(『新・人間革命』第7巻より編集)
120
〈操舵〉 14
山本伸一は、代議士の話が一段落すると、微笑を浮かべて、しかし、きっぱりと言った。
「お話の趣旨はよくわかりました。あなた方のご意向を尊重いたします。ケネディ大統領との会見の話は、なかったことにいたしましょう。すべて中止します。
またの機会を待つことにしましょう」
伸一の回答は、あまりにも、予想外であったのであろう。狼狽したのは、代議士の方であった。
「会見を中止する? しかし、そんなことをして、この大事な機会を逃してしまえばだね・・・」
伸一は、相手の言葉を遮って言った。
「私は、皆さん方のお力をお借りして大統領とお会いするつもりは、毛頭ありません。それでは話が違ってきます。
また、アメリカ大統領と会って、箔をつけようなどという卑しい考えも、私には全くありません。
それが政治家の方々の考え方なのかもしれませんが、甚だしい勘違いです。
私がケネディ大統領とお会いしようとしたのは、人類の平和への流れをつくりたかったからです。
東西両陣営の対話の道を開きたいからです。
そして、それが日本の国のためにもなると考えているからです。
公明会をつくったのも、民衆のための政治を実現させたいからです。現在の政権が、あまりにも民衆を度外視しているから、私たちが一石を投じたんです。
私には、公明会を使って政治権力を手に入れ、国を支配しようなどという野望めいた考えは、いっさいありません。
民衆の幸福、・・・、純粋に、一途に考え、行動しているのが創価学会です。
その学会に、私利私欲の絡んだ政治的な駆け引きは通用しません。
私は、誠実には、大誠実をもって応えます。傲慢には、・・・。邪悪には、正義をもって戦います。それが私の信条であり、信念です」