鹿野町役場前 バス連絡

30分ほど走ると、小鹿野町役場前のバス停に着く。

ここで下車する。降りると、バス停のそばに小屋のような待合室があり、中に入って連絡のバスを待つ。

この待合室には先客が2人いて、親しげに話していた。

格好からして、登山客なのだろうと思った。

70くらいのおじさんと、30くらいの女性であった。

おじさんが、私に興味をもったのか、話しかけてきた。

実はその2人、知り合いでもなんでもなく、今ここで出会ったばかりであった。

小鹿野町役場前                  役場前待合所

RYO004小鹿野町役場 RYO005役場前バス停

08:55 小鹿野町役場前出発

5分ほど待つと、両神山行きのバスが来た。

来たというより、後方で待機していたのだが・・・(笑。

女性は地元の人のようで、私と、そのおじさん2人だけが、バスに乗込んだ。

途中、おじさんと2人っきりということもあったので、山話に花が咲いた。

なんでも、おじさんは若いころから、登山をしていたらしく、今回も百名山の一環としてこの山を訪れたらしい。

すでに50座近く登頂しておられるとのことだった。

ザックの話、サポーターの話、勉強になりました。

しかし、おじさんは私のほうを見て、こう聞きました。

お「今日は日帰り?」

私「ええ・・一応そのつもりですが。。(予定では14時50分のバスで帰る予定)」

お「あなたのような若い方なら、十分ですねえ~。16時のバスに間に合えば、大した健脚ですよ!」

私「いや、その1本前に・・・」とは言えず、そうですね~と相槌を打っておりました。

ここで、ふと思った。やはり今回の山行は無茶なのか?と。

10時から登り始めて、14時半には下山することは可能だと思っていたが。。少し、不安になる。

バスは山間の細い道に入って行き、揺れも激しくなっていた。

おじさんのほうをずっと向いていたので、軽く酔った。


09:30 日向大谷バス停到着

予定時刻よりも、やや早めに日向大谷に到着した。

外は、まだ盛夏のような暑さで、強い日差しがあたりを照らしていた。

日向大谷バス停
RYO006日向大谷バス停
バス停から少し、上がったところに、小さな待合所がある。

日陰になっているので、ここに入り、準備をする。

足をテーピングし、ソックスを履き、ストレッチをしていると、先程のおじさんが近づいてくる。

てっきり、バスを降りた時点で、先に登り始めたのだとばかり思っていたのだが・・。

おもむろに、こちらに近づいてきて、一緒に登ろうと言う。

正直、私の場合、時間がなかったので、一緒に登っていると、今日の計画が丸つぶれだ・・と思っていた。

しかし、よくよく聞いてみると、どうやら、おじさん、登山口が分からないらしい。(笑

そう、言ってくればいいのに、と思いながら、「じゃあ、途中まで、一緒にいきましょうか!」と言った。

両神山登山口は日向大谷バス停から分かりにくいところにある。

そのまま、道路を上がっていっても、たどり着くのだが、真上に見える両神荘へ上がる近道がある。

それは道を挟んで、バス停の前にある細い通路を上がっていく道である。

両神山登山案内板                登山口標識

RYO007登山口案内板 RYO008登山口標識

登山口案内板
RYO009案内板

 
09:55 両神神社里宮出発

下のバス停を出たのは、45分頃だっただろうか。

おじさんとは両神山荘の脇を通った辺りで、別れを告げた。

そこから、細い山道を通っていくと、両神山の里宮(さとみや)の鳥居が現れた。

10時といことで、日は既に高い。気温も30度は越えているか。

木々の間から日差しが漏れて、里宮の鳥居がいっそう荘厳に見えた。

両神山里宮 鳥居                 両神山里宮 御神体
RYO010両神神社里宮 RYO011御神体
今回は不本意ながら、時間との戦いであるため、スタートからペースを上げて歩く。

途中にある下りでは、勢いあまって、駆けていた。

会所といわれる、合流ポイントまでは、石と土の細い山道を行く。

また、両神山といわれるだけあり、昔から信仰の山だったのだろう、行く先々で石柱、地蔵、石碑などを多々見かけた。

また、水が豊かな山なのだろう、たくさんの沢が山道を横切っていた。

登山道1                      沢
RYO012登山道1 RYO013沢1
しばらく行くと、最初の岩場に到着する。

だらりと鎖がたれており、木々の根が怪しげにそれにとりついている。

それを越えると、深い山林の間を行く。

木陰になっていて、なだらかな道が続くので、涼しく、楽しい。途中、山腹からの湧水が道を侵食していた。

岩場の鎖                      登山道を横切る沢
RYO014岩場の鎖 RYO015登山道2


10:12 会所到着

出発から、約15分、この時点で予定時刻を20分ほど、下回っていた。

しかし、体は汗だくである。心拍数も上がっており、ここで3分ほど休憩をとった。

水分補給をし、10:15分再出発する。

ここ、会所はまさに会所という名前のとおり、産泰尾根(産体尾根)を挟んで、北(七滝沢コース)と南のコースに分かれている。

清滝小屋のほうに向かって、坂を下る。

会所1                        会所2
RYO016会所1 RYO017会所2
坂を下ると、小さな沢が流れていた。

里宮からの途中も水の音が聞こえていたが、恐らく、この沢の下流になるのだろう。

サラサラと水をたたえて流れている。

夏の光を受けて、水面が光っている。

水質は非常に綺麗で、冷たい。

沢伝いに歩いていけるので、かなりの涼を感じることができた。

途中、いくつか沢を渡るところがあった。足元に気をつけながら、飛び越えていく。

会所からの沢伝いの道             沢を渡る
RYO020会所からの沢伝い RYO021沢を渡る

沢2                         晩夏の山林
RYO022沢2 RYO023晩夏の山林
途中の沢渡りのところで、丸太が3本架けられてある不安定な橋を渡る。

橋の向こうの小さな滝が心を和ませる。

この辺りの景色は、水流と新緑が見事なコントラストをなしている。

光が全てを生き生きと映えさせ、見る者を魅了する。

登山道3
RYO024登山道3
沢を離れて、山肌を登っていくコースになると、傾斜が急になってくる。

道も判りづらく、途中のピンクのリボンを目印に進んでいく。

(くれぐれもコースアウトしないように!!ふっとした瞬間にコースがなくなっている。)

