(『新・人間革命』第7巻より編集)
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〈早春〉 24
(つづき)
ところが、人間は、ともすれば、この根本問題から目をそらして、眼前の楽しみや利害に心を奪われ、流されていってしまう。
残念なことだ。
しかし、私たちは、日蓮大聖人の仏法をたもち、地涌の菩薩の使命を自覚して、人類を救うため、広宣流布のために働いている。
最も大切な生命を、最も崇高な目的のために使う、最高の人生なんだ」
伸一は、さらに、小島寿美子に言った。
「小島さん、人生は短いよ。また、何があるかわからないし、無常なものだ。しかし、仏法という永遠常住の法に生き抜くならば、永遠の幸福の道を開くことができる。
だから、確固不動の自分をつくり、何があっても、どんなに苦しく、辛いことがあっても、生涯、広布の使命に生き抜くことだよ」
ポンペイを見学した翌二十一日の晩は、山岸政雄の家で座談会が開かれた。座談会といっても、形式を排した懇談であった。
懇談の最後に、伸一は、前年の十月に行われた第一回文化祭のシートレコードを、山岸の妻にかけてもらい、皆で聞いた。
音楽隊や鼓笛隊の奏でるクラシックや日本民謡、そして、学会歌の力強い演奏が部屋中に響き渡った。
このシートレコードを聴いているうちに、山岸夫妻も、小島寿美子も、生き生きと瞳が輝き始めた。
それを見ると、伸一は言った。
「どうだい、学会歌は元気が出るだろう。寂しくなったら、勤行のあとに、このシートレコードを聴いて、勇気を出していくんだよ。
みんなには、いつも身近にいて励ましてくれる人がいない。それが海外メンバーの大変なところだ。
(つづく)