(『新・人間革命』第7巻より編集)
137 完
〈操舵〉 31 完
「これは、仏法の目から見れば、台湾のメンバーの信心が本物になった証拠ともいえる。
難があるからこそ正法なんだ。だから、一生成仏ができるんだ。
法律は法律として従わなければならない・・・ 、組織は解散するにしても絶対に、信心を失ってはならない。
大聖人は、『王地に生まれたる身をば従うとも・・・』と。
心まで従えられているのではないぞという、精神の自由の大宣言だよ。
台湾の同志も、この心意気で行くんだ」
「ところで、今、支部長の朱さんは何歳なのかい」
「確か、間もなく四十歳になると思います」
「そうか、勝負は七十代、八十代だよ。やがて、台湾も自由に活動できる時が必ず来る。その時のために、一歩も引くものかとの決意で、じっと耐えながら、着々と広布の土台をつくっていくことだ。
この試練に打ち勝てば、台湾の創価学会は大発展するぞ」
この九日の夜、朱の自宅に地区幹部が集い、台北警察局の立ち合いのもとに、解散を通達する会合が開かれた。
朱は、集って来たメンバーを見ると、胸を締めつけられる思いがした。
「本日、・・ここに解散いたします。これからは、組織的な活動は、一切行えないことになります・・・」
ここまで話すと、朱は言葉を詰まらせた。
この瞬間、彼の脳裏に、二カ月余り前の一月、松山空港で山本会長が語った言葉が鮮やかに蘇った。
ー 「何があっても、どんなに辛くとも、台湾の人びとの幸福のために、絶対に仏法の火を消してはならない。本当の勝負は、三十年、四十年先です。最後は必ず勝ちます」
(第七巻終了)