(『新・人間革命』第7巻より編集)
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〈早春〉 8
「ただ今の伝言に明らかのように、先生の、ドイツの皆さんへの期待はあまりにも大きい。
山本先生は、一昨年十月、ベルリンのブランデンブルク門の前に立たれた時、『三十年後には、きっとこのベルリンの壁は取り払われているだろう』と言われました。
それは、単なる未来の予測ではなく、先生のご決意でもあると思います。
そして、その先生と同じ心で、ドイツに幸福と平和の潮流を起こしていくのが皆さん方です。
今後の皆さんのご活躍を心から期待し、私のあいさつとします」
集ったメンバーは、支部結成の深い意義を感じ取っていた。
山本伸一が、パリのオルリー空港に到着したのは、一月十五日の午後十時であった。
アメリカからは、副理事長の十条潔とともに、アメリカ総支部長の正木永安が同行してきた。
空港では、十四日にロンドンからパリに入った秋月英介らの派遣メンバーや、川崎鋭治をはじめフランスのメンバーが出迎えた。
舞台をヨーロッパに移しての、海外指導の第二ラウンドの開始である。
パリのホテルに着いた伸一は、早速、秋月から、スウェーデン、西ドイツ、イギリス、フランスの報告を受けた。
その時、伸一は言った。
「明日はパリに支部を結成しますが、あわせて、ヨーロッパを総支部にしようと思う。総支部長は、川崎さんにお願いします」
「はい!」 間髪を容れず、決意のこもった、元気な声が返ってきた。
翌十六日の午後一時からは、ヨーロッパ各国の代表も参加して、パリ支部の結成大会が行われることになっていたのである。