歩を緩めずに歩いているせいか、かなり苦しい。


10:45 八海山通過

清滝小屋の途中のチェックポイント八海山を通過する。かなりの汗をかいている。

八海山標識                     八海山近くの地蔵
RYO025八海山標識 RYO026石像1
ここから、また急な坂が続く。

がんばってのぼっていると、まさに救いの水場が現れる。弘法の井戸である。

山腹からの湧水で、小さなパイプから、ちょろちょろと流れている。

水量こそ多くないが、冷たく、綺麗である。

ここまでの疲れを一気に飛ばしてくれる。

近くに備え付けのコップがあるので、これを使って飲めばよいだろう。

弘法の井戸1                    弘法の井戸2
RYO027弘法の井戸1 RYO028弘法の井戸2
八海山から、清滝小屋まで800Mという標識を見たので、すぐに着くだろうと思っていたが、結構長い、きつい坂が続く。

途中、3人組の登山者に出会うが、それ以外は下山者数人に出会ったのみであった。

やはり10時スタートはかなり遅いのだろう。


11:10 清滝小屋到着
弘法の井戸から10分ほどであろうか、眼前に城のような小屋が迫ってくる。

どうやら、清滝小屋に着いたようであった。

登山行程からすれば、2/3を過ぎたところであった。

しかし、ここから、剣ヶ峰までは峻険な坂が続くとバスのおじさんが言っていたので、気を引き締めなおす。

清滝小屋にはすでに、先客の登山者が休憩を取っていた。

私もここで、ザックを下ろし、水分と行動食を摂る。

天気は快晴である。清滝小屋では、幕営する場所もあるので、ここをベースに山頂にアタックする人もいるだろう。 (実際、バスのおじさんは、清滝小屋に1泊するようなことを言っていたが・・)

清滝小屋                      清滝小屋前の案内板
RYO029清滝小屋 RYO030清滝小屋案内板

清滝小屋入り口
RYO031清滝小屋入り口


11:20 清滝小屋出発

もう少し、長めに休憩を取りたかったが、時間との勝負のため、そそくさと出発する。

清滝小屋の裏手に山道が続いている。

急な九十九折の坂が、はるか上方に延びている。(鈴が坂)

ペースは緩めない。途中の登山者を抜いていく。

周りは高い杉木立で、道は狭い。この坂を登りきると、産泰尾根へと出る。

清滝小屋裏の鈴が坂標識
RYO032鈴が坂

産泰尾根標識                   産泰尾根から両神山を望む
RYO033産体尾根標識 RYO034産体尾根から両神山を望む
産泰尾根では少し、眺望がきいた。両神山のほうを見てみると、夏の空にその山体を大きく突き出していた。
産泰尾根からは岩場が続く。この山、最大の難所といっていいだろう。

まず、鎖を使った岩場、それに湧水で表面が濡れた石、えぐれた登山道と難所満載である。
最初の岩場で事件に巻き込まれた。

ここからが、災難の始まりであった。鎖を使って、岩場を登っていると、上から数人の下山者が降りてくる。

4人程度だったので、岩場途中で横によけ、道を譲った。

どうやら、高校生らしき子供と引率者のような感じだった。

挨拶を交わしながら、降りていくのだが、その後ろからまた一連のグループが来ていた。

同じ服装をしている。

しばらく、この流れが続いたため、やっと気づく。

これは相当な数の団体だと。。人数にして200人程度か・・・(後で考えると)。

私は10分ほど立ち往生していたが、流石にこれは待てないと思い、流れの間を縫って上に上った。

そうでもしないと、延々待たされたであろう。

猿のように岩場を駆け上がる。

下山する高校生
RYO036下山する高校生
横岩を通過し、滑りやすい山道を登っていくと、ついに、両神神社の鳥居を発見する。


11:48 両神神社到着
この時点で、予定より約1時間程度短縮できていた。

このままのペースで行くと、恐らく予定通り下山できるだろうと思っていたが・・。

両神神社 鳥居                     両神神社 社務所
RYO040両神神社鳥居 RYO041両神神社
両神神社でも、先程の高校生団体の一団なのだろう、その連中とすれ違う。

隊列を組んでいるのだが、とても歩きづらい。

確かに山は私物ではなく、団体できてもよいのだろうが、なにか釈然としないものがある。

ここでは休憩も取らずに、山頂へと急ぐ。
高度的にはほぼ、山頂のほうまで出ているので、緩やかな道が続く。

途中、わずかに咲いている花が、気持ちを和ましてくれた。

山道の花1                       山道の花2
RYO042花1 RYO043花2
尾根沿いに歩いていくと、最後の登りのような坂が現れる。

山林の中で、登山道もはっきりしない道である。ガンガン登っていく。

途中、ところどころ林が切れるところがあり、そこからの眺めは山頂が近いことを教えてくれた。

途中からの眺望(東向き)
RYO044眺望(東向き)


12:08 両神山山頂到着(剣ヶ峰) 1723.0M
山頂への最後の砦に、大きな岩場がある。それを乗り越えると、小さな祠のような岩の頭に出る。

目の前が開けた瞬間、そこが山頂であった。

山頂を表す標識がいくつかあり、石碑などもある。山座同定盤もある。

私が到着したときには、1人、先客がいて、石碑の影を利用して昼寝をされていた。

頂上からの眺望(南)               頂上からの眺望(北東)
RYO045頂上からの眺望(南) RYO048頂上からの眺望(北東)

両神山頂上標識
RYO049頂上標識

山座同定盤                    頂上案内板
RYO050山座同定盤 RYO051頂上標識
今回、ハイペースで歩いてきたので、体中から汗をかいてしまって、パンツまでびしょ濡れであった。

その汗がズボンまで浸透してきていて、ポケットに入れた携帯のカメラレンズまで、曇らせていた。

手も汗だくなので、なかなか拭くところが無く、仕方なく、ズボンの乾いた部分で拭いたが、レンズの曇りが幾枚かの写真をダメにしていた。

頂上からの眺望(南)               両神山山頂石碑
RYO052頂上からの眺望(南) RYO053石碑
山頂の岩場に立って、周りを見渡してみた。

南には今、上ってきた尾根が見える。ややガスがかかっていて眺望はきかないが、南には富士が見えるらしい。北東方面には浅間山をはじめとする日光方面の山々が見えるらしく(木々が邪魔で見えないが)、西方面はアルプスの山々が見えた。
一通り、風景を楽しんだあと、昼食を摂った。といっても、パンと水分を摂っただけだが。

