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スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

ことしは「不穏な年明け」となりました。

元旦に石川県能登地方で震度7の地震が発生。

亡くなられた方々にはお悔やみを申し上げるとともに、

被災された方々にお見舞いを申し上げます。


地震の翌日の2日(火)には羽田空港で日本航空機と海上保安庁の航空機が衝突しました。

さらに翌日の3日(水)夜には、走行中のJR山手線の車内で

女性が刃物で乗客を切りつけて3人が大けがを負い、病院に搬送されています。

そして6日(土)にはJR品川駅で職業不詳の男が

60代の女性をホームから線路に突き落とし、殺人未遂の疑いで逮捕されています。

 

年の初めから胸騒ぎがするようなことが続いたため

落ち着いて音楽を聴くということもしていませんでした。

きょうになって平穏に暮らせることのありがたさが身に染みてきて、

「祈り」や「希望」を感じさせるものが聴きたくなってきました。

取り出したのがチャーリー・ヘイデン(b)~エグベルト・ジスモンチ(g,p)による

ライブ盤「イン・モントリオール」です。

 

ヘイデンとジスモンチはヤン・ガルバレイク(sax)を加えた3人で

70年代から活動をしており、互いのことはよく理解していたと思われます。
マジコ/チャーリー・ヘイデン~ヤン・ガルバレク~エグベルト・ジスモンチ | スロウ・ボートのジャズ日誌 (ameblo.jp)

 

1989年のライブを収録したこの作品ではデュオに挑んでいるわけですが、

2人の交感がものすごく深い。

アメリカ出身のヘイデンはモダン・ジャズはもちろん、

フリーやカントリー、ゴスペル、ラテンまで幅広い関心を持つプレイヤー。

ブラジル生まれのジスモンチはマルチ奏者であり、

ロック、ジャズ、クラシック、民族音楽とジャンルを問わない異才です。

この2人が組むと音楽の「型」は関係なく、

目指す方向に向かって柔軟にビジョンを共有することに集中しているのが分かります。

 

年初から予想外のことが相次ぎ、人間同士の信頼が問われているいま、

耳を傾けてみましょう。

 

1989年7月6日、カナダ・モントリオール国際ジャズフェスティバルでのライブ録音。

 

Charlie Haden(double-bass)

Egberto Gismonti(g,p)

 

③First Song

チャーリー・ヘイデンのオリジナル曲。

ギターとベースのデュオで演奏されています。

愁いが漂うテーマをジスモンチがスパニッシュ・ギターを思わせる音色で奏でます。

その深い響きと、旋律の2周目でダイナミックな音量で迫る

熱量のある演奏は彼ならではだと思います。

続いてヘイデンのソロ。

重厚な低音を響かせることで、この曲の持つ悲しみが際立ってきます。

ジスモンチが旋律に沿ったシンプルなバッキングをする中で、

次第にヘイデンのベースに熱がこもり、3分20秒ほどのところでは

ジスモンチとヘイデンが共にテーマを交錯させているようにも聴こえます。

2人の「静かな熱気」が張り詰めている様が分かります。

最後はジスモンチがテーマに戻り、再びダイナミックな音量差をつけて

演奏しているのが、何か切実な「祈り」に通じるようにも思います。

 

④Palhaço

ジスモンチとG.E.Carneiroによる曲。

ここではジスモンチがピアノを弾いていますが、これが素晴らしい。

澄んでいながら、どこか地に足がついているというか

「きれいさ」では終わらない匂いのあるピアノです。

曲のタイトルはポルトガル語で「道化師」ということだそうですが、

なるほど、どこか軽やかで伸び伸びとした曲です。

まずテーマとソロをジスモンチが演奏。

ジスモンチはソロの後半、力を込めて不協和音にもなりかねない勢いで

ピアノをフルに鳴らすのですが、

前向きな響きを聴くと、何か世界を祝福したくなるような気持ちになってきます。

続いてヘイデンのソロ。

大らかに受け止めるようなゆったりとしたフレーズの後、

細かく跳ね回るような音の連打があるのは、道化師をイメージしたからでしょうか。

これを受けてジスモンチは再びスケールの大きなピアノで応え、

力強いフレーズを余裕を持って繰り出します。

最後は2人が次第に音量を下げて静寂の世界へ。

動と静が共存した見事な演奏です。

 

この他、⑨Don Quixote の2人が一体となった緊張と躍動感のある世界も聴きものです。

 

きょう、街中を歩いていたら成人式の写真撮影をしたと思われる

華やかな晴れ着姿の女性たちを見かけました。

人々の成長を心から祝えるような環境のありがたさを感じました。

 

天災は避けられないですし、どこか希望を持ちにくい世の中にはなっていますが、

人間には何事かを成し遂げられるパワーがあるし、成長することができる。

そこを信じて、この1年のスタートを切りたいと思います。

 

