布がフワリと浮いた。
おさい銭箱の向こう側…門の間に下がっていた布が、ふわっと浮いた。
おさい銭箱の向こう側に門があって、そこには麻のような布がカーテンみたいに下がってる。
その奥は見えない。
他の人たちがお参りしている間、その布に気づかなかった。
ずっと下がったままになってたから、特に(布だ)って意識しなかったんだと思う。
(あ…見えた)
布がめくれ上がって、ずっと奥のほうまで見える。
(風だ)
風が吹いて、布が浮き上がったんだ。
ハタハタ高い位置ではためき続けてる。
(ずっと下がったままだったのに…)
少しボケッとしてから、ハッとしておさい銭を投げた。
2回頭を下げて
2回手を打って
「手を合わせてちゃ駄目だよ。仏じゃないんだから」
「あ…うん」
手を打ったまま、少し合わせて立ってたみたい。
ご主人さまに注意されて、慌ててもう1度頭を下げた。
頭の中はまっしろ。
何もお願いしてない。
それに気付いて、
(元気な赤ちゃん)
とだけ、心の中で言葉にした。
それ以外のことはグチャグチャで、とても形にならなかったのだ。
頭を上げて一歩後ろにさがった。
浮き上がり続けてた布が、またフワリと降りてきた。
(…閉じた)
そう思った時に、隣でご主人さまが
「何か降りて来たな」と言って笑った。
「…うん…びっくりした…」
「ちゃんとお願いしたか?」
「うん…ううん…なんか…迷いだらけで…」
「駄目じゃん」
「…うん」
せっかく神様が開いてくれたのに…わたし駄目だなあ…って思った。