ラーメンを持ってきていたが、この暑さでは、食べる気がしなかった。

また、バーナーで火を起こすスペースも、ここには無かった。

さらに、ザックの中に入れた水筒から水が漏れていたのか、まわりの水蒸気が水になったのか、袋から水分が漏れており、ザックの中が濡れていた。
本当は、ここから、奥の八丁峠や天理岳を経由して帰りたかったが、いかんせん、時間がないため、来た道を引き返すことにした。

先程寝ていた男性は、私のちょっと前に出発していた。

さらに、その前に八丁峠から上ってきていた登山者が休息をとっていた。

頂上は夏の日差しが、そのまま突き刺さるが、さわやかな風が時折吹き抜けていく。

もう少し、ここに居たかったが、後にすることにした。


12:20 両神山山頂出発
山頂からの下りは最初は大変である。

いきなりの鎖場で、それを過ぎても、高低差があるところを下らないといけない。

私の前には、先程出発した男性が走っている。

途中、赤い蛇をみる。山道にも蛇がいるので注意が必要だ。

日はゆっくりと傾いており、日差しが午後を感じさせていた。

途中、鈴が坂あたりで抜いた登山客とすれ違う。やはり、高校生の団体に苦戦したそうである。


12:40 両神神社通過
この時間帯には団体は過ぎ去っており、静かな空気が流れていた。

境内にある狛犬がなんともいえない、愛嬌を振りまいていた。

両神神社 狛犬(左)                両神神社 狛犬(右)
RYO055両神神社狛犬(左) RYO056両神神社狛犬(右)
晩夏の午後は早い。下山道に注ぐ日差しが夕暮れのそれに近づいていることを感じながら行く。

急に山林全体のトーンが落ち、物悲しさに包まれる。

下山道
RYO057下山道
産泰尾根辺りまで来たとき、鈴が坂の下のほうに賑やかな声が聞こえた。

恐らく、先程の団体が休憩をしているのだろうと察しがついた。

このまま行くと、団体にぶつかってしまう。

そうすると、大幅に下山時間が遅れてしまうのではないかと、一抹の不安を覚えた。

彼らが休憩中に清滝小屋あたりでかわせたらな、と思い、先を急いだ。
鈴が坂を下っているときに、バスのおじさんのことを思い出した。

そろそろ、出会ってもいいころであると。

そうすると坂の中腹あたりで、ゆっくりと登ってくる、見覚えのある服装の人がいた。

おじさんであった。

おじさんは私を見るなり、どこまで行ったのか聞いてきた。

山頂まで行ったと言うと、かなり驚いて、さらに14時50分のバスで帰ろうと思ってます、と言うと、またまたびっくりしていた。(笑

おじさんに、下で高校生の団体がいなかったか?と聞くと、清滝小屋で休憩を取っていたが、もう既に出発したという。

やられた、と思った。

おじさんは七滝沢コースで帰ったらと薦めてくれたが、衝突覚悟で、元のコースを戻ることにした。

おじさんは清滝小屋に荷物を置いて(預かってもらってるわけではない)、両神神社まで行くことにしたらしい。

山頂へは行かないと言っていた。


13:10 清滝小屋到着

小屋には既に団体が居なかった。居るのは数人の登山客であった。

私は、ここでも休憩を取らずに下山を急いだ。しばらく行くと、弘法の井戸に出た。

ここで一息入れる。登ってくるときに、伝ってきた沢の源流はこの弘法の井戸のようであった。

冷たい水で顔を洗い、喉を潤す。水筒に水を入れた。

弘法の井戸付近のきのこ
RYO058弘法の井戸付近のきのこ
後ろから人が来る音がしたので、先を急いだ。

後方からの人たちは先程、小屋で休憩をしていた人たちのようで、3人組であった。

かなりの早足で降りてきているので、途中道を譲った。

このまま行くと、この人たちも、団体と衝突するなあと思った。

下山途中の山林                 下山道2
RYO059林 RYO060下山道2
途中の木々に目を移しながら、下山した。前に3人組を見ながら、後ろをついていくように下った。

途中、山道を走り降りてくる人が居た。その3人組と合流したので、仲間だったのだろうか。

しばらく行くと、案の定、団体の最後尾にぶつかった。先には団体の列が伸びている。

一般登山者と見られる人は、その後ろに10名くらいは居ただろうか。そこに私を含めた5人が吸収された。

ゆっくり、ゆっくり下っていく。前の人たちも、この流れの遅さに内心辟易してそうであった。

駆け下りてきた人が、何度も団体を抜かそうとしていた。

20分ほど、団体とともに進んでいると、先程の4人組の1人が前の女性と親しげに話し始め、先にどうぞといった。なんと、その人は他の3人とはまったく関係なかったようであった。

さらに、その内の2人も後方へ下がってしまった。

しかし、前はまだまだ詰まっている。さらに10分ほど行くと、前の人が「先、行かれますか?」と聞いてくる。

私は「いえ、大丈夫です。」と答えた。

数人抜いたところで、前には200名ほどいるから意味がないと思ったからだ。

さらに10分ほど歩くと、同じ人が、また同じ質問をしてきた。

私は「先にはまだまだいるでしょう?!」と言うと、その人は、「でも、そういってても、ずっとぬけませんよ!」と言う。

私は意味がわからずに「じゃあ、行かせてもらいます。」と行って、行こうとすると・・・。

なんとその人が「登山者のかた、先に行かせてあげてください!」と言う。引率者だったのだ!

さらに、山を駆け下りてきた人も引率者だったらしく、抜こうなどという気持ちは一切なかったようだ。

その辺りにいた、一般登山客と思しきメンバーは全て団体の一員であった。

私は、200名ほどの団体の脇を通り抜けさせてもらいながら、先へ進んだ。

とうとう会所まで来てしまっていた。


14:00 会所通過
団体一向は会所の広場で休憩をとるようであり、集合していた。

ここで一気に抜かないといけないと思い先を急いだ。

会所の沢から上がる道で、引率者らしき人物が私を生徒と間違えて、「おい!どこへ行く!!」と怒鳴ってきた。管理責任は判るが、一般登山者を巻き添えにして欲しくない。

あまりにもひどい団体であった。

いや、わからない、わたしのほうが非常識なのだろうか?

