クラスマスターズ/メルヴィン・ライン・カルテット | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

自民党安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題、

歴史に残る疑獄事件になりそうな勢いです。

 

安倍派の松野官房長官、高木国会対策委員長、世耕参議院幹事長、

萩生田政務調査会長、西村経済産業大臣といった幹部を含め、

大半の議員が政治資金パーティーでキックバックを受け、

政治資金収支報告書に収入として記載していない疑いが出てきています。

 

これを見て私は

「やっと"安倍政治”が終わろうとしている」と思いました。

このブログでもいろいろ書いてきましたが、

安倍首相が残した負の遺産として「モラルハザード」があります。

 

自分と違う意見の持ち主は「追放」する人事、

国の借金を増やすことにためらいのない経済政策、

「加計学園」を含む不正の隠ぺい、

論理として成立していない国会答弁で居直る姿勢・・・

数え上げればキリがありませんが、

「まじめな人が報われない」安倍政治が長期に渡ったことで

この国が劣化したことは間違いありません。

 

2020年9月に第2次安倍政権が終わりを迎えてから3年以上。

時間がかかりましたし、検察による捜査という形ではありますが

ようやく安倍政権の「驕り」が終焉を迎えようとしています。

私たちはあのような不正のオンパレードを行ってきた首相を

第1次政権も加えると憲政史上、最も長く在任させてしまったことを

猛省しなくてはいけません。

 

そして、安倍政治の「負の遺産」として

「新しいリーダーがいない」ことがあります。

今回のことで安倍派の有力者は疑惑を持つ人ばかりだということが分かり、

岸田首相はリーダーシップを果たせないことも見えてきました。

広く自民党を眺めてみても「次」がいません。

 

本当は安倍氏や岸田首相のような「世襲政治家」ではない人が

出てきて欲しいところです。

今回の政治資金問題が政治を広く国民に開かれたものに変える

きっかけになればいいのですが。

 

「新しいリーダー」による活性化・・・

そんなことを考えて1枚のアルバムを取り出しました。

オルガンのメルヴィン・ラインがリーダーを務める「クラスマスターズ」です。

 

メルヴィン・ライン(1936-2013)はアメリカ・インディアナポリスの出身。

彼の名前を広く知らしめたのはウェス・モンゴメリー(g)との共演でしょう。

派手さはないものの、淀みのないラインが聴いていて気持ちがいい。

そしてウェスとの共演でもそうでしたが、一緒に組む相手を引き立てる

空間づくりが非常にうまいのです。

 

そんな彼が1999年にレコーディングした「クラスマスターズ」では

次代を担う若手を集めました。

テナーサックスのエリック・アレキサンダー、ギターのピーター・バーンスタインは

共に当時30代前半。

ドラムのケニー・ワシントンは40歳を過ぎたところでした。

60代となっていたラインは後輩たちに敬意を込めて「マスター」と位置づけ

がっぷりと組むことにしたのでしょう。

結果は非常に生きのいい秀作となりました。

 

1999年12月19日の録音。

 

Melvin Rhyne(hammond B3 organ)

Eric Alexander(ts)

Peter Bernstein(g)

Kenny Washington(ds)

Daniel G. Sadownick(per、1,3,9のみ)

 

③What Are You Doing the Rest of Your Life

ミシェル・ルグランが作曲したナンバー。

ロマンチックな曲なのですが、

ここではパーカッションを加え

非常に明るくポジティブなイメージで演奏しています。

まずノリのいいリズムに乗ってライン~アレキサンダーによって

テーマが提示されます。

このオルガン~テナーによるリレーというアイディアが非常に効いていて

曲の中にある喜びの部分を2人で高め合っているように聴こえます。

短いリズム・ブレイクを入れてアレキサンダーのソロへ。

男性的でありながら流れるような得意の節回しで

バックのオルガンが作る浮遊感のある音の中を進んでいきます。

簡潔でありながらしっかり構成しているところもさすがです。

続いてラインのソロ。

オルガンには音の最後が「抜ける」といいますか、

ピアノにあるくっきりとした音色がありません。

しかし、ここでのラインは短いフレーズを巧妙に繰り出すことで

オルガンの音に存在感を出すことに成功しています。

この堂々としたところも彼の魅力と言えるでしょう。

この後、短いバーンスタインのソロを挟んで

再びテーマに戻っていきますが、

最後にラインが縦横なソロで締めくくっています

(フェードアウトがちょっと惜しい・・・・)。

 

⑥Well You Needn't

おなじみセロニアス・モンクのナンバー。

この「ゴツゴツした」ナンバーを非常に「ゴキゲンに」演奏しています。

アレキサンダーのテナーでテーマが示され、そのままソロへ。

最初は何と、アレキサンダーとケニー・ワシントンのデュオ(!)です。

激しく煽るドラムに対してアレキサンダーが感情を露わにして咆哮し、

そのままリズム隊が加わってのソロに至る流れが圧巻です。

ここまでバリバリと吹いてもらうと気持ちいですね。

続いてピーター・バーンスタインのソロ。

彼も流麗なラインを持つプレーヤーですが、

ここではモンクの曲を意識してか、

時にどこに向かうのか分からない不穏なフレーズを混ぜてきます。

そしてリーダーであるラインのソロ。

ここでは低音を巧みに使ってグルーブを出してきます。

不気味にも聴こえる低音が続く展開はとてもスリリング。

最後はテナー・ギター・オルガンとドラムによる小節交換。

こちらも名人芸という感じです。

 

他にもノリのいい④Stanley's Shuffle や

キレのある⑩What Is This Thing Called Love など聴き応えがあります。

 

国会閉会後、松野官房長官を含め政権の幹部の何人かが更迭されると報じられています。

「不正が許されない」という当たり前のことがやっと始まろうとしている。

「安倍政治」による「モラルハザード」からの回復を急ぎましょう。