小さな小さな幸せを。映画「この世界の片隅に」 | 忍之閻魔帳

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この世界の片隅に こうの史代 映画
*本日より全国公開のため、過去記事を移動させています。



▼小さな小さな幸せを。映画「この世界の片隅に」


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当BLOGで戦争映画を取り上げる際には必ずといっていいほど紹介してきた
こうの史代のコミック「この世界の片隅に」。
北川景子主演の実写ドラマ版が(私的には)微妙な出来映えだったため
劇場用アニメの制作決定の報には飛び上がったし
「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直監督であることは喜びを倍増させた。
しかし、制作はなかなか進まずやがて資金が枯渇、
通帳の残高が4万5千円になり、万策尽きた監督が最後に頼ったのが
クラウドファンディングだったという。
(*制作支援メンバーズ限定試写会でのトークより)
昨年3月の募集開始から1年半、公約通りのスケジュールで作品は完成した。
季節ごとに届けられるすずさんからの葉書や
制作レポートを読んできた私も感慨深い。

主人公すずの声を担当するのは、「あまちゃん」ののん(能年玲奈)。
共演には細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世、澁谷天外。
劇版と主題歌はコトリンゴ。





戦争が終って 僕等は生まれた
戦争を知らずに 僕等は育った
青空が好きで 花びらが好きで
いつでも笑顔の すてきな人なら
誰でも一緒に 歩いてゆこうよ
きれいな夕陽の 輝くこみちを
僕等の名前を 覚えてほしい
戦争を知らない 子供たちさ
戦争を知らない 子供たちさ
 
 「戦争を知らない子供たち」


ブログ開設から12年。
当BLOGで多くの戦争映画を取り上げてきた理由のひとつに
私の世代の使命だという気持ちがある。
母からは庭先に爆弾が落ちたことや
疎開先での暮らしぶりを聞いたことがあるが
実体験がない分、「歴史」としてしか認識できていない。
日本における「戦争を知らない子供たち」の第一世代と言っていい私達は
戦争体験を直接肉親や恩師から聞くことの出来る世代でもある。
であるならば、先人の遺した言葉や作品を後世に語り継ぐことが
私に課せられた使命であろうと思っているのだ。

映画「この世界の片隅に」は、原作者のこうの史代(48歳)も
片渕須直監督(56歳)も「戦争を知らない子供たち」の第一世代である。
こうの氏はメディアの取材に対し

「私は戦争を体験していないので、膨大な資料を読み漁って
 勉強しながら描くことしか出来ない。
 そしてそのことを誇りに思いたい。」

と語り、片渕監督は今回の試写会の挨拶で

「生きていれば(主人公の)すずさんは今年で91歳です。
 私はこの作品を、どこかでまだすずさんが生きていると
 信じながら作りました。
 なので、どこかですずさんを見かけたら教えて下さい。」

と語った。

二階堂和美(42歳)が原爆資料館の写真を見て「伝える花」を書いたように
是枝裕和監督(54歳)が映画「いしぶみ」で
戦争体験を綴った手紙を綾瀬はるか(31歳)に読ませたように、
戦争を知らない世代が作った作品が続々と発表され、いずれ劣らぬ名作揃いながら、
日本において戦争映画や平和を祈る(もしくは反戦)歌は
過剰な演出の作品以外は埋没してしまう傾向にある。

映画「この世界の片隅に」は、淡々とした日常を描いた作品でありながら
戦争モノを遠ざけてしまう若者達のアレルギーを払拭し、
ある意味で一番困難な「とにかく観てもらう」ことを
クリアできる作品に仕上がっている。まずはこの点が嬉しい。




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こうの史代の名前を一気に世間に知らしめたのが
実写映画化もされた「夕凪の街 桜の国」
焼け野原になった広島で生き残ったひとりの女性の葛藤と、
奇跡的に掴んだ生すらも無情に取り上げる原爆の恐ろしさを描いた短編だが
結末が衝撃的過ぎて、反戦の色がやや濃くなったことは否めない。

「夕凪」の拡大版とも言える「この世界の片隅に」は
衣食住の全てを切り詰めなければならなかった当時の生活をクローズアップし、
「戦時中でも日々の生活を楽しんでいた人達がたくさんいた」ことが
ほんわかしたタッチで描かれている。
召集令状も空襲警報も、人の死すらも日常の風景に溶け込み、
いつ終わるとも知れぬ戦渦の中、食卓に上るのが粗末なメニューでも
他愛も無い会話で笑い合う瞬間があったのだと教えてくれる。
そしてその小さな小さな幸せをも、根こそぎ奪っていくのが戦争なのだと。

こうの氏のコミックは独特のテンポを持っていて
台詞なし・絵のみで生活の様子を描いたシーンがあったりと
およそアニメに向いているとは思えないのだが
片渕監督は徹底的なリサーチによって当時の呉(物語の舞台)を再現しただけでなく
呉で生きるすずさんの喜びや哀しみまでを
彼女の持つ空気感も含めて完璧にアニメ化している。
原作を何度も読み返した私ですら、「よくぞここまで」と思えるほどである。
すずの声を担当したのんに拠るところも大きい。