団体を抜けてみると、さぞ、困っていた人がたくさんいるんだろうな~と思っていたが、わずかに2人だった。

それも、山頂で寝ていた男性と私だけ(笑。

その方と話したが、やはり、困っていたようであった。

団体のバスが駐車場に止まっていたので嫌な予感はしたと言っておられたが、まさにその通りだったと。

男性はトレイルランニングをされているようであった。

時計は14時をまわっていたので、私は先を急いだ。

予定では14時には楽に下山している予定であった。里宮まで、走るように進んだ。


14:10 両神神社里宮通過
里宮で登山の無事をお礼していると、後ろから先程の男性が来て、抜いていった。

辺りは夕暮れの日差しになっていた。


14:22 日向大谷到着
眼下に両神山荘が見えた。

既に下山した人たちが休んでいた。

日向大谷まで来て、例の小屋で、一息ついた。

バスの時刻までは30分ほどあった。

カップラーメンを食べたかったが、先客のおじさんがバーナでラーメンを食べていたので、真似しちゃうなあ~と思い、気が引けたので、やめた。

カロリーメイトを食べた。そして、着替えた。

近くに水場らしいところがあったのだが、やはり、そのおじさんに先を越されたので、やめておいた。

ほかにも登山客がいたが、どうやら、わたしと、そのおじさん以外は、団体の関係者であった。

引率者は各自、自家用車で来ていたようだ。

その後、高校生の団体が、下山してきた。

山腹からの両神山荘
RYO061両神山荘


14:50 日向大谷出発
バスは少し遅れて出発した。
客は、私と先程のおじさんの2人だった。
窓からの日差しがきつかった。
私は後方の席に座り、いつの間にか寝てしまっていた。


15:40 小鹿野町役場前出発
朝とは違い、すぐにバスが来た。
乗り換えて、西武秩父駅に向かう。


16:00 西武秩父駅到着
バスから降り、レッドアロー号の指定席券を買った。
出発まで時間があったので、今朝の帽子の件を駅員に聞いてみた。が、拾得されていないようであった。
西武秩父駅には仲見世通なるものがあり、秩父鉄道への連絡道になっているのだが、お土産の売場も兼ねているようである。
そこで、冷たいビールと、焼きそばを買込み、特急に乗車する。


16:25 西武秩父駅出発
車内に入り、座席に座ると、先程、バスで一緒だったおじさんが居た。
おじさんが話かけてきて、「おたく、今朝何時に来られたか?」と聞くので、

「ここを8時25分のバスですか、今朝池袋経由できました!」と言うと、「そりゃすごいなあ~」と驚いていた。
やはり、この山行って無理っぽいのだろうかと思った。
ビールを開け、焼きそばを頬張る。めちゃめちゃうまかった。
レッドアローは空いているし、空調もちょうどいい。
ラジオを聴きながら、冷たいビールを飲んだ。
帰りの電車は寝なかった。
すると飯野駅でスイッチバックが行われた。
電車は夕暮れどきの多摩方面を東に向かう。


17:46 西武池袋駅到着
西武池袋駅からJR池袋駅に乗継ぎ、17:57の湘南新宿ラインに乗車する。


19:02 JR東海道線辻堂駅到着


今回の山行を振り返って・・・、やはり時間を気にしすぎる登山はあまりよくない、ということだろうか。
オーバーペースになるし、時間が気になって、周りがみえなくなる。
怪我の原因にもなりそうだし。
ま、こういう山行もあってもいいかな、と開き直ったが(笑

両神山自体は奥秩父のきれいな山であった。
山の表情は変化に富み、登っていても飽きることはない。
また距離的にも日帰りハイクにはもってこいの山ではないか。
都内からのアクセスも良く、温泉もたくさんあるので、また時間に余裕をもって、再挑戦したいなと思った。
個人的には秩父の名物?!「わらじカツ」なるものを食してみたかったが・・・

タイムテーブル
チェックポイント名到着時刻出発時刻所要時間
両神神社里宮-09:55-
会所10:1210:1500:17
八海山10:4510:4500:30
清滝小屋11:1011:2000:25
横岩11:4011:4000:20
両神神社11:4811:4800:08
両神山山頂(剣ヶ峰)12:0812:2000:20
両神神社12:4012:4000:20
横岩12:4912:4900:09
清滝小屋13:0713:1000:18
会所14:0014:0000:50
日向大谷14:22-00:22



日本百名山 其之肆 富士山

2007年8月3日(金) 4日(土)

お盆前の週末、混雑を避けるために、金曜に休みをとり、富士山初登頂を試みた。
折からの台風の影響が心配された。

2007年8月3日の天気図
20070803天気図


07:30 起床
昨日までの雨は上がり、湘南一帯は晴天となっていた。
予定よりも30分ほど起床が遅れてしまう。
強い日差しが寝室にまで、達しており、天候に恵まれた山行になると期待していた。

身支度を整え、朝食もままならないまま、家を出る。

07:50 自宅出発
真夏特有の湿気交じりの風がゆるく吹いていた。
しかし、振り返っても富士山は濃い靄にかかり、見えなかった。

JR東海道線に乗り、国府津駅を目指す。

08:40 JR御殿場線に乗り換え、御殿場駅へ向う。

東海道線を降りたホームのすぐ隣のホームに御殿場線の電車は到着した。
2両編成で、乗客は少ないが、車両に乗り込むと、かなり狭く感じる。

出発前に、御殿場線の電車の写真を一枚撮った。

御殿場線
FUJI001御殿場線電車
ここで、大きなミスに気付いてしまう。
私は、デジカメを持っていないため、携帯電話のカメラ機能でまかなっているが
メモリ容量が少ないため、別途SDカードを挿して使っている。
その大切なSDカードを今日忘れてしまった。。
これがないと、写真を5枚程度しか撮ることができない。。

旅の最初から前途の多難さを物語ってるようであった。

まぁ、こんなこともあるさ!と気を取り直して、電車に乗り込む。
すでに座席は一杯である。

次の東海道線の列車を待って、いよいよ、出発した。

御殿場線に乗車するのは初めてであった。
以前はこの国府津駅を仕事の関係上よく、通っていたが、電車を見るだけで、乗ったことは無かった。

電車は鄙びた街を抜けていく。
時代を遡っているかのようである。

松田駅を過ぎると、学生たちも降り、いよいよ風景が田舎になっていく。
丹沢山系を抜けているのだろうか、山間を電車が通過していく。
(実際は丹沢山塊の南部と箱根山系の北部との間の渓谷を走っている。)
少し天気が曇りはじめていた。

