夢 出会い 魔性 -185ページ目

夢 出会い 魔性

日記だったり思い出だったり願望だったり不倫だったり。




さっきまでご主人さまと2時間くらいお電話。


何度も
何度も


ご主人さまはちゃんと「○子」ってわたしの名前を呼んでくれた。


今まで名前で呼ばれること、殆どなかったのです。


素直に(嬉しいなあ)って思った。





ラ/ブホ/テルは水槽みたいだ



…なんて、いつだったか思ったことがある。


閉ざされた空間でゆらゆら水の中のように揺れて、もがいて。
息が苦しくて。





「なに」

「……」

「なんだよ」

「…すき」

「ああ(笑)」

「わたし…いつも困ってた」

「ん?困る?」

「…うん。○○さん、『好き』って言われるの好きじゃなさそうだったから」

「…ああ」

「だから、『なに?』って聞かれるの、困ってた」

「なにか言いたそうな顔するから」

「…どう返事していいか判らなくて、いつも困ってた」

「好きって言いたかったのか」

「…うん」


ショリショリショリ

湯舟に浸かったご主人さまのお腹の上に跨がるように座って、
いつもみたいにおヒゲを剃った。


「他の人もヒゲ剃りする?」

「しないよ(笑)」

「そうなの?…そっか」

「今、自分だけ…って思ったろ(笑)」

「思った(笑)でもわたしが特別だとは思わないよ」

「ん?」

「違うことで、その女性としかしない事もあるんだろうな~と思った」

「…んー…あるかも知れないけど…思い付かないなあ」

「うん(笑)剃れたよ」


おヒゲを剃り終えて、そのままご主人さまの身体に抱き着いてく。

顔を覗き込んで、キスをして、抱きしめて。


「…少し太った?」

「言われたあ!太った。3キロくらい。急に太ったの」

「あはは」

「デブは嫌?」

「デブじゃないだろ、普通くらいだよ。前は内臓が無いのかと思ってた(笑)」

「…やっぱり太ったのバレちゃったか…」

「判るよ。どれだけ裸を見てると思ってんの」

「…うん(笑)」


また抱き着いて、キスして。
ご主人さまは意地悪そうにわたしのお腹を摘んだりした。


「摘まないで(笑)」

「わはは」

「洗う?」

「ああ」


湯舟から上がって、ご主人さまはお風呂椅子に座る。

わんわんはご主人さまの髪をシャワーで濡らして洗ってゆく。

それから身体も洗ってゆく。



「他の人…」

「ん?」

「つるつるに剃った人、いた?」

「いないよ(笑)」

「ア/ナルセ/ックスは?」

「してないよ」


聞いたから何になるんだろう。

少しだけそう思ったけど、止まらなかった。

ご主人さまの身体を洗い終えてから、自分の身体も洗った。

また2人で湯舟に浸かった。


いつもはお風呂でもお口でさせて貰ってたけど、
この日はそのまま上がって、タオルを身体に巻き付けた。





夜の高速道路

隣にはご主人さま





「…あ」

「ん?」

「……つまらないこと」

「なに?」

「みんな…○○さんのこと、なんて呼んでるの?」




みんな…4人の女性たち

身篭った女性…わたしより1つ年下。

人妻…年は聞いてない。
旦那さんと仲良し。他にも男性がいる人。
他の男性とハプ/バーに行ったりする人。

わたしより15歳年下の若い女の子。

そして、わたし。



みんな、たぶん3年以上くらいのお付き合い。



「1人は○○君か○○さんだな」

名前に『君付け』か『さん付け』

「1人は■■さん」

名字に『さん付け』

「1人はクマさん」

あだ名呼びね。




「判った。ハプ/バーの人が名字呼びで、若い女の子がクマさんね」

「当たり(笑)」

……身篭った人は…わたしと同じ呼び方ね、判った。

判った。



「○○さんはみんなをなんて呼んでたの?」

「…んー」

「呼ばないの?」

「だなあ」


わたしも殆ど呼ばれたことが無い。

時々ワンワンと呼ばれるけど、殆どは「そっちが」とか、そんな感じ。



「わたしのことも名前で読んだのって何回か、だもんね(笑)」

「呼ばれたかった?」

「前に呼ばれたいって言ったよ」

「ああ…あの時は…図々しいと思ったんだよ」

「知ってる。あの時そう言ってたもん」



あの時…まだ知り合って数ヶ月だった。

私はずっと○○さんって名前で呼んでいたのに、呼ばれたことが無くて寂しく思ってた。

それを言うと、名前呼びは慣れてないって言われた。
あと、図々しい気がして…って。

▲▲さんって名字で呼ぶのはよそよそしい気がする。
でも○子って名前を呼ぶのは図々しい気がする。
そう言われたのだ。



「今なら○子って呼んでも図々しいと思わないけど」

「うん」

「呼び方を変えるって難しいんだよ」

「判るよ」


子供が、パパママからお父さんお母さんに変えるのも難しいもの。


「意識するから不自然な呼び方になるし」

「いま○子って言った時は不自然じゃなかったよ」

「そうか?」

「うん(笑)」

「○子(笑)」



くすぐったい。

わたし、ずっと○子って呼ばれたかった。

