タータ日記 〜 その58 スキンシップとオキシトシン 2 | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで30年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

 

 
乳児の天使のような微笑みには癒される。
 
そして、抱っこした時の感覚はなんとも言えない。とりわけ目があった時に話しかけてこられる幸福感はなんとも言えない。
 
老人ホームで赤ちゃんの人形で「ドールセラピー」が行われるのも擬似体験であろう。
 
赤ちゃん人形によって呼び覚まされた「世話する意欲」や「愛情の記憶」が能動的な行動を生み出し、 他者との会話や笑顔を生み出すと言う。
 
また、赤ちゃん人形を抱いた人を見る周囲の人の目も変わるのだそうだ。例えば家族や近所の人、入居者同士、病院や施設のスタッフとも自然とコミュニケーションが生まれ、感情を表すことができるようになったお年よりや周囲の方々との間には、互いの気持ちを通じ合わせる機会がより多くなると言う。
 
話は基、どんなに多忙な生活で、心が引き裂かれそうな時があっても、乳児との接触は心が癒され、瞬間でも平安な心でいられるのが有難い。
 
シッター先のツインズは日々成長し、特に保育園へ行き出してから、人を叩いたり、蹴ったり、唾をかけることまで覚えてきた。意味わからずパルラッチ(汚い言葉)を発した時は目が点になったが...。
 
もうすぐ生後8ヶ月になる三男は私が到着すると声を上げて喜び、ずり這いで寄ってくる。私が抱っこをしてくれる人だと言うことを知っているからだ。
 
もちろんママさん、パパさんは親だから大好きだろうが、それほど抱っこをしてくれない。また、一度上のツインズをおんぶしてあげたら、気に入られてしまい、それからはことあるごとに"omb! omb!"と抱きついてくる。
 
一度、フランス在住のパパさんの妹が帰国し、実家に戻る前にシッター先に一泊していったのだが、その時もツインズは"omb! omb!"と叔母に当たる妹さんにせがんだが、何?と聞くので、説明し「私のせいなのよ…」と言って笑った。
 
抱っこをすると、抱き癖がつく。抱っこをすると、腰が痛くなる。(それは確かに!)授乳も胸が崩れる、といって薬で母乳を止める人もいる。非常に残念だと思う。子供の一生からしたら、抱っこできる時期なんぞ一瞬なのに。
 
子供は抱っこされる心地よさ、誰かに愛され支えられる安心感を感じながら人として育っていくのではないかと思う。一人では生きていけない「人」に必要な「信頼関係」を築くことを学ぶ。

 

ところで、先日ママさんとパパさんが二人で夕食に出かけるというので、3人子供たちを夜の10時過ぎまで見ていた。普段9時になるとベッドに入ると聞いていたが、長男は9時近くなるとあくびをしだし、一人でベッドに向かった。次男も促したが、なかなかいうことを聞かず、三男を抱いたままベッドに連れて行くと、数冊絵本を持ってきて、これ読んで!といった。

 

その後、「T子、ここgrattare(なでなで)して!」と言って、首の後ろを抑え、次にここ!と言って胸に手をあて、「T子、歌を歌って!」「T子、手を握って!」ととにかくスキンシップを求めてきた。生まれた時から双子の兄弟がいて、両親の愛情を分けてきたが、今年は弟が生まれ、保育園に通い始め、心的不安でいっぱいなのだろう?甘えたいサインなのだろう。
 
「大丈夫だよ。」「そばにいるよ。」
 
ツインズのベビーベッドの間には、夜になるとパパさんが簡易ベッドを置いて一緒に寝ているようだが、そのベッドがあったので、そこに上るのは悪いと思ったが、あまりにも私を呼ぶので三男を抱きながら、簡易ベッドに座り込んで、次男の手を握り、歌を歌った。
 
簡易ベッドに三男を横にさせ、長男の背中をたたいたら、うっとうしい!というように腕を振りほどかれ、一人で寝てしまうという次男とは対照的。
 
結局、次男は寝付くまで、私の名前を呼んでいたが、最後まで抱っこしていた三男は、なかなか寝てくれなかった。苦笑
 
考えてみれば、「手当て」という言葉ある。痛いところに手を当てて、痛みを和らげる。不安や緊張を感じる時でも手を触れてて気持ちを落ち着かせる。そうやって、手を当てて、自分自身を癒していることは多いのではないだろうか。また、心を許せる人に手で触れたり、その人から優しく触れられたりすることでリラックスしたり、幸福感に包まれたりすることもあるだろう。
 
心で感じる安心感が脳から幸せホルモンとして、オキシトシンが分泌される。
 

研究によれば、脳がもっとも発達する生後一年ほどの「赤ちゃん期」にオキシトシンの影響を十分に受けることが重要なんだそうだ。オキシトシンが出やすい脳になり、ストレス耐性ができる、他人に対して親近感が持てるなど、人間関係を豊かにするという。

 

小さいころから「気持ちいい」というポジティブな感情は、心の発育上、とても大切なこと。
 

以前も書いたけれど、スキンシップは子育ての基本。肌のふれあいはタータも癒される。きついけどいい仕事だと思う。(とは言え、今日三男がいきなりぐずり始め、抱っこをすれば眠るがベッドに置くと大泣きするので、ほとんど抱っこしていた。案の定午後から発熱...流石に腰痛だ!)