09:20 御殿場駅到着
かなりの長旅であった。もう少し短いものだと思っていたが、各駅停車は意外に長い。
駿河小山で静岡に入り、足柄を過ぎると、目的の御殿場駅であった。
駅を降り、バスターミナルに向う。

須走口行きのバスはすでに到着しており、長蛇の列が出来ていた。

09:30 御殿場駅出発
バスの乗客からは関西弁も聞こえてくる。
関西から、富士山を目指してやってきているのだろう。
金曜にもかかわらず、人はそれなりにいるものだなあと思う。
やはり富士山はシーズンものなんだなあ。。

途中、やはり雨となった。
かなりの豪雨だった。バスを叩くように雨が降り注いでいる。
苦笑いしかでなかった。

10:20 須走口到着
バスから降りると、横殴りの突風が吹いていた。
雨は時々降っているが、雹まじりであるように感じた。
標高が既に高いせいか、気温が低い。
登山口の茶屋 菊屋に入り、身支度を整えることにした。

茶屋の中は、登山客でいっぱいであった。
レインウェアを着たり、スパッツをはいたりしていた。
私は、茶屋で山菜そばを注文し、すすりながら身支度を整えた。

いよいよ出発しようとしたとき、この茶屋の看板娘であるおばあちゃんが
杖を持っていかんか?と言ってきた。
正直必要なかったが、好意を無に出来なかったので、杖を拝借していくことにした。

バスで同時に着いた人たちは、もうすでに出発しているようであった。

11:20 須走五合目出発
雨と風は依然として激しかった。
須走口からの登山道は最初、山林の中を行く。
山林に入ると、風や雨が幾分軽減され、なにも問題ないように感じでしまっていた。

山林は長く続く。新六合目まで続くであろうか。
時折、開けたところに出る。
そこからは眼下に山中湖を望むことができた。
しかし、遮るものが無く、風が強く吹いている。

1時間ほど歩くと、最初のチェックポイント新六合目に到着する。
標高は2420Mということで富士宮口新五合目とほぼ同じ高度である。
ここで、小休止を取る。
小屋には愛らしい犬がいるが、雨と風で犬小屋から出てこない。
エネルギーを補給していると、私自身も体温を奪われていっていることに気づく。
レインウェアを脱ぐと、かなり寒い。

新六合目 長田山荘
長田山荘の目印は鯉のぼり!下山時も確認できます。

再出発して、30分ほど歩くと、須走口新六合目 瀬戸館 2620Mに到着する。
ここでは休憩を取らずに、先を急いだ。
本六合目 瀬戸館

この新六合目を越えると、木々が消える。
富士山の険しい山肌に放り出される。
放り出されると同時に、風が恐ろしく強くなってきた。
辺りは火山岩だらけで、道も細くなってきた。
新七合目は目視で確認できるのだが、雨と風で前に進むこと自体が困難になってきていた。

登山されている人々はそれなりにいるのだが、やはり、雨と風のせいで、みんな元気がない。

そうしているうちに、私も文字通り、足元をすくわれた。
山道で真正面から突風を受けたのであった。
体を倒されたときに、手の甲側から地面に落ちたため、指先が剥きだしの火山岩にあたってしまった。
指は深くえぐれ、すぐに血があふれた。

ファストエイドで、止血を行った。
雨と風で、かなり寒い。
寒さで指先の感覚がなかった。

指先のそれほど大きくない怪我だったので、そのまま先に進んでいたが
バンドエイドを強く巻きすぎたのか、指先が変色してきていた。
また、気圧のせいなのか、血が止まらない。
バンドエイドを外し、ティッシュでひたすら押さえた。
体力がかなり消耗した。
風は相変わらず、強く吹いていて、多くの登山客の足を止めていた。

13:45 新七合目到着
怪我を負いつつ、新七合目に到着した。
雨も強くなっていたこともあり、この新七合目の太陽館で休憩をとった。
休憩料金が45分で1人1000円だっただろうか。
やはり、富士山ではなんでもお金がかかるのだなあと実感した。
温かい豚汁を頼み、濡れた体を温める。
一息ついたところで、先程の怪我を治療した。
かなり、深くえぐれていた。

山小屋ではバイトの兄さんたちが、雨をうらむかのように、中仕事をしていた。
ここでは、接客業というスタイルは存在しないのだろう。
勝手に客がやってくるし、店が主体となったサービスが展開されている。
これはどの小屋でもそうなのであろう。
なんというのか、それが普通なのだろうか?!
ここでの店員の態度は明らかに普通ではなかった。
(しっかり接客してくれる人もいるんですけどね・・・)

時刻が14時30分になろうとしていたので、再出発することにした。
小屋のおばさんに、どこまでいくのか?と聞かれたので
頂上までと答えると、こんな天候のなか、難しいと思うと普通に言われた。(笑
今夜の宿は山頂の山口屋に予約を入れている。

たしかに、風や雨を考慮すると、8合目辺りで手を打つほうが賢明だっただろう。

おばさんがいうには、ここから、山頂まで3時間かかるという。
山口屋には17時までに来てくれと言われていたので、ギリギリであった。

出ようとすると、後続のお客さんが入ってきた。
やはり、みな一様に寒そうである。
中には、より下の小屋に宿泊予約を入れなおしている人もいた。

お客の1人が、コンロで湯を沸かそうとしていたが、小屋のおばさんに注意されていた。
富士山内は国定公園のため、コンロは禁止されているらしい。

新七合目 太陽館 2920M

14:30 新七合目 出発
天候はすこぶる悪い。
山頂を見上げても、分厚い白い雲におおわれていて、なにも見えない。
風は強烈で、さらに冷たく、雨が体をたたく。

一歩一歩、進んでいく。
高度が高くなってきており、少し進んだだけでも、心拍数があがる。

エクストリーム。
まさにそんな環境であった。

本七合目 見晴館 3140M も通りすぎる。
新八合目 江戸屋 3270M で少し休憩を取る。

江戸屋は下山道の分岐点となっており、河口湖、富士吉田方面へ分岐することができる。

このあたりまでくると、人気はすっかりなくなってきていた。
あたりは薄暗くなってきており、宿につくことができるのか?という不安が私を覆った。
ただ、登るしかないと思い、歩を進めた。

16:30 本八合目 胸突江戸屋 通過
ここで、河口湖口からの登山道と合流する。
この時も、男性3人の登山者がおり、記念写真を撮ってくれというので、撮ってあげた。
3人は江戸屋へと入っていった。
正直うらやましかった。(笑

