夢 出会い 魔性 -178ページ目

夢 出会い 魔性

日記だったり思い出だったり願望だったり不倫だったり。




布がフワリと浮いた。


おさい銭箱の向こう側…門の間に下がっていた布が、ふわっと浮いた。





おさい銭箱の向こう側に門があって、そこには麻のような布がカーテンみたいに下がってる。

その奥は見えない。


他の人たちがお参りしている間、その布に気づかなかった。

ずっと下がったままになってたから、特に(布だ)って意識しなかったんだと思う。


(あ…見えた)


布がめくれ上がって、ずっと奥のほうまで見える。


(風だ)


風が吹いて、布が浮き上がったんだ。

ハタハタ高い位置ではためき続けてる。


(ずっと下がったままだったのに…)


少しボケッとしてから、ハッとしておさい銭を投げた。

2回頭を下げて
2回手を打って


「手を合わせてちゃ駄目だよ。仏じゃないんだから」

「あ…うん」


手を打ったまま、少し合わせて立ってたみたい。

ご主人さまに注意されて、慌ててもう1度頭を下げた。

頭の中はまっしろ。

何もお願いしてない。


それに気付いて、
(元気な赤ちゃん)
とだけ、心の中で言葉にした。

それ以外のことはグチャグチャで、とても形にならなかったのだ。



頭を上げて一歩後ろにさがった。


浮き上がり続けてた布が、またフワリと降りてきた。


(…閉じた)


そう思った時に、隣でご主人さまが
「何か降りて来たな」と言って笑った。


「…うん…びっくりした…」

「ちゃんとお願いしたか?」

「うん…ううん…なんか…迷いだらけで…」

「駄目じゃん」

「…うん」





せっかく神様が開いてくれたのに…わたし駄目だなあ…って思った。




伊勢神宮は激混み


…じゃなかったけど、やっぱり当たり前みたいに混んでた。

駐車場を探すのが大変な程度には、混んでた。



伊勢神宮にたどり着くまで、商店街みたいなとこをとことこ歩いた。

伊勢うどん屋さんなんかがたくさんある。


暑いけど、時々手を繋いだりしながら歩いた。

…この手を放したくないなあ…って思ってた。


同時に
(反対側の手は、常に知らない女性と繋がってるんだ)って思った。

見たこともない女の人。

今まではきっと、知らなかっただけで、
わたしも彼女もそれぞれに握ったり放したりしてた、手。


これからはずっと、その女の人と繋いだままになるんだなあ…

なんとなく、そんなことを考えながらご主人さまの手を握って歩いていた。



伊勢神宮に着いて、杓でお水を汲んで、口と両手のお清めをした。


それから五十鈴川の河原まで少し降りて、
そこでも両手を浸してお清めをした。

知らなかったけど、神様の川らしい。


「行くよ」

「はい」


ご主人さまが少し前を歩いてく。

後ろからご主人さまの手を取りかけて、止めた。


(…この手は…)


神様に祈るためにお清めした手だ。

神様に頭を下げるまで、このままでいなきゃいけない。

神様はきっと、そんな小さなことは気にしないと思うけれど、
それでも神様に祈るための手なんだ。



ご主人さまの手を握りかけてから引っ込めて、
グーに握り締めて、ご主人さまの少し後ろを歩いてった。


ずっと木陰。

足元は砂利。


無神論者の自覚があるのに、なんだろう…圧倒される空気。

わたし…気圧されてるんだ。

まだ何を祈ったらいいのか判らない。

迷いながら神様に近付いてゆく。

ご主人さまの手は握れない。

迷いだらけ。

こんな気持ちで神様の前に立てるの?

立つことが許されるの?

赦されるの?





