裸の木蓮 〜 相田みつを
いま庭の木蓮は裸です
枯葉一枚枝に残しておりません
余分なものはみんな落として
完全な裸です
しかしよく見ると
それぞれの枝の先に
固い蕾(つぼみ)を一ツずつ
持っています
木蓮にとって
一番大事なもの
ただ一ツをしっかりと
守りながら
冬の天を仰いで
キゼンと立っています
キゼンということばを
独占したかのように
裸の木蓮は
寒風の中に
ただ黙って立っています
ここ、実家近所でも裸の木蓮を見かけた。ミラノでもそうだが、開花し、豪華絢爛な木蓮よりも裸の木蓮を見るたび、足を止め、見上げてしまう。そして裸の木蓮の毅然さと言うか直向きさに心打たれる。そこには計り知れない強さを感じる。
ところで、木蓮の花言葉は「自然への愛」「崇高」「持続性」「忍耐」「威厳」。
やはり、真に美しいものとは、強さを秘めているのだろう。じっと耐え、エネルギーを蓄え、新たに花咲く時期を直向きに待つ。
それは「希望」であり、希望は困難に立ち向かうための「粘り強さ」の源でもあろう。
以前にも書いたが、人間も、何事も受け入れる柔軟さと、それでもなお自分を失わない信念と覚悟を持ち合わせていたいもの。そのためには、どんな逆境に接しようと、心眼で物事を見極め、冷静に判断し、切り抜けることが重要だ。
裸の木蓮。
それは隠れた生命力。春の息吹のメッセージのようだ。