この時点で、私は九合目に小屋があると思っていた。
だから、九合目までは行こうと、勝手に決めていた。
無いのにもかかわらず(笑。

胸突江戸屋からは、もう・・豪雨である。
目も開けていられないし、立っているのがやっと。
途中、サングラスが突風で飛ばされてしまった。

先を歩いていた人たちも戻ってくる人が多くなってくる。
本日中の登頂をあきらめ、8合目まで引き返すのである。
女性登山者2人組もいたが、やはり胸突江戸屋に入ったようであった。

山道は九十九折で、酸素が薄く、岩と砂で歩きづらい。
その道を抜けると、岩場となる。
険しい岩肌が雨に濡れて滑りやすくなっている。

もう前には誰もいないようであった。

そんな中、気力だけで、見えない9合目を目指していた。

岩を掴むように登っていく。

歩くこと1時間程度であろうか・・・。
もう限界だと思った瞬間、白い雲と雨粒の向こうにうっすらと鳥居が見えた。
私は9合目だと思った。
すこし気分が楽になった。
足が軽くなり、どんどん登った。
すると、そこには、鳥居しかなく、小屋はない・・。

が、すぐ目の前には狛犬らしき、大きな石階段が見えていた。
このとき初めて、ここが山頂なのだと思った。
やっとたどり着いた。
正直、この天候でよく、ここまで来れたなと、ホッとしていた。

雨脚は格段に強くなっていた。
雨粒が体をたたく音がはっきりと聞こえていた。

山頂には人は誰も居なかった。
分厚い雲の中に、数軒の小屋があるのみで、物悲しい雰囲気であった。

寒さはピークに達しており、体力を奪っていっていた。

私は最初、東京屋の玄関を開けたようで、山口屋さんは隣ですよ、と言われた。
そして、いよいよ山口屋に到着するのであった。

17:40 山口屋到着
予定より、40分遅れで、山口屋に到着した。
恐る恐るドアを開けると、おじさんが出迎えてくれた。
が・・・非常に迷惑そうであった。
それもそうだろう、17時までに来いと言われているのに、40分も遅刻してしまったからだ。

まず、最初に「こんな日に登ってきちゃいかんよ!」と一喝された。
そして、絶望的だったのは、もうご飯が無いということだった。
予約していたと言ってみたが、なにも出てきそうになかった。

山小屋の人たちは19時には寝てしまうそうで、あと1時間ほどで寝る準備をしてくれという。

濡れた衣類を脱ぎ、寝る準備をしながら、持ってきていた食料を食べる。
ここではコンロOKなようであった。(私は持ってきていなかったが)

山小屋の人が、炭を鋳こした七輪を持ってきてくれた。
少し暖をとることが出来た。

19時前に、奥の床に入った。
私以外に客は居ない。250人収容に私だけであった(笑

19時消灯なので、本を読むわけにもいかず、ずっとラジオを聴いていた。

布団の中は最初はとても冷たいが、時間がたつにつれて、温かくなってくる。
来週の週末あたりには、このベッドも満員になるのだろうな~と思った。
風雨が激しくなってきていた。雨がトタンを叩く。
風の音が大きい。

NHKの台風情報を聞いていたが、台風はすでに日本海海上、新潟付近と言っているが
富士山ではそんなことは関係ないようだ。
台風が来ていると、全てで、影響を受けるのだ。

21時ごろには寝てしまっていた。

翌朝4時頃、目が覚めた。
風の音は止んでいたが、雨は降っているようだった。
御来光をみれるかな?と微かに期待していた。

あたりはまだ薄暗い。
外を確認したが、雨が降っており、御来光どころではなさそうだった。
7時チェックアウトだったので、ギリギリまで寝ることにした。

6時30分ごろ起きて、母屋のほうへ行った。
おじさんたちは起きていた。
身支度をしていると、また七輪を用意してくれた。

山小屋の朝は、子供のころのお正月の匂いがした。
ピーンと空気は冷たく、張り詰めていて、まだ誰も起きていない。
辺りは暗く、これから、新年を祝う準備をしている・・・そんな懐かしい感じを受けた。
それは小屋の木々の匂いと、炭の焼ける匂いがそうさせたのだろう。

窓から、外を見やった。まだ雨が降っている。
また、冷たい世界に戻るのかと思うと、少し憂鬱だった。
山口屋

8/4 (土)
07:00 山口屋出発
外に出ると、数人の登山客が既にいた。
恐らく、御来光を目指して、金曜夜から徹夜で登ってきたのだろうが、今回は残念だった。
あたりは、まだ暗い。

ここから、私は御鉢巡りを開始した。

御鉢巡りの由来や、方法は以下のHPが参考になると思います。
御鉢巡り参考ページ

久須志神社から時計回り(正しい、お作法らしい)に出発した。
大日岳、伊豆岳あたりでは、恐ろしいくらいの風が吹いた。
進むのが正直、困難、かつ怖かった。(体が飛ばされるのではないかと・・)
這うように進んだ。
高度が高く、運動しているところへ、もろ正面の向かい風がくると、人間、息が出来ないということをはじめて知った。
呼吸が出来ない苦しさは本当につらい。

岩場を越えて、先に進むと、浅間大社奥宮(せんけんたいしゃ)に到着する。
ここは富士宮口から登ってくると、ゴールになるらしい。
郵便局などを見学し、最高峰剣ヶ峰を目指す。

このころになると、雨は上がっており、光も差すようになってきていた。
ただ、雲は多く、風もまだ強かった。

浅間大社を出発するとすぐに、「このしろ池」を通過した。
昨日からの雨で、水は豊富に溜まっていた。
馬の背を歩いているところでは、風は凌げた。

しかし、前方から男性二人組が歩いてくる。
挨拶すると、剣ヶ峰へ向かったが、強風であきらめたという。
かなり風が強いようだ。
実際、この日は風が強く、御鉢巡りをしている人自体が少なかった。

馬の背を抜けると、目の前に剣ヶ峰への長坂が現れる。
傾斜もかなりある。
地質は、火山灰的な砂である。
足をとられながら登るが、かなりきつい。

なんとか、剣ヶ峰の登頂に成功し、ここで写真を撮らないわけにはいかんと思い、撮影した。
今回の唯一の思い出である。

剣ヶ峰頂上にて
FUJI003剣ヶ峰標識
剣ヶ峰では観測所の中から出てきたおじさんと話した。
8月一杯まで、ここにいるらしい。
剣ヶ峰の奥に、展望台らしきものがあるが、狭いところを入っても何も見えなかった。
ただ、風が強いだけであった。
(天気がよければ、アルプス方面を望めるのだろうが)

