(『新・人間革命』第7巻より編集)
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〈操舵〉 13
それは、自分たちの圧力で、いつでも会見の実現もつぶしてみせるぞという、威嚇であった。
代議士は、上目遣いで彼を見て、反応をうかがいながら語っていった。
「山本君にとっては、ケネディと会うことは創価学会の会長としての箔をつけることにもなるし、社会にアピールする絶好のチャンスであることはよくわかる。
しかし、状況はあまりにも厳しい。わが党にも、外務省にも、君の対応によって、日米関係に支障をきたすようなことになっては大変だという、強い気持ちがあるからね。
だが、私は、何とか君を守りたい。学会の青年会長である君には・・・ 」
伸一は黙って聞いていたが、彼の頭は目まぐるしく回転していた。
ー この代議士の狙いは明らかだ。私に恩を着せ、それを糸口に、学会を政治的に利用しようというのであろう。
政治権力の薄汚れた手で、この純粋な学会の世界がかき回されるようなことは、絶対に避けなければならない。
しかし、この政治家の意向を無視すれば、ケネディ大統領との会見をつぶしにかかるだろう。
そうして自分たちの力を見せつけ、・・・
何度でも、自分の軍門に下れと言ってくるにちがいない。
こんな政治家たちのに付け入る隙など、与えてなるものか!
そのためには、まことに残念であるが、この際、ケネディ大統領との会見は取りやめるしかないだろう。
守るべきは学会である。私は、自分のために会おうというのではない。彼らにお願いしてまで、会わせてもらう必要はないー
伸一は、航路を急旋回させたのである。