障害者の所得保障には、どんなものがある?
“障害者の方はどうやって生活しているの?”
健常者は、この事について、通常の日常生活の中では殆どの方が考えていないのではないだろうか?
今回は、そこに焦点を当ててみたいと思います。
現在、障害者の方の生活のための所得保障の方法には、次の3つがあります。
①公的扶助(生活保護)を受ける
②社会手当を受ける
③年金(含、障害年金)を受ける
それぞれが全く別の制度として存在しているわけですが、次に各制度の概要を見てみましょう。
①公的扶助(生活保護)は、社会保障制度の中でも公的年金(含、障害年金)と共に大きな役割を果たしている。
実態は、最低生活のできない貧困者に対する国の生活保障という趣旨で、無拠出の救貧措置(最後のセーフティーネット)というべきものである。
従って、そこには恥辱・差別的な風潮もみられ、更に受給の際に資力調査や扶養義務履行の照会なども行なわれるため、問題意識や運用方法の改善等の指摘もでている。
②社会手当は、公的扶助と同じで拠出の必要がなく、公的年金と同様資力調査のない、言わば①公的扶助(生活保護)と③年金の中間の形態といえる。
社会手当には、児童手当、特別児童扶養手当、障害児福祉手当、障害基礎年金(拠出制障害年金の受給できない20歳以上の者)などがあり、その費用負担は国・都道府県・市区町村がそれぞれの立場で負担をしている。
③年金(ここでは障害年金)は、ILO(国際労働機関)によると『一家を支える者の老齢、死亡、廃疾の場合に、社会保障制度から長期間に渡って定期的に支払われる現金給付の総称』と定義されている。具体的には、我が国の年金制度は、全国民に共通した「国民年金」をベースに、「被用者年金」、「企業年金」の3階建の形をとっているわけです。
従来の公的年金制度は、民間会社の従業員、自営業者、公務員等の業種ごとに別制度であったが、国民年金法の改正により、全国民共通の基礎年金制度が導入され、民間会社の従業員を対象とした厚生年金や公務員等を対象とする共済年金は、その上乗せ制度として報酬比例の年金を支給する制度に再編されて現在に至っている。
その中で、20歳以上60歳未満の人が、所得額、職業の有無、職種、国籍、性別などに関係なく加入しなくてはならないのが国民年金制度である。
障害者については、老齢年金、障害年金、遺族年金の3種類のうちの障害年金が対象となるが、障害をもつ人の経済的自立を図る上で非常に重要な役割を果たしており、障害基礎年金と障害厚生年金(障害共済年金)の2つがある。
以上、障害者の方の生活のための3つの所得保障の方法についてみてきたが、受給のためにはそれぞれ要件・手続等があり、前週も記したとおり、黙っていては貰えるものも貰えなくなることになってしまいます。
特に重い障害の場合には、ご本人はもちろん、ご家族の皆様のご協力が必要となるでしょう。また、手続に当たってはわかり難く面倒なことが多いため、専門家に依頼する方法を検討することも必要でしょう。
長期的な生活保障、人間の尊厳などに着目して考えると、公的年金(含、障害年金)制度の充実を図ることが重要と思うわけですが、実際には、年金額が生活保護基準額より少ない、無年金者(含、障害者)の存在がある、どんな制度があるか知らない、手続がわかり難い等の根の深い課題が多く、一般社会の中に周知させる方法を含め、行政の対応を見守りながら誰もが積極的に意見の出せる社会を作っていきましょう!
( 大 鷲 )
障害年金をめぐる誤解(躁うつ病の事例から)
長い間、躁うつ病で苦しんできたある女性が、障害年金を申請したいと主治医に話したところ、返ってきた言葉は次のようなものだったそうです。
「働かないでお金をもらうと、働く意欲がなくなる。私は何人もそういう人を見てきた」
「あなたよりお金に困っている人がたくさんいる」
「家族やまわりに頼りなさい」
「障害年金をもらうと”私は働けない”という烙印を押すことになる」
「あなたよりお年寄りに年金をあげたい」
ここまで極端でないにしろ、こういったご相談を受けることは、めずらしくありません。
これらの言葉は明らかに誤解です。
障害年金は、老齢年金や遺族年金と同じ公的年金です。
保険料を支払い(一部例外もありますが)、給付を受ける「保険」ですので、要件に該当すれば、受給する当然の権利があります。
この女性は病前、とても真面目で几帳面、そして明るい性格だったようです。
大学を卒業し、とある大手企業に就職。
長時間残業が続く中で心身のバランスを崩し、半年ほど我慢した後、心療内科を受診しましたが、その後も会社には受診や服薬のことをひた隠しにし、それまでと同様に働き続け、ある日突然、限界が来たのです。
休職と復職を繰り返すたびに病状が悪化し、ついに復職できぬまま退職することになってしまいました。
彼女には、支えてくれるご家族がいますから、そういった点では、その医師の言うように、少しだけ恵まれているのかもしれません。
でも、彼女は長い間、ずっと自分を責め続けています。
家族に食費を入れることもできない、少しは家のことをしたくても症状が重くて何もできない、ひとりで病院に行くことすらできず、生活の全てを家族に頼らざるを得ない。
そんな生活の中で彼女が考えたことは、障害年金を受給することで、少しでも家族の負担を減らしたいということでした。
ご家族は、彼女が元気にさえなってくれればそれでいい、けれども、それで少しは彼女の気持ちが楽になるのなら・・・そう考えられたようです。
誰よりも治りたいと願っているのも、誰よりも「働きたい」と願っているのも、まぎれもなくご本人です。
働かないで楽してお金をもらいたいなどという気持ちは微塵もないはずです。
彼女やご家族と何度も話をしてきて、それを痛いほど感じていますし、障害年金に該当するほどの重度のうつ病や躁うつ病は、それほど生易しいものではありません。
障害年金のことからは少し離れますが、自分を責め続けている彼女に、「あなたは何ひとつ悪くない、悪いのは病気なのだ」というメッセージを伝え続けました。
それから、私がとても信頼している機関の心理療法を何度か勧めてみました。
これまでカウンセリングや復職支援のディケアを含め、さまざまな治療を受けてきた彼女、心理療法といっても最初は懐疑的でしたが、最後には、「少しだけ状態が良くなったら行ってみようと思います」と笑顔で話してくれました。
障害年金を受給することで、少しは気持ちが楽になって、ゆっくり療養しながら、少しずつ少しずつ、生きることの楽しさを取り戻してくれることを、心から祈っています。
そしていつか、元気になった彼女から連絡が来ることを、いつまでも待っていようと思っています(^-^)
【追記】
本人が特定されないよう、内容は一部デフォルメしてあります。
ですが、医師の言葉はそのまま掲載しました。
(加賀)