ひきこもりを考えるヒント・連載-16

前回の水に溺れかけたときの例え話は、どん底からの〝浮力〟は自分に備わっていること、そのことを認識していただきたいがためのことです。
溺れかけた当初は、そういう〝浮力〟のことは思いつきもしないでしょう。慌てて、パニック状態です。必死です。むしろ、〝浮力〟を削ぐようにバタバタしてしまう。
ひきこもりの入口(往路)が、それと似ています。
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〝娑婆〟で傷つき、自己否定感のどん底に陥る。その『自己否定感』の由来が杳として掴めない。人間関係に由来するのか、その人間関係における自分の立ち位置に由来するのか、それはまた自己史や自己存在に起因しているのか、など。
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連載-14で上記のように書きました。
『〝娑婆〟で傷つき』の経験について、『白書』でさまざまに吐露されていました。「失敗するのではないか、怒られるのではないかと不安で外に出られなくなる」など。その不安とは、自分なりに考え行動しても、ダメだ、足らない、やり直せ、いい加減にしろ、空気を読めなど、指摘され、要求され、ダメ出しされる。それが一度や二度ならず、繰り返される。
すると、自分は〝娑婆〟の網の目からはみ出てしまうような欠陥人間ではないのか、どうしようもないのではないかと思えてしまう。……〝どん底〟です。ひきこもり【滞在期】はここまで行き着かざるを得ない。しかし、ここから反転がはじまる。
なぜなら、〝どん底〟こそが〝浮力〟を発見するチャンスになるからです。
そもそも、〝娑婆〟は、要求する、指示する、評価を下す、その結果次第で追及する、断罪する、そうならないために空気を読めと迫る、そういう〝網の目〟で出来ている。その〝網の目〟にちゃんと収まらなければこの世に自分が存在する価値はないのかと問い直さざるを得ない。これが、〝どん底〟です。
〝どん底〟、社会(娑婆)の〝網の目〟と自分の存在とのあり方に突き当たる。社会(娑婆)の〝網の目〟が〔する・できる=do〕の物差しで編まれているのに対して、自分の存在価値は〔ある=be〕がベースです。〔する・できる=do〕の物差しだけで見るのならば、障害者や病者、子ども、老人は価値のない人間となってしまう。はたして、そうなのか。
〝娑婆〟の網の目に絡め取られてバタバタもがき〝どん底〟に沈んだが、〝どん底〟であるがゆえに自分の存在価値〔ある=be〕に突き当たる。〝どん底〟でどうしようもない絶望に見えるが、その絶望を誰かと何かと交換することは出来ない。これが、ひきこもり【滞在期・後半】です。〝浮力〟を発見し、反転するチャンスです。 (つづく・鮮)
ひきこもりの段階 (仮説)
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【緊急退避】……会社や集団の場など社会の第一線から、とにかく退避する。緊急退避する。それが、ひきこもりの第一段階。
【滞在期・前半】……しかし、何てことをしてしまったのかと青ざめ、煩悶し、ひたすら〝社会常識〟を遮断して過ごす第二段階。ひきこもり滞在期(前半)。
【滞在期・後半】……自分だけの世界のなかで、自分だけと四つに組むことで一定の自己整理をしていく、ひきこもり滞在期(後半)。
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仮説について (つづき)
(4)【滞在期・後半】……ひきこもり滞在期の後半がしっかり過ごせられれば、出口に向かうでしょう。自分だけの世界のなかで、自分だけと四つに組むことで一定の自己整理をしていくことができます。
ある意味で、これ以上の〝どん底〟はないと思える瞬間に遭遇して、そこから出口への道が見えてくるのだと思います。
例え話から始めます。
水に溺れかけた経験はないでしょうか。川とかプールで泳いでいて、不意に水を飲んでしまったり、足が引きつってしまったり。慌ててバタバタもがくが、却って身体は水面から沈んでしまう。と、その時、沈みかけながらも頭か身体のどこかは分からないが、ふっと気がつく部分がある。自分の身体がこれ以上沈まないこと、無意識か本能か分からないが気がつく。そこで気がついて身体の力を抜いてみる。身体は、そこからゆっくりと浮き上がってくる。
浮く! わずかだけれども自分には浮力がある! 底をついた感覚があり、身を任せてゆっくりと浮き上がっていく。
このように自分に備わる〝浮力〟に気づき、それに添って浮き上がりはじめる姿が【滞在期・後半】であると思います。
今回は例え話でしたが、この【滞在期・後半】について次回でもう少し深めたいと思います。 (鮮)
※人体は水よりも軽いため、体の2%は必ず浮くということだそうです。
※SISでは、ケースに応じた相談活動を行っています。
◎不登校やひきこもり、子どもや親に関わるご相談
◎職場や地域とのつきあいや人間関係に関わるご相談
など、専門的訓練を受けた SISカウンセラー がお話を伺います。
◎メール相談専用アドレス helpline@sis-oasis.com
ひきこもりの段階 (仮説)
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【緊急退避】……会社や集団の場など社会の第一線から、とにかく退避する。緊急退避する。それが、ひきこもりの第一段階。
【滞在期・前半】……しかし、何てことをしてしまったのかと青ざめ、煩悶し、ひたすら〝社会常識〟を遮断して過ごす第二段階。ひきこもり滞在期(前半)。
【滞在期・後半】……自分だけの世界のなかで、自分だけと四つに組むことで一定の自己整理をしていく、ひきこもり滞在期(後半)。
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仮説について
(1)【緊急退避】……ひきこもり第一段階が緊急退避であること。これについては、たいがいの方が頷いていただけるのではないかと思います。
(2)【滞在期】……ひきこもり滞在期を前半と後半に区別しました。この前半と後半を合わせた期間が、ひきこもりの本体だと考えられます。前半から後半への所要時間は、その人によって異なります。前半がうまくいかないと滞在期全体が長引くと思います。
※石崎さんが言っていた「とにかく、親と顔を合わせたくなかった」、山田ルイ53世さんが言っていた「夜は最高!」のように〝遮断〟ならびに濃い〝籠もり〟が出来ないと〝自分だけと四つに組む〟への回路がうまくつながらないと思います。
(3)【滞在期・前半】……〝娑婆〟で傷つき、自己否定感のどん底に陥る。その『自己否定感』の由来が杳として掴めない。人間関係に由来するのか、その人間関係における自分の立ち位置に由来するのか、それはまた自己史や自己存在に起因しているのか、など。
緊急退避したために、それらの由来の検証が〝過去・記憶〟に頼らざるを得ないこと、また退避してしまうような〝弱さ〟を自己史・自己存在検証に追加せざるを得ないことなど、膨大な営為となる。
さらに、その営為が傍からはほとんど見えない。そのために、周りが苛立つ、さざ波が起きる、やがて「出て来い」コールや善意の「引き出し」型支援にも遭遇する。
籠もるけれども、真正の籠もりになかなか辿り着けない。これが、滞在期・前半の姿であると思います。
ひきこもりの段階をめぐる、ここまでの仮説、どうでしょう。まだ【滞在期・後半】についての仮説が残っていますので、次回に。 (鮮)
※SISでは、ケースに応じた相談活動を行っています。
◎不登校やひきこもり、子どもや親に関わるご相談
◎職場や地域とのつきあいや人間関係に関わるご相談
など、専門的訓練を受けた SISカウンセラー がお話を伺います。
◎メール相談専用アドレス helpline@sis-oasis.com

