(『新・人間革命』第2巻より編集)
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〈勇舞〉 22
(つづき)
自動車整備士として、油まみれになって働いて、その仕事で、みんなの模範になればいいんです。
職種は違っても、信心を根本にして社会の勝利者になった体験は、万人に通じます。
同志は、幹部の信心について来るんです。人柄についてくるんです。
背伸びをして、見栄を張る必要はいっさいありません」
民衆のなかから、民衆のリーダーを育み、民衆が社会の主人となる”民主の時代”を開くー そこに、人類の進むべき、革新の道がある。
伸一は、身を乗り出すようにして青年に語った。
「学歴がないからと、卑屈になるのではなく、自分らしく、自分のいる場所で頑張ることです。
それが人生の勝利の道です。
私も、戸田先生の下にあって、夜間の学校を、途中でやめざるを得ませんでした。
学歴がないことは恥でもなんでもない。しかし、学ばないことは卑しい。勉強しないことは恥です。
私も、毎日、勉強している。一日にニ十分でも、三十分でもよい。寸暇を惜しんで読書し、勉強することです。
その持続が力になる。
君も実力を蓄え、本当に力ある民衆リーダーになっていくんだよ。今日は、君の栄光の未来のために歌を歌おう」
伸一は、こう言うと、自ら『田原坂』を歌い始めた。
雨はふるふる 人馬はぬれる・・・
歌い終わると、伸一は、質問した青年を見つめた。
「君も、偉大な使命をもった大事な人なんだ。大切な体なんだ。だから、病気などになってはいけない。
健康に留意し、体を鍛えていくのだ。
また、金銭や酒、あるいは異性との問題など、つまらないことで自分に傷をつけてはならない。
『蚤(のみ)になど、食わせるもんか!』という思いで、生きていくんだよ」
青年は、感無量の表情で頷いた。