テイク・ラヴ・イージー/エラ・フィッツジェラルド&ジョー・パス | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

本日はクリスマス・イブ。

ことしは転勤で札幌に引っ越してきたので外は雪景色。

天候ではクリスマス気分を存分に味わっています。

 

物価高に揺れたことしですが、クリスマス商戦はどうなっているのか。

今月12日の朝日新聞では「メリハリ消費」という言葉が出ていました。

プレゼントの定番であるアクセサリーでは、物価高にもかかわらず

例年より高価格帯の10~20万円の商品が好調だというのです(そごう・西武の例)。

 

担当者によると理由は「メリハリ消費」。

普段は節約していても、大切な人へのプレゼントや

「自分へのごほうび」に奮発する人が多いとのこと。

人は「勝負する時はする」ということでしょうか。

 

これを見て、クリスマスに関連したある曲を聴きたくなりました。

エラ・フィッツジェラルド(vo)とジョー・パス(g)のデュオによる

「Gee Baby Ain't I Good To You」です。

 

この曲は1929年にドン・レッドマンがアンディ・ラザフと共作したものです。

歌詞の内容がなかなかユニークで、こんな一節があります。

 

Bought you a fur coat for Christmas
A diamond ring
A big Cadillac car, and everything
What makes me treat you the way that I do?
Gee baby, ain't I good to you?

 

クリスマスに毛皮のコート、

それにダイヤの指輪、果ては大きなキャデラック(!)まで

きみが望むすべてのものを買ったというのに・・・

どうして僕はここまでやっているんだ?

それでも僕じゃダメだっていうのかい?

(拙訳)

 

ここまでして報われなかったなら、本当に悲しいですね・・・。

エラは地の底から這いあがって来るかのような大きなスケールと

彼女らしいチャーミングさを盛り込んで見事に歌い上げています。

 

エラとパスがデュオで共演したのは、

この曲が収録されているアルバム「テイク・ラブ・イージー」が初めてでした。

しかし、初の取り組みとは全く思えないほど2人の息が合い

完全に一体化した音楽になっています。

曲の全てがバラッドで、クリスマスの夜にちょっと温かい気持ちになりたい時、

お薦めできる1枚です。

 

1973年8月28日、ロサンゼルスで録音。

 

Ella Fitzgerald(vo)

Joe Pass(g)

 

パスは曲によってエレクトリックとアコースティックの

ギターを使い分けていて、これがいい効果を生んでいます。

 

⑦Gee Baby Ain't I Good To You

パスはエレクトリック・ギターを使っていますが

訥々としたタッチがあたかもアコースティックのような

親密な雰囲気を生み出しています。

パスのゆったりとしたイントロに導かれて

エラのブルージーな歌声が入る。

最初のコーラスではダイヤの指輪を贈っても満たされない思いを物憂げに、

少し儚さもあるトーンで語りかけます。

バックのパスは振り子のような心地よい「揺れ」を感じさせ、

この歌のユーモラスな部分を支えています。

続くパスのソロはゆったりさは維持しつつ、

彼らしい「どこにいくか分からない」フレーズを織り交ぜて

この曲に「ピシっとした」緊張感をもたらします。

パスのソロを受けて、エラがスケールを増して再登場。

大きな声量で「どうしてダメなんだ・・・」と迫ってきます。

特に Love makes me treat you the way that I do?

と歌詞を変えている一節は愛情が人を狂わせるところを

力強くもちょっと可笑しく描き出しています。

クリスマス時期、こういう人もいるんですかね・・・

 

このほかヴァースから始まる⑤Lush Lifeは

パスのアコースティック・ギターが光っています。

また、⑨I Want To Talk About You のエラの貫禄もいいです。

 

それにしても「君の望むことをしたのに・・・」というすれ違いは

減税を訴えて国民に全く響かなかった岸田首相にも重なりますね。

国民の本当のニーズを考えないでバラマキをしようとした首相には

この歌を聴いてちょっと反省してもらいたいような・・・。

来年はピシッとした1年になってほしいものです。