(『新・人間革命』第6巻より編集)
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〈若鷲〉 4
「そうか!よく頑張ったな。これからは学生部の時代だよ。私も、全力を注いで、学生部を育てようと思う。
未来の大指導者を、綺羅(華やかさ)、星のごとく、つくり出していくんだ。
今度、学生部の代表と懇談しよう」
こうして、伸一と学生部の代表との最初の懇談会が持たれたのは、五月二十三日のことであった。
この時も、伸一は、自分が一方的に指導するのではなく、メンバーの意見や要望を聞くことに務めた。
彼は、学生たちを鋳型にはめ込むのではなく、自発性、自主性を尊重し、伸び伸びと、自由に育てたかった。
学生部の代表からは、さまざまな要望が出された。
「各支部には支部旗がありますし、男子部や女子部にも旗があります。学生部にも旗を作っていただきたいと思います」
「わかりました。私も、学生部が旗を作ることには大賛成です。学生部らしく斬新でスマートなものを作ろう。
旗については、大乗の論師である竜樹(りゅうじゅ;南インドで活躍した大乗仏教の論師)の、こんな故事がある。
ー かって南インドに、外道を信じ、邪見をもって国を治めた王がいた。その国は竜樹の故国であった。
竜樹は、国王を教化しようと立ち上がったが、会見を申し込んでも、さまざまな妨害があって実現できない。
しかし、彼はあきらめなかった。竜樹は深紅の旗を掲げ、門前や城の周囲を、来る日も来る日も巡り続けた。そして、七年目にして国王に会い、国王を仏道に導くことができたのだ。
竜樹の掲げた、この深紅の旗は、彼の仏法弘通の情熱を象徴していたように思う。
旗には、それを掲げる人びとの思想・哲学や理想が、集約されているともいえるだろう。
そして、作るからには、男子部や女子部よりも、一段と立派な、センスのよいものを作るんだよ」