(『新・人間革命』第6巻より編集)
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〈若鷲〉 25
「では、このあと質問会にしよう。聞きたいことがあったら聞きなさい」
勢いよく数人の手があがった。質問の多くは、今、学んだ「御義口伝」に関するものであった。
何人かの質問のあと、この春、一橋大学を卒業し、本部の海外局に勤務している増山久が尋ねた。
「本日の講義でも、肉体と精神とは一体であり、色心不二(しきしんふに)であることをお話しくださいましたが、死後の生命の場合、色心不二については、どのように考えれば、よろしいのでしょうか」
理屈が好きな学生部員らしい質問といえた。
伸一は、参加者全員に語りかけるように言った。
「死の問題をどうとらえるかは、極めて重大なテーマです。
私も会長に就任してから、死後の生命について、御書に照らし、経文に照らして、一生懸命に思索してきました。
また、そのことを生命で実感したいと、日々、唱題し、信心に励んできました。そして、今、私なりの実感が持てるようになったのです。
しかし、今ここで、それを、ちょっとばかり話したからといって、君たちには、簡単にわかりはしないでしょう。
この問題は理論的に理解するというより、信心によって、生命で実感していくことです。
信仰体験を積んでいくならば、だんだんとわかってきます。
だから、増山君は増山君なりに、御書を根本に、じっくり思索し、題目を唱え、体験をつかんで、自得していってもらいたい。
そのうえで、哲学的にも究明し、君が将来、研究発表してください。
私も、この問題については、これからさらに深めていきます。一緒に勉強し、研修していこうよ」
その言葉に、増山は心温まるものを感じた。