いま呼んでくれてる。

嬉しくて嬉しくて

…ちょっと悲しい。





嬉しくて、ちょっとだけ悲しい。




すぐ出掛ける



……ご主人さまはそう言った。

今夜はラ/ブホにお泊りさせてくれる…って、ことだろう。


エレベーターのボタンを押して、扉が開くのを待った。

2人で乗り込んで、閉まるボタンを押した。

扉が閉じると、狭い空間に2人きり。




誰もいない
誰からも見えない
ご主人さましか見えない




吸い寄せられるみたいに、ご主人さまの口唇に触れる。

開いた口唇と口唇の隙間から舌を絡め合わせてゆく。

ご主人さまに抱き寄せられて背中がしなった。

少しだけ、声が漏れてく。

んっ、んんっ、って。


カタ…と軽い振動を感じて、慌ててご主人さまから体を離した。


「どうした?」

「あ……止まったかと…」


エレベーターはまだ止まって無かった。

でも、それからすぐに止まって扉が開いた。

知らない男の人が扉の向こう側に立ってる。

ご主人さまと視線が絡んだ。
くすくす2人で笑った。

男の人が乗り込んで扉が閉じてから「セーフ」と言った。

ご主人さまは笑ってた。





ご主人さまのお部屋のドアが開いて、荷物を持って入ろうとした時。


『部屋じゃ嫌なの?』


海でそう聞かれた意味……やっと判った。

わたし…このお部屋に入れるの…きっと今日が最後だ。

もう入れないんだ、この部屋には。

今はご主人さま1人のお部屋。

でも



でもきっと、遠くない未来に。

このお部屋は『ご主人さま個人の部屋』ではなく『家庭』になるのだ。

わたしが踏み込むことは許されない場所になる。



それに気付いたら、急に身の置場が無くなったように感じた。

ご主人さまがパソコンの電源を入れてる。

ラ/ブホ/テルの検索してる。


わたし…ラ/ブホに泊まりたいってお願いしたの…正解だったのかも知れない。


「伊勢神宮は混むから」

「うん」

「今日のうちに移動しておこう」

「うん」


ラ/ブホ/テルが多そうな場所を検索してからお部屋を後にした。

たぶん…もう入ることは無いお部屋。


たぶん

きっと。




下りのエレベーターの中でもキスをした。

貪るみたいに。

もっと欲しい

もっと欲しい

欲には終わりがない。





欲の終わりなんて見えない




以前にご主人さまのお部屋に泊めて貰った時、ショッピングセンターに行ったのだ。

手を繋いでウィンドショッピングした。

その時にフードコートにしらす丼があって、
食べたいなーと思ったけどお腹いっぱいだった。


「しらす丼、食べる?」

「食べたいけど…お腹すいてない」

「食おう。半分ずつ」

「うん」


わんわんが食べたがってたことを知ってるご主人さまが、そう言ってくれた。

しらす丼を1つだけ頼んだ。

けっこう混んでいて、席は空いて無かった。

若い女の子と目が合うと、その子はニコッと笑って「どうぞ」と言ってくれた。

ちょびっと派手めな女の子が、相席させてくれたのだ。

すみません、と頭を下げてから席に着いた。

ご主人さまがお水を2つ持ってきてくれてる。

暑い海岸で昼寝をしていたから、ずいぶん汗をかいたのだと思う。

喉がカラカラで、一気に飲むとまたご主人さまは立ち上がってお水を持って来てくれた。

わんわんは半分くらいしらす丼を食べて、ご主人さまにハイって渡した。

ご主人さまはわんわんと目の前の女の子をチラと見比べるようにして
「おそろい」と言った。


「ん?なに?」

「いや、判らないならいい」

「?」


ご主人さまがしらす丼を食べている間、今度はわんわんがお水を取りに行った。

女の子の彼氏みたいな人が、自分の食べ物を買ってテーブルに着いてた。

ご主人さまと半分ずつのしらす丼を食べ終えて席を立った。


「何がおそろいなの?」

「入れ墨」

「さっきの子?入れてたの?」

「肩のあたりにね」


気付かなかった。
ご主人さまは気付いたんだ。
で、わんわんとおそろいだなって思ったんだ。

なんだか嬉しい。

ソフトクリームを買って車に戻った。


「ひとくち食べる?」

「食べる」

「おいしい?」

「甘い(笑)」


うん、甘いね。
甘くておいしいよ、わんわんには(笑)



「明日は伊勢神宮に行くよ」

「伊勢神宮?」

「神様にお願いしなさい、自分の将来のこと」

「わたしの?」

「よくお願いしな」


わたしの将来?

わたしの…

何を願えばいい?

離婚のこと?

いまのわたしにその気力があるか自信がない

ご主人さまとのこと?

願ってはいけない気がする

わからない

いまはなにもわからない





ご主人さまの住むマンションの前に車は停まった。

…ラ/ブホのお願いは聞き入れてもらえないんだ。


「荷物下ろすよ」

「うん」

「それはそのままでいい」


わんわんが自分の荷物を持とうとすると、ご主人さまがそれを遮った。


「すぐ出掛けるから」

「…うん」




テントや保冷バッグだけを持って、マンションの入口に向かった。