階段を上がって、前のほうの人が頭を下げている様子が見て取れた。

おさい銭を投げて
ニ礼ニ拍一礼。

みんな何を願っているんだろう。



少しずつ前に進んでく。

何人が頭を下げているところを見たんだろう、わたし。



あ…わたしの番。




今年のお正月にご主人さまと初詣して、
引いたおみくじに書いてあった。


『恋愛 再出発』


その時はふざけて
「恋愛再出発だって~、あははー」と言ってた。

漠然と、夫と離婚してご主人さまと恋愛するぜウヒヒと思ってた。





やっと意味が判った。

おみくじを引いた時は、私はもうとっくにご主人さまに恋愛していたのだし。

(ご主人さま『と』じゃないな、たぶん)

ご主人さまへの恋愛感情が再出発する…ってことか。

何かが起こって、でもまだ好きでいて。

1つ乗り越えて(あくまで私が)
またご主人さまへの気持ちが再出発するってことか。



なんだかスコンと落ちた気がする。
あー…納得…って(笑)



再出発する恋なら、きっとこのまま続くんだろう。

いいことなのか悪いことなのか判らないけど



きっと続くんだろうなあ





前の日と同じような快晴でものすごく暑い。

夏の太陽は遠慮って言葉を知らないみたいだ。


「伊勢神宮混んでるかなあ」

「たぶん。まあ、この時間なら大丈夫だろ」

「…うん」

「ちゃんとお願いしなよ」


わたし…何をお願いすればいい?

まだ何も判ってない。
思い付かない。



「…誰でも良かったって、ホント?」

「ん?」

「…子供」

「誰でもっていうか、この人とならいいかって思える相手としかしてないから(笑)」

「ああ…うん」

「一年後だったら○子が1番危なかった(笑)」

「わたし?なんで?」

「○子と1番シテるから(笑)」

「そうなの?月一か…二ヶ月に1回くらいしか会ってないよね?」

「他の人もそんなもんだし」

「うん」

「それに、○子は会うと2、3日続くことが多いだろ」

「あ…うん」

「だから回数は1番多い(笑)あと○子は」

「ん?」

「鉄砲玉だ。離婚したら今より来るだろ?(笑)」

「あはは」

「で、もっと回数が増える、と(笑)」


○子が好きだから、なんて理由じゃないとこが、妙なリアリティ。

(一年後…かあ)

なんで1年待っててくれなかったの?

…そんな安っぽい言葉が頭の隅を掠めて行った。

(待つ理由が無いから、に決まってんじゃん)

だって、わたしじゃなくても良かったんだから。



「わたし…焦ってた」

「え?」

「早く離婚しなきゃって思ってた。○○さんが子供欲しがってるの知ってたから」

「ああ(笑)」

「時間が無いって思ってた。自分の年も○○さんの年も」

「うん」

「作りたいって思っても、すぐ出来るか判らない…生理が来るたびに無駄にしてる気持ちだった」

「…そういう決断は、1年くらいでしなきゃ」


何を根拠にご主人さまが1年って言ったのかは判らない。

知り合ってもう少しで3年。

…ようするに、決断が遅いって言われたのだ。
それだけは判った。




いろんなことが頭の奥を過ぎって行った。


夫が全く帰ってこないこと

夫のきまぐれで夫の実家の自営業をしょったこと

慣れない書類を寝ずになんとかしてたこと

赤字をどうしていけばいいか判らなかったこと

(夫は赤字でいいとしか言ってなかったのだ)

なんとかしなきゃって頑張ってるのに暴言を浴びせられたこと

言いたいことを言うだけで、自分は徹夜でゲーム三昧

あまり言わないようにしてたけど、時々はポロ…と不満が零れた。

そのたびに「なんで離婚しないの?」と聞かれた。

「それ1つだけで十分離婚原因だろう」とも言われた。

でも離婚しなかったのは、わたしだ。

きっとジワジワと我慢に慣れていて、
もう限界だ…というポイントを見失っていたんだ。




(…それでも…)

離婚しなかったのは、わたしなんだよなあ…