(『新・人間革命』第6巻より編集)
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〈若鷲〉 1
青年の夏が来た。
梅雨空を破り、黄金の太陽が昇った。
大空に、真綿のような純白の雲が輝き、木々の緑が鮮やかに映えていた。
昭和三十七年七月十六日、東京・信濃町の聖教新聞社の和室には、二十人ほどの青年男女が集まっていた。
学生部長の渡吾郎をはじめとする、学生部の代表であった。
しばらくすると、山本伸一が姿を現した。
伸一は座卓を挟んで座ると、笑顔で語りかけた。
「梅雨も明けたせいか、今日は、みんなさっぱりした顔をしているな。さあ、今回も、意見や要望があれば、なんでも自由に話しなさい」
この年、二度目の、山本会長と学生部の代表との懇談会が始まった。
最初に指名されたメンバーが言った。
「山本先生に、学生部の代表に御書の講義をしていただきたいのですが・・・」
発言者も、他のメンバーも、真剣な顔で伸一を見た。
一瞬、伸一の目が輝きを増した。彼は、その言葉を待っていたのだ。
「よし、やろう! 七月の二十二日は学生部の総会だったね。それが終わったら始めることにしよう。
君たちが徹底して御書を研鑽し、大聖人の仏法の奥底を究めていかなければ、学生部の存在価値はなくなってしまう。
最も大事なことだ。一緒に勉強していこう」
伸一は、いよいよ学生部に対する、本格的な薫陶を開始する時が来たことを感じた。
彼は、昨年来、学生部の育成に、最も心を砕いていたのである。