本日はクリスマス・イブ。

ことしは転勤で札幌に引っ越してきたので外は雪景色。

天候ではクリスマス気分を存分に味わっています。

 

物価高に揺れたことしですが、クリスマス商戦はどうなっているのか。

今月12日の朝日新聞では「メリハリ消費」という言葉が出ていました。

プレゼントの定番であるアクセサリーでは、物価高にもかかわらず

例年より高価格帯の10~20万円の商品が好調だというのです(そごう・西武の例)。

 

担当者によると理由は「メリハリ消費」。

普段は節約していても、大切な人へのプレゼントや

「自分へのごほうび」に奮発する人が多いとのこと。

人は「勝負する時はする」ということでしょうか。

 

これを見て、クリスマスに関連したある曲を聴きたくなりました。

エラ・フィッツジェラルド(vo)とジョー・パス(g)のデュオによる

「Gee Baby Ain't I Good To You」です。

 

この曲は1929年にドン・レッドマンがアンディ・ラザフと共作したものです。

歌詞の内容がなかなかユニークで、こんな一節があります。

 

Bought you a fur coat for Christmas
A diamond ring
A big Cadillac car, and everything
What makes me treat you the way that I do?
Gee baby, ain't I good to you?

 

クリスマスに毛皮のコート、

それにダイヤの指輪、果ては大きなキャデラック(!)まで

きみが望むすべてのものを買ったというのに・・・

どうして僕はここまでやっているんだ?

それでも僕じゃダメだっていうのかい?

(拙訳)

 

ここまでして報われなかったなら、本当に悲しいですね・・・。

エラは地の底から這いあがって来るかのような大きなスケールと

彼女らしいチャーミングさを盛り込んで見事に歌い上げています。

 

エラとパスがデュオで共演したのは、

この曲が収録されているアルバム「テイク・ラブ・イージー」が初めてでした。

しかし、初の取り組みとは全く思えないほど2人の息が合い

完全に一体化した音楽になっています。

曲の全てがバラッドで、クリスマスの夜にちょっと温かい気持ちになりたい時、

お薦めできる1枚です。

 

1973年8月28日、ロサンゼルスで録音。

 

Ella Fitzgerald(vo)

Joe Pass(g)

 

パスは曲によってエレクトリックとアコースティックの

ギターを使い分けていて、これがいい効果を生んでいます。

 

⑦Gee Baby Ain't I Good To You

パスはエレクトリック・ギターを使っていますが

訥々としたタッチがあたかもアコースティックのような

親密な雰囲気を生み出しています。

パスのゆったりとしたイントロに導かれて

エラのブルージーな歌声が入る。

最初のコーラスではダイヤの指輪を贈っても満たされない思いを物憂げに、

少し儚さもあるトーンで語りかけます。

バックのパスは振り子のような心地よい「揺れ」を感じさせ、

この歌のユーモラスな部分を支えています。

続くパスのソロはゆったりさは維持しつつ、

彼らしい「どこにいくか分からない」フレーズを織り交ぜて

この曲に「ピシっとした」緊張感をもたらします。

パスのソロを受けて、エラがスケールを増して再登場。

大きな声量で「どうしてダメなんだ・・・」と迫ってきます。

特に Love makes me treat you the way that I do?

と歌詞を変えている一節は愛情が人を狂わせるところを

力強くもちょっと可笑しく描き出しています。

クリスマス時期、こういう人もいるんですかね・・・

 

このほかヴァースから始まる⑤Lush Lifeは

パスのアコースティック・ギターが光っています。

また、⑨I Want To Talk About You のエラの貫禄もいいです。

 

それにしても「君の望むことをしたのに・・・」というすれ違いは

減税を訴えて国民に全く響かなかった岸田首相にも重なりますね。

国民の本当のニーズを考えないでバラマキをしようとした首相には

この歌を聴いてちょっと反省してもらいたいような・・・。

来年はピシッとした1年になってほしいものです。

 

自民党安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題、

歴史に残る疑獄事件になりそうな勢いです。

 

安倍派の松野官房長官、高木国会対策委員長、世耕参議院幹事長、

萩生田政務調査会長、西村経済産業大臣といった幹部を含め、

大半の議員が政治資金パーティーでキックバックを受け、

政治資金収支報告書に収入として記載していない疑いが出てきています。

 

これを見て私は

「やっと"安倍政治”が終わろうとしている」と思いました。

このブログでもいろいろ書いてきましたが、

安倍首相が残した負の遺産として「モラルハザード」があります。

 

自分と違う意見の持ち主は「追放」する人事、

国の借金を増やすことにためらいのない経済政策、

「加計学園」を含む不正の隠ぺい、

論理として成立していない国会答弁で居直る姿勢・・・

数え上げればキリがありませんが、

「まじめな人が報われない」安倍政治が長期に渡ったことで

この国が劣化したことは間違いありません。

 

