ことしは「不穏な年明け」となりました。
元旦に石川県能登地方で震度7の地震が発生。
亡くなられた方々にはお悔やみを申し上げるとともに、
被災された方々にお見舞いを申し上げます。
地震の翌日の2日(火)には羽田空港で日本航空機と海上保安庁の航空機が衝突しました。
さらに翌日の3日(水)夜には、走行中のJR山手線の車内で
女性が刃物で乗客を切りつけて3人が大けがを負い、病院に搬送されています。
そして6日(土)にはJR品川駅で職業不詳の男が
60代の女性をホームから線路に突き落とし、殺人未遂の疑いで逮捕されています。
年の初めから胸騒ぎがするようなことが続いたため
落ち着いて音楽を聴くということもしていませんでした。
きょうになって平穏に暮らせることのありがたさが身に染みてきて、
「祈り」や「希望」を感じさせるものが聴きたくなってきました。
取り出したのがチャーリー・ヘイデン(b)~エグベルト・ジスモンチ(g,p)による
ライブ盤「イン・モントリオール」です。
ヘイデンとジスモンチはヤン・ガルバレイク(sax)を加えた3人で
70年代から活動をしており、互いのことはよく理解していたと思われます。
マジコ/チャーリー・ヘイデン~ヤン・ガルバレク~エグベルト・ジスモンチ | スロウ・ボートのジャズ日誌 (ameblo.jp)
1989年のライブを収録したこの作品ではデュオに挑んでいるわけですが、
2人の交感がものすごく深い。
アメリカ出身のヘイデンはモダン・ジャズはもちろん、
フリーやカントリー、ゴスペル、ラテンまで幅広い関心を持つプレイヤー。
ブラジル生まれのジスモンチはマルチ奏者であり、
ロック、ジャズ、クラシック、民族音楽とジャンルを問わない異才です。
この2人が組むと音楽の「型」は関係なく、
目指す方向に向かって柔軟にビジョンを共有することに集中しているのが分かります。
年初から予想外のことが相次ぎ、人間同士の信頼が問われているいま、
耳を傾けてみましょう。
1989年7月6日、カナダ・モントリオール国際ジャズフェスティバルでのライブ録音。
Charlie Haden(double-bass)
Egberto Gismonti(g,p)
③First Song
チャーリー・ヘイデンのオリジナル曲。
ギターとベースのデュオで演奏されています。
愁いが漂うテーマをジスモンチがスパニッシュ・ギターを思わせる音色で奏でます。
その深い響きと、旋律の2周目でダイナミックな音量で迫る
熱量のある演奏は彼ならではだと思います。
続いてヘイデンのソロ。
重厚な低音を響かせることで、この曲の持つ悲しみが際立ってきます。
ジスモンチが旋律に沿ったシンプルなバッキングをする中で、
次第にヘイデンのベースに熱がこもり、3分20秒ほどのところでは
ジスモンチとヘイデンが共にテーマを交錯させているようにも聴こえます。
2人の「静かな熱気」が張り詰めている様が分かります。
最後はジスモンチがテーマに戻り、再びダイナミックな音量差をつけて
演奏しているのが、何か切実な「祈り」に通じるようにも思います。
④Palhaço
ジスモンチとG.E.Carneiroによる曲。
ここではジスモンチがピアノを弾いていますが、これが素晴らしい。
澄んでいながら、どこか地に足がついているというか
「きれいさ」では終わらない匂いのあるピアノです。
曲のタイトルはポルトガル語で「道化師」ということだそうですが、
なるほど、どこか軽やかで伸び伸びとした曲です。
まずテーマとソロをジスモンチが演奏。
ジスモンチはソロの後半、力を込めて不協和音にもなりかねない勢いで
ピアノをフルに鳴らすのですが、
前向きな響きを聴くと、何か世界を祝福したくなるような気持ちになってきます。
続いてヘイデンのソロ。
大らかに受け止めるようなゆったりとしたフレーズの後、
細かく跳ね回るような音の連打があるのは、道化師をイメージしたからでしょうか。
これを受けてジスモンチは再びスケールの大きなピアノで応え、
力強いフレーズを余裕を持って繰り出します。
最後は2人が次第に音量を下げて静寂の世界へ。
動と静が共存した見事な演奏です。
この他、⑨Don Quixote の2人が一体となった緊張と躍動感のある世界も聴きものです。
きょう、街中を歩いていたら成人式の写真撮影をしたと思われる
華やかな晴れ着姿の女性たちを見かけました。
人々の成長を心から祝えるような環境のありがたさを感じました。
天災は避けられないですし、どこか希望を持ちにくい世の中にはなっていますが、
人間には何事かを成し遂げられるパワーがあるし、成長することができる。
そこを信じて、この1年のスタートを切りたいと思います。


