「裸の木蓮」
相田みつを
いま庭の木蓮は裸です
枯葉一枚枝に残しておりません
余分なものはみんな落として
完全な裸です
しかしよく見ると
それぞれの枝の先に
固い蕾(つぼみ)を一ツずつ
持っています
木蓮にとって
一番大事なもの
ただ一ツをしっかりと
守りながら
冬の天を仰いで
キゼンと立っています
キゼンということばを
独占したかのように
裸の木蓮は
寒風の中に
ただ黙って立っています
一気に冷え込み、外を歩くと骨の芯から痛むような寒さを感じる。
そんな中、固い蕾を持った木蓮を発見!いつもこの時期なんだな。
余分なものを全部落とし、じっと寒さに耐えながら春を待つ。
一番大事なものだけをしっかり守りながら、冬の空を仰ぎなが毅然と立っているその姿に毎回見とれてしまう。
大切なものは、次世代へつなぐ愛。そして希望。
まさに木蓮の花言葉は木蓮の在り方を示しているようだ。「自然への愛」「忍耐」「崇高」「威厳」「持続性」。
年に一度美しい花を咲かせる花々は、花を咲かせる前の姿が、本来最も美しいのかもしれない。冬の寒さに耐え、幹いっぱいにエネルギーを蓄え、その時をひたむきに待つ姿は静かに美しい。
人間もこうありたいもの。


