(『新・人間革命』第7巻より編集)
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〈操舵〉 15
代議士の額には、汗が噴き出していた。彼はそれをハンカチで拭いながら、狼狽を押し隠し、鷹揚さを装って言った。
「いやあ、実に見事な決断だ。前々から私は、山本君は見どころがある青年だと思っていたが、ますます確信がもてたよ。
頼もしいかぎりだ。また、会って話し合おうじゃないか」
ケネディとの会見は、こうして白紙に戻った。
山本伸一は、学会に迫る、政治権力の影を感じた。
彼は、代議士との会見が終わると、この”横槍”の背後に、何があるのかを考えざるを得なかった。
”多くの政治家たちは、三百万世帯を超えた創価学会に恐れをいだく一方で、自分の傘下に置いて、自在に操りたいと、考えているのであろう。
その学会の会長である自分が、政権政党の頭越しにケネディと会見することになったことが、悔しくてならないにちがいない。
彼らの本質は、嫉妬以外の何ものでもない”
そう考えると、伸一は、日本の国を動かしている政治家たちの狭量さに、情けなさを覚えた。
同時に、学会は、これからも、政治権力に、永遠に狙われ続けるであろうことを、覚悟しなければならなかった。
学会は民衆を組織し、民衆の力をもって、人類の幸福と世界の平和に実現をめざしてきた。
それゆえに、民衆を支配しようとする権力から、さまざまな圧力が加えられるのは、むしろ当然だといってよい。
二月一日の夜、山本伸一は、早稲田大学の記念講堂で、二月度の男子幹部会に出席した。
彼は、この日の講演の中で、世界の現状について言及していった。