剣ヶ峰を後にし、西安河原をゆっくりと下っていく。
風がゆるくなり、すこし楽になる。
しかし、周りは霧のようなガスでまったく見えなかった。
大内院を右手に見つつ、道を進む。

途中出会った登山客は1組だけであった。

久須志神社に戻るころには風がまた強くなり始めていた。

08:30 久須志神社到着
風にために、やや時間がかかったが、無事に戻ってくることができた。
この頃になると、頂上へ着く人々の数も多くなっていた。
天候はやや回復し、日差しも差していた。

久須志神社に御参りし、下山することにする。

下山道は山口屋の先のトイレから分岐している。

道幅の広い、砂地の下山道を降りていく。
久々の下りとなり、足取りもかなり軽い。

降り始めて20、30分で気温が上がってくる。
山頂部で着ていた防寒具がかなり暑くなってくる。
登山道には、まだまだ、人が連なっている。
昨日歩いてきた道は、こんな風になっていたのだなあと、再確認しながら降りる。
下山もそれはそれで、体力が必要で、ひたすら長い坂を下りていくので、半ば飽きてくる。
それに、足場が砂地で不安定なので、走り出すと、止まるのが難しいし、足をすぐにとられてしまう。
尻餅などには注意が必要である。

途中、登山道と交わっているところがあり、自衛隊の方々とすれ違った。

しかし、須走口や御殿場口への下山道には「砂走り」なるものが用意されていて
単純な下山道に変化を与えてくれている。

砂走りは、これまでの下山道とは違い、より深い砂地になる。
足の甲部分までめりこんでしまうので、スパッツ等をつけていないと、砂が靴内に
侵入してしまうだろう。

また砂走りというぐらいなので、慣れると、リズム良く、走るように降りていくことができる。
砂もふかふかしていて、気持ちよい。
黒々とした砂の道は一直線に下に向かっている。

砂走りもかなり長い。

11:00 砂走五合目 吉野家通過
砂走りの終着点に吉野家という休憩所がある。
おじさんとおばさんが露天のような形でアイス等を売っていた。
下山のホッとした気持をうまく捉えてる。

脇目もふらずに、新五合目を目指した。

ここからは、また樹林の中を進む。
雨はもう完全にあがっていて、日差しが強く、真夏に戻ってきた感じだった。
しかし、雲はまだまだ厚い。

樹林の中では、昨日来の雨がまだ残っており、草木の匂いとあいまって、いい匂いがした。

この時間帯からも、まだまだ登ってくる登山者はたくさんいた。

11:30 新五合目到着
五合目は多くの登山客で、溢れかえっていた。
ほとんどの人が、これから登るのであろう。
私は、出発時に金剛杖をお借りした、おばあちゃんの店、菊屋を訪ねた。
おばあちゃんは忙しそうに、土産物を売っていた。
杖を返すと、うれしそうに、よく帰ってきたねと労っていただいた。
そして、名物シイタケ茶を振舞ってくれた。
シイタケの出汁が出た、本当においしいお茶であった。

12:00 新五合目 バス出発
五合目でゆっくりすることなく、御殿場駅を目指し、帰りのバスに乗る。
乗車している客は私以外に、中国人2人しかいない。

バスは御殿場駅に向けて、走りだしたが、途中、登山客の車の路上駐車の数に驚いた。
長蛇の列とはまさにこのことだろう。
まだまだ続いていきそうな勢いであった。
やはり、夏場の富士は人気があるのだなあと思った。

バスの中では、冷房が効いていたこともあり、案の定、熟睡してしまった。

気がつくと御殿場駅だった。

13:00 御殿場駅到着
次の御殿場線の出発まで時間があったので、駅のラーメン屋に入る。
これが意外とうまかった。
新・御殿場ラーメン ジャンジャン軒
13:44の電車まで、御殿場駅周辺を散策してみる。
これといって特にないのだが、駅の反対側は高速バスのターミナルであった。
また、御殿場アウトレットへの定期バスも出ているようで、この日もたくさんの人が待っていた。

御殿場駅には人は少なく、ゆっくりとした夏の午後の時間が流れていた。

13:44 御殿場線 乗車
御殿場線は2両編成なので、並んでいないと座席に座ることはできない。
というか、結構人が待っている。
ただし、そこまで混んでいなかったので、立っていてるのは数人だけだった。
電車の隅に立ち、買込んで来たビールを開ける。
車内も冷えていて、ビールも冷えていて、混んでなくて、鄙びた風景を見ながら飲むのは最高であった。

しかし、この電車、後方の車掌室が変であった。
1ブロックの座席を幕のようなもので仕切ってあり、そこに車掌室と大きく書かれている。
なぜ、あのような仕様になっているのか、本当に不思議であった。

結局、国府津まで、立って帰った。
結構な時間、立ちっ放しであった。
東海道線に乗換え、15時半くらいには自宅に着いていた。

やはり下界は、うだるような暑さであった。
迷わず、台風の残りを求めて、海へ走った。(笑
オンショアの波で、あまりよくありませんでしたが、サイズがそこそこで楽しむことができた。

