(『新・人間革命』第7巻より編集)
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〈早春〉 11
(つづき)
そうなれば、師子身中の虫であり、内部から、学会を破壊することになる。それほど、最高幹部の存在、職員の存在は、大きな影響をもつものだ。
人間は、最初は決意に燃えているが、二十年、三十年とたつうちに、どうしても惰性化していきやすい。
しかも、自分が苦労して組織をつくってきたという自負があればあるほど、慢心に陥り、ついつい組織を自分の所有物であるかのように、錯覚してしまいがちである。
すると、自分でも気づかぬうちに、後輩を押さえつけ、人材の芽を摘んでしまい、やがては、みんなから嫌われるようになる。
また、人の忠告も聞かなくなり、誰かが、真心から指摘してくれても、逆恨みし、結局は、学会に弓を引き、反逆していくことにもなりかねない。
実は、そこに、リーダーの陥りやすい魔性の落とし穴があると、私は思っている。
その自分の心と、生涯、戦い続けることが、信心であるともいえる。
だから、アメリカの中心者となり、職員になったからには、最後の最後まで清らかな信心で、初心を忘れず、会員のために、広宣流布のために、奉仕し抜いていくことだよ。
君は、世界広布のパイオニアだ。これから各国のメンバーも、正木君を一つの手本とし、君がどういう生き方をするか、見ているだろう。
責任は大きいよ」
正木は伸一の言葉に、一言一言、頷いていた。
「それでは、正木君は、・・・、すぐにアメリカに帰りなさい。
そして、アメリカ指導を続けている清原さんたちに合流し、一緒に、新しい前進の渦を全米に巻き起こしていくんだ。
それから、私は来月、ケネディ大統領に会いにワシントンに行くから、君は、二月いっぱいはワシントンにいて、三月にロサンゼルスに移るようにしてはどうだろうか」
これで、ようやくアメリカの布陣が整ったと、伸一は思った。