ポンペイの遺跡を通して、人生を考える | くにまさのブログ

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    (『新・人間革命』第7巻より編集)

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 彼女の考えとしては、留学後もイタリアに残ろうとしているようであるが、絵で生計を立てていくということは並大抵のことではないからだ

 

 また、今は山岸夫妻がイタリアにいるが、仕事で赴任している彼らは、何年かすれば、日本に帰ることになる。

 

 

 そうなれば、小島が、イタリアのメンバーの中核となっていかなければならない。

 

 その時に、堅実に社会に根を張りながら、広宣流布のリーダーとして活躍していくことを、伸一は期待していたからである。

 

 そのためにも、彼女には強くなってほしかった。

 

 

 車は間もなく、ポンペイの遺跡に着いた。

 

 伸一は、路傍の石に腰を下ろすと、同行のメンバーに語り始めた。

 

 「『ポンペイ最後の日』は、人間にとって、人生にとって、何が最も大切かという、根本問題を問いかけているように思える。

 

 小説では、この世の終わりのような大惨事のなかでも、神の下の永遠の生命を信じて、従容として振る舞う、キリスト教徒オリントスの姿が描かれている

 

 実際には、当時、キリスト教は、まだ、ポンペイにはほとんど広まっていなかったようだが、リットン卿(きょう)(この小説の作者)は、

 

 オリントスの姿を通して、人生の根本問題や、本当の宗教というものの在り方を語ろうとしたのであろう。

 

 どんな人であれ、生死の苦悩から逃れることはできない。世界中から金銀財産を集めても、どんなに地位があり、権力をもっていても、この問題だけは決して解決できない。

 

 大聖人は『世間の人の恐れるものは、炎の中と剣の影とこの身の死すること』と仰せになっているが、誰でも死ぬのは怖いし、また、それほどの大事なものが生命といえる。

 

 だからこそ、その大切な生命を何のために使うのかー ここが焦点だよ。

 (つづく)