船が動き始めてすぐに、ご主人さまから「開けてみな」って言われた。
ストラップのキットには貝がそのまま入ってて、
自分で貝を開けてパールをほじくり出すのだ。
「あっちで開けな」
「?」
「灰皿のとこ。水がビシャビシャ垂れるぞ(笑)」
「あ、うん(笑)」
灰皿の上で貝が入ってるパックを開いた。
開くのと同時に水がビシャビシャ派手に垂れた。
「垂れた~」
「だろ?(笑)」
甲板のベンチ…ご主人さまの隣に戻って、
貝を開いて小さいスプーンみたいなので身をほじってく。
「あ…白」
「白か?」
「白い…違う、オフホワイト。クリームがかってる」
「オフホワイトか。意味は?」
「成功、だって」
「ずいぶん曖昧だなあ(笑)」
「うん(笑)」
今のわたしにピッタリだ、と思った。
仕事、とか、愛、とかピンポイントじゃなくて、
なんだか曖昧に「成功」って。
さっき、神様の前で頭を下げた時と同じ気持ち。
「…どうやってストラップにするんだろ…」
「ほら、ここを外して開くようになってるぞ」
ご主人さまがストラップを外して、中にパールが入るように広げてくれた。
ご主人さまの手の中のキットに、ポツ…とオフホワイトのパールを置く。
それを閉じて、元のストラップの形に戻してくれるご主人さま。

嬉しくて携帯に付ける前に写真を撮った。
「あ!写真!」
「ここで撮るか(笑)」
「うん(笑)」
2人で並んで、ご主人さまが手を伸ばして、
わんわんの携帯をこっちに向けてる。
「こんな感じ?」
「えっ?わかんない、撮れるかな」
「撮る(笑)」
シャッター音がして画面を見ると、逆光で真っ黒(笑)
「これじゃダメー」
「なんだよ(笑)」
苦笑い気味のご主人さまと、もう一度並び直した。
ポロリーンとシャッターの音がする。
「今度は?」
「うん、まあまあ(笑)」
「どれ。…おお(笑)」
ご主人さまは「思いのほか爽やかだなあ」って笑ってる。
背景は海だけ。
ご主人さまは眩しそう。
わたしは嬉しそう。
ピタッて寄り添って写ってる。
もちろん美男美女じゃないけれど、
なんだかとても自然に撮れてる。
2人とも目の端がクシャッとした笑顔だ。