普段なら間違いなく購入しない本です(大変失礼)
どうしても出先で時間をつぶさないといけなくなり
スマホのギガも残り少なめだったので、近くにあった古書店で購入しました。
読みたかった本がことごとくそのお店にはなく・・・
場所柄か、エッジの立った奇抜な本ばかりで、作者も、誰??という人ばかり。
全く知らない人の知らない作品を購入するリスクより
・知っている作者
・知っている作品
・映画版を見た
以上の3点からこちらを選択しました。
※作者に怒られそうですが・・・。
感想:
★★★☆☆
思ってたよりも悪くなく、スイスイ読めました。
映画版を事前に見ていたからかもしれませんが・・・。
映画版は途中からみたので、前半部分は小説から知り
なるほど、伏線もそれなりにあったんだなと。
超、簡略した起承転結ストーリー(ネタバレあり)
↓
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【起】 田舎に住んでる主人公は、行為中に相手を殴るという異常な性癖をもつ父親と、それを受け入れる若い愛人と3人で暮らしてる。
母親は早くに離婚して近所で魚屋を営んでいる。
主人公には1個上の彼女がおり、お互い初めてのまま一線を越える。
【承】 主人公は、いつか自分も父親のように、行為中彼女に手をあげてしまうんではないかと、自分の「血」を不安に思う。
若い愛人は父親の子供を妊娠する、しかも産むらしい。しかし父親に黙って、出ていくつもりだと主人公にだけ伝える。
【転】 ある日、主人公は行為中に彼女の首をしめてしまう。今度やったら殺すといわれ、しばらく距離が空いてしまうが
近所のお祭りの日に会う約束をする。愛人は家を出てしまった。探し回る父は、神社にいた主人公の彼女に暴行する。
【結】 暴行を知り殺意が芽生える主人公と彼女は、まず主人公の母を訪ねる。母は父親を殺す。
運悪く父親の遺体は発見され、母親は逮捕される。主人公と彼女はなんとか続いているが、その先はどうなるかわからない。
かなり端折っています。
作中に頻出する、下記の3つが繋がっておわります。
「汚れた川」「母親の義手」「神社」
なんとも後味の悪い作品ですが、最後の最後、お母さんが逮捕される際
神社の鳥居をよけるシーンが、おお、上手い!と思いました。
あと、父親を刺した義手が引っ掛かって、遺体が海に流れず見つかってしまうあたり。
下水道が完備されていないので、街のあらゆる汚物が流れる川に父の遺体を流すという母親の怨念と
救いようがないクズで下衆な、殺されて当然の父親の最後まで腐った執念。
遺体が見つからなければ証拠不十分で起訴されなかったかもしれないのに。
また、やはりどんな理由があれど人を殺めるのは罪であるというメッセージも含まれるというか。
全体的に性的描写がエグイので、人にはお勧めできないかな。
男性が書いた本!という感じです。だからこそのエグさ。ですが決して官能小説ではないです。
主人公が父親のように、女性に暴力を振るってしまうのは「血」といった遺伝性のものよりも
『絶対にこうなってしまう』という、母親からと、自分自身との暗示によるものも大きいのではと感じました。
映画版は、ラストをだいぶ改変していたんですね。
小説の方が個人的には、畳みかけるような終焉でいいかも。
映画版では
・愛人のおなかの子は父親の子供ではなく、別の男の子供(浮気相手)であると告白する
・魚屋は彼女が引き継いでいる
となっています。特に後者はいらないかなーと思いました。
前者も、行間からは分かる内容だし。
収録されている
『第三紀層の魚』は未読です。
巻末の瀬戸内寂聴との対談は読みました。
源氏物語の考察は面白かったのですが
対談といういうより、田中先生が瀬戸内寂聴のお話をひたすら聞かされているかんじ。
お説教も入っており、「対談」はもっと平等であって欲しいと思いました。