2020年9月に第2次安倍政権が終わりを迎えてから3年以上。

時間がかかりましたし、検察による捜査という形ではありますが

ようやく安倍政権の「驕り」が終焉を迎えようとしています。

私たちはあのような不正のオンパレードを行ってきた首相を

第1次政権も加えると憲政史上、最も長く在任させてしまったことを

猛省しなくてはいけません。

 

そして、安倍政治の「負の遺産」として

「新しいリーダーがいない」ことがあります。

今回のことで安倍派の有力者は疑惑を持つ人ばかりだということが分かり、

岸田首相はリーダーシップを果たせないことも見えてきました。

広く自民党を眺めてみても「次」がいません。

 

本当は安倍氏や岸田首相のような「世襲政治家」ではない人が

出てきて欲しいところです。

今回の政治資金問題が政治を広く国民に開かれたものに変える

きっかけになればいいのですが。

 

「新しいリーダー」による活性化・・・

そんなことを考えて1枚のアルバムを取り出しました。

オルガンのメルヴィン・ラインがリーダーを務める「クラスマスターズ」です。

 

メルヴィン・ライン(1936-2013)はアメリカ・インディアナポリスの出身。

彼の名前を広く知らしめたのはウェス・モンゴメリー(g)との共演でしょう。

派手さはないものの、淀みのないラインが聴いていて気持ちがいい。

そしてウェスとの共演でもそうでしたが、一緒に組む相手を引き立てる

空間づくりが非常にうまいのです。

 

そんな彼が1999年にレコーディングした「クラスマスターズ」では

次代を担う若手を集めました。

テナーサックスのエリック・アレキサンダー、ギターのピーター・バーンスタインは

共に当時30代前半。

ドラムのケニー・ワシントンは40歳を過ぎたところでした。

60代となっていたラインは後輩たちに敬意を込めて「マスター」と位置づけ

がっぷりと組むことにしたのでしょう。

結果は非常に生きのいい秀作となりました。

 

1999年12月19日の録音。

 

Melvin Rhyne(hammond B3 organ)

Eric Alexander(ts)

Peter Bernstein(g)

Kenny Washington(ds)

Daniel G. Sadownick(per、1,3,9のみ)

 

③What Are You Doing the Rest of Your Life

ミシェル・ルグランが作曲したナンバー。

ロマンチックな曲なのですが、

ここではパーカッションを加え

非常に明るくポジティブなイメージで演奏しています。

まずノリのいいリズムに乗ってライン~アレキサンダーによって

テーマが提示されます。

このオルガン~テナーによるリレーというアイディアが非常に効いていて

曲の中にある喜びの部分を2人で高め合っているように聴こえます。

短いリズム・ブレイクを入れてアレキサンダーのソロへ。

男性的でありながら流れるような得意の節回しで

バックのオルガンが作る浮遊感のある音の中を進んでいきます。

簡潔でありながらしっかり構成しているところもさすがです。

続いてラインのソロ。

オルガンには音の最後が「抜ける」といいますか、

ピアノにあるくっきりとした音色がありません。

しかし、ここでのラインは短いフレーズを巧妙に繰り出すことで

オルガンの音に存在感を出すことに成功しています。

この堂々としたところも彼の魅力と言えるでしょう。

この後、短いバーンスタインのソロを挟んで

再びテーマに戻っていきますが、

最後にラインが縦横なソロで締めくくっています

(フェードアウトがちょっと惜しい・・・・)。

 

⑥Well You Needn't

おなじみセロニアス・モンクのナンバー。

この「ゴツゴツした」ナンバーを非常に「ゴキゲンに」演奏しています。

アレキサンダーのテナーでテーマが示され、そのままソロへ。

最初は何と、アレキサンダーとケニー・ワシントンのデュオ(!)です。

激しく煽るドラムに対してアレキサンダーが感情を露わにして咆哮し、

そのままリズム隊が加わってのソロに至る流れが圧巻です。

ここまでバリバリと吹いてもらうと気持ちいですね。

続いてピーター・バーンスタインのソロ。

彼も流麗なラインを持つプレーヤーですが、

ここではモンクの曲を意識してか、

時にどこに向かうのか分からない不穏なフレーズを混ぜてきます。

そしてリーダーであるラインのソロ。

ここでは低音を巧みに使ってグルーブを出してきます。

不気味にも聴こえる低音が続く展開はとてもスリリング。

最後はテナー・ギター・オルガンとドラムによる小節交換。

こちらも名人芸という感じです。

 

他にもノリのいい④Stanley's Shuffle や

キレのある⑩What Is This Thing Called Love など聴き応えがあります。

 

国会閉会後、松野官房長官を含め政権の幹部の何人かが更迭されると報じられています。

「不正が許されない」という当たり前のことがやっと始まろうとしている。

「安倍政治」による「モラルハザード」からの回復を急ぎましょう。