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当BLOGを古くから読んで下さっている方ならご存知と思うが
私は日本の戦争映画の頂点は
故・黒木和雄監督の「TOMORROW 明日」だと思っている。
長崎に原爆が落される直前までを描いたドラマで
劇中には一機の戦闘機も一滴の血も映らない。
祝言を挙げる若いカップルや、出産間近の妊婦など、
市井の人々の暮らしぶりを淡々と追っている。
晴れ渡る空を女学生がふと見上げた瞬間、閃光に目を細めたところで映画は終わる。
その後の長崎がどうなったのかには一切触れていないにも関わらず
とてつもない喪失感と恐怖を感じるのである。

私がコミック版の「この世界の片隅に」を傑作と感じたのも
「TOMORROW 明日」に通じる黒木イズムを感じたからに他ならない。
アニメ版にもそのイズムはしっかりと受け継がれ
すずの倹しい生活ぶりが微笑ましければ微笑ましいほど
後半の展開には胸が締め付けられる思いがする。
それなのに、またすずは笑っている。
周囲にはこんなにもたくさんの「悲しくてやりきれない」ことが溢れているのに
涙が止まれば、人はまた笑うことが出来る。
笑うことが出来れば、立ち上がる力が沸いて来る。
立ち上がる力があれば、一歩踏み出すことが出来る。
そうやって当時力強く踏み出した一歩の積み重ねが、現代へと続いているのだ。

ちなみに同じ黒木監督の「父と暮せば」は、
生き残ってしまった娘を励ますために亡くなった父が幽霊として登場する話で
「夕凪の街 桜の国」に通じる要素があるので
本作を観て興味を持った方は、ルーツを辿るつもりでご覧いただきたい。




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こうの氏のタッチを再現した繊細な絵や動きにも感心させられたが
「かぐや姫の物語」を彷彿する演出法も一部取り入れる等、
アニメーションの表現方法としてもなかなか意欲的。

2016年はアニメの当たり年と言われている。
公開規模からしても、本作が何十億のヒットになることはまずないだろう。
しかし、それらの作品と比べても全く引けを取らない秀作であることは保証する。

映画「この世界の片隅に」は11月12日より公開。



この世界の片隅に こうの史代 映画
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本編で使用される楽曲、OPテーマ、主題歌、EDテーマの計33曲を収録。




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【紹介記事】普通ってなんだろう。映画「マイマイ新子と千年の魔法」より再掲。

戦後間まもない山口県・周防の地に済む女の子・新子には不思議な力があった。
新子の額には「マイマイ」と呼ばれる旋毛があり、
そのマイマイがゾワゾワっとすると、新子のおじいちゃんから教えられた、
千年前の周防にあったという旧き都の姿が見えるのだ。
ある日、新子のクラスに東京からの転校生・貴伊子がやってきた。
幼くして母を亡くし、医者である父の仕事の関係で周防にやってきた貴伊子と新子は
新子の見える旧き都の話をきっかけにして、いつしか親友になっていった。
大人達が作り出す、幸と不幸の波に揺られながら、新子や貴伊子を含む子供たちは
昭和の緩やかな時間の中、少しずつ成長していくのだった。
監督は「名犬ラッシー」「アリーテ姫」の片渕須直。
アニメーション製作は「時をかける少女」「サマーウォーズ」のマッドハウス。
声優陣は、主人公・新子に「ヘブンズ・ドア」の福田麻由子。
親友の貴伊子は「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」の水沢奈子。
主題歌はコトリンゴが手掛けている。

髙樹のぶ子の自伝的小説「マイマイ新子」が原作であるにも関わらず
原作コミックでもあったのではないか?と思わせるほど、作画が丁寧で驚かされる。
「戦後の昭和」と「7世紀の都」を映像化するにあたり、
アニメという比較的自由な土壌の上で、とてもリアルに描かれているのが印象的だ。
私的には、「ピアノの森」や「サマーウォーズ」よりさらに上質に思えた。

このお話には、ドラマティックな結末は用意されていない。
バッドエンドではないし、だからと言ってハッピーエンドというわけでもない。
強いて言うなら「普通」の結末である。
いつもそこにあるのが当たり前で、わざわざ目標にしたりもしない。
失くしてしまうまで、その存在にすら気付かない。
日常における優先順位が低いために、特に自覚することもない。
私達は、そんな「普通」に囲まれて生活をしている。

見慣れた風景の中で、どれだけの大切な物を見出しながら生活しているだろう?
少なくとも私は、ちゃんと見ていない気がする。
日々の生活に追われ、消費するだけの生活を送っているうちに
遠い過去の歴史や、遠い未来への夢に想いを馳せることを忘れてしまいがちになる。
大人から受け取ったバトンを、如何にして子へ渡すか。
脈々と受け継がれていく命の営みは、
千年前も今も、そして千年後の未来もきっと変わらない。

音楽、主題歌も秀逸。
天才子役の名を欲しいままにしてきた福田麻由子は、ここでも流石の貫禄。
生半な声優では到底太刀打ち出来ない、素晴らしい演技を披露している。

舞台になった周防の国を訪れるのも良いかもしれないが、
私としては、この映画をきっかけにして自分の田舎を見つめ直すことをお勧めしたい。
次の世代へ繋げていかなければいけない「大切なもの」が
自分の故郷にもきっと見つかる。そんな気がする。



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