すぐ出掛ける
……ご主人さまはそう言った。
今夜はラ/ブホにお泊りさせてくれる…って、ことだろう。
エレベーターのボタンを押して、扉が開くのを待った。
2人で乗り込んで、閉まるボタンを押した。
扉が閉じると、狭い空間に2人きり。
誰もいない
誰からも見えない
ご主人さましか見えない
吸い寄せられるみたいに、ご主人さまの口唇に触れる。
開いた口唇と口唇の隙間から舌を絡め合わせてゆく。
ご主人さまに抱き寄せられて背中がしなった。
少しだけ、声が漏れてく。
んっ、んんっ、って。
カタ…と軽い振動を感じて、慌ててご主人さまから体を離した。
「どうした?」
「あ……止まったかと…」
エレベーターはまだ止まって無かった。
でも、それからすぐに止まって扉が開いた。
知らない男の人が扉の向こう側に立ってる。
ご主人さまと視線が絡んだ。
くすくす2人で笑った。
男の人が乗り込んで扉が閉じてから「セーフ」と言った。
ご主人さまは笑ってた。
ご主人さまのお部屋のドアが開いて、荷物を持って入ろうとした時。
『部屋じゃ嫌なの?』
海でそう聞かれた意味……やっと判った。
わたし…このお部屋に入れるの…きっと今日が最後だ。
もう入れないんだ、この部屋には。
今はご主人さま1人のお部屋。
でも
でもきっと、遠くない未来に。
このお部屋は『ご主人さま個人の部屋』ではなく『家庭』になるのだ。
わたしが踏み込むことは許されない場所になる。
それに気付いたら、急に身の置場が無くなったように感じた。
ご主人さまがパソコンの電源を入れてる。
ラ/ブホ/テルの検索してる。
わたし…ラ/ブホに泊まりたいってお願いしたの…正解だったのかも知れない。
「伊勢神宮は混むから」
「うん」
「今日のうちに移動しておこう」
「うん」
ラ/ブホ/テルが多そうな場所を検索してからお部屋を後にした。
たぶん…もう入ることは無いお部屋。
たぶん
きっと。
下りのエレベーターの中でもキスをした。
貪るみたいに。
もっと欲しい
もっと欲しい
欲には終わりがない。
欲の終わりなんて見えない