登山後のサーフィン!ボロボロになるまで遊びつくした感じがして、心地よかった。

大自然の脅威と懐の深さを満喫した夏の日となった。

だが、下山してすぐに思ったのが、この夏の間にもう一度登る!ということであった。
やはり、御来光を見てみたいと思ったのであった。
リベンジを心に誓い、床に就いた。


日本百名山 其之参 浅間山 後編

12:25 浅間山火山口 出発

火山口から岩だらけの道を下りシェルターを横切る。

シェルターは風雨のせいか、なんのせいか知らないが、鉄柱が曲がっていた。

付近は登山客の一時休憩所となっており、皮肉なことにシェルター裏がトイレとなっているようである。

くれぐれも、マナーは守ってほしい。


前掛山へは、雄大な稜線を登っていく。浅間山と外輪山の間に、恐竜の背骨のような尾根が切り立っており

その上を歩いていく。

前掛山頂上は、下から見ると、遥か彼方に見えるが、実際には登りも緩やかで片道30分もあれば

余裕で着いてしまう。

尾根伝いの道は非常に見晴らしがよく、トーミの頭、草すべり、牙山、剣ヶ峰、小諸市街が見渡せる。

一方浅間山側を見てみると、数千年もの時間が悠然と流れているような感じがする。

大地は荒涼としているが、そこには自然の息吹を感じる。

折れ曲がったシェルター  前掛山への道

ASA055シェルター ASA056前掛山への道

12:50 前掛山到着

前掛山山頂で、眺望を楽しむ。

何度も書くが、この日は天気がよく、ほどよく眺望が利く。

前掛山山頂標識                 前掛山への道

ASA057前掛山山頂 ASA058前掛山尾根

前掛山から剣ヶ峰を見下ろす          前掛山から石尊山方面を望む
ASA059前掛山から剣ヶ峰を見下ろす ASA060前掛山から石尊山方面

前掛山から小諸市街を望む
ASA061前掛山から小諸市街

13:00 前掛山出発

下山の途に着く。

登ってきた道を引き返す。下りはやはり、楽である。

途中、シェルターの前あたりで、年配のハイカーたちに出会う。

登山道を横切るように、鎮座し、記念写真を撮れという。

こういう事態は本当に勘弁してほしい。あまりにもひどいと思う。。


浅間山山道を下っていく。下りといえど、足腰に負担が直接かかってくる。

一瞬、雨雲が空を覆い、数秒だけ雨水をもたらした。

しかし、雲の陰が過ぎると、瞬く間に、晴れ上がった。

前掛山からの下り道               浅間山からの下山道
ASA062前掛山からの下り ASA063下山道からの賽の河原

13:50 前掛山登山口通過

途中下山客は疎らであった。みなさん、既に下山しているのだろうか?

頂上付近ではあれだけ、たくさんの人々がいたのだが。。少し不審に思った。


ここから、湯の平に向かい、草深い道を進む。

湯の平への道(雑木林)               湯の平分岐

ASA064湯ノ平高原の林間 ASA066湯ノ平口2

日差しは幾分和らいだ。

数人のハイカーたちとすれ違う。いづれも大人数だ。

おそらく火山館のほうへ向かうと思われる。


14:05 草すべり分岐通過

草すべりへの道                 草すべり手前からトーミの頭を望む
ASA067湯ノ平口から草すべりへの道 ASA068草すべりからトーミの頭を望む

途中、牙山方面                 草すべりとトーミの頭
ASA069途中牙山方面 ASA070草すべりとトーミの頭


草すべりへの道を進むが、想像していた道ではなかった。

地図上では登りが非常に険しいと書いていたが、まるで見上げるようなのぼりであった。

この旅の最後に、この登りは非常にきつかった。


途中牙山方面をみると、水墨画のような山と谷のコントラストが楽しめたり、「草すべり」と言われる

くらい、草が生い茂っていて、緑の絨毯を思わせる光景に目が和む。が、きつい。


登っては休憩し、登っては休憩をし、何とか中腹までくるが、さらに先は長そうである。

まさに、草すべり・・・。


草すべり 中腹                   草すべりから見上げる
ASA071草すべり中腹 ASA072中腹から見上げる

草すべりの登山道は急なのに加え、細い。しかし、綺麗に整備されている(草が刈り取られている)。

九十九折のような山道を登っていくと、途中から岩肌がむき出しになってくる。

頭上にはトーミの頭が大きく迫出しており、登る者を威嚇するようである。

道は本当にあそこまで続いているのか・・・と不安になるくらい。

さらに、岩場なので、滑落の危険が常に付きまとう。

頂上間近からトーミの頭を望む
ASA074頂上間近からトーミの頭


15:00 トーミの頭到着

やっとのことで、頭の上に到着。

岩場に腰を下ろし、上がってきた道を見ながら、水を飲む。

冷たくて、疲労した体には染入る。

行動食も少し摂る。


この頭の上で、一人の老人が双眼鏡を片手に、山々を見下ろしている。

おもむろに話しかけてきたので、話を聞いてみると、浅間山にいる野生の熊を観察しているとのことだった。

双眼鏡を使うと、よく見えるそうで、かなりの熊がまだ、いるらしい。

この前も遭遇したと、言っていた。。


15:10 トーミの頭出発

休憩を終え、再出発する。

あとは車坂峠へ戻るだけである。

日は既に傾いているため、涼しくなってきていた。


途中、往路とは異なる「中コース」を選択した。

林の中を入ってくコースだ。

時間が少し短いため、中コースを選択したという理由もある。

分岐は槍ノ鞘に登る前の途中にある。


コース分岐標識
ASA075表コース、中コース分岐

中コースは静かな山林を進んでいく。

途中ガレ場のようなところもあるが、総じて、歩きやすい道であった。

コース終盤でもあり、心地よい疲れが襲ってきていた。


中コース山道1                  中コース山道2
ASA076中コース山道 ASA077中コース山道2

中コースゴール                  登山口の神社
ASA078中コース出口 ASA079登山口神社


15:50 車坂峠到着

下に降りてくると、やはり、暑い。

蝉の声が、現実に戻してくれる。

中コースのゴールは、表コースとは異なる。

このため、表コースで記録している入山者の数と下山者の数が異なると思うのだが・・。


登山神社に無事を報告して、駐車場へ戻った。


高峰高原ホテルの「こまくさの湯」につかり、疲れを取った。

温泉はやはり良い。汗を流せるだけでなく、翌日の疲労の残り方が全然違う。


温泉は人も少なく、ほぼ貸切であった。


外に出ると、あたりはすっかり、夏の夕暮れであった。

高原特有の澄んだ空気に包まれ、ほのぼのとした気持ちで、帰路についた。


タイムテーブル
チェックポイント名 到着時刻 出発時刻 所要時間
車坂峠 - 07:40 -
トーミの頭 08:30 08:30 00:50
黒斑山 09:00 09:00 00:30
蛇骨岳 09:30 09:40 00:30
仙人岳 09:54 10:00 00:14
鋸岳(Jバンド) 10:20 10:20 00:20
賽ノ河原 10:36 10:36 00:16
前掛山登山口 10:50 11:00 00:14
シェルター前 11:50 12:00 00:50
浅間山火山口 12:20 12:25 00:20
前掛山 12:50 13:00 00:25
シェルター前 13:15 13:15 00:15
前掛山登山口 13:50 13:50 00:35
草すべり分岐 14:05 14:05 00:15
トーミの頭 15:00 15:10 00:55
表・中コース分岐 15:20 15:20 00:10
車坂峠 16:00 - 00:40