普通ってなんだろう。映画「マイマイ新子と千年の魔法」 | 忍之閻魔帳

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(C)高樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会
2010年07月23日発売■DVD:「マイマイ新子と千年の魔法」

●マイマイ新子と千年の魔法 その1(blog珍品堂)
●マイマイ新子と千年の魔法 その2(blog珍品堂)
●マイマイ新子と千年の魔法 その3(blog珍品堂)

今回は、いつも読ませて頂いている「blog珍品堂」様にて
熱烈プッシュされている「マイマイ新子と千年の魔法」を紹介。
正月向けの大作の影に隠れてしまい、公開から28日間の興行収入はわずか2000万円と大苦戦。
しかし、作品を観た方や、観た方の感想を読んだ方などから
続映・アンコール上映を希望する声が相次ぎ、現在も地味にロングランを続けている。

戦後間まもない山口県・周防の地に済む女の子・新子には不思議な力があった。
新子の額には「マイマイ」と呼ばれる旋毛があり、
そのマイマイがゾワゾワっとすると、新子のおじいちゃんから教えられた、
千年前の周防にあったという、旧き都の姿が見えるのだ。
ある日、新子のクラスに東京からの転校生・貴伊子がやってきた。
幼くして母を亡くし、医者である父の仕事の関係で周防にやってきた貴伊子と新子は
新子の見える旧き都の話をきっかけにして、いつしか親友になっていった。
大人達が作り出す、幸と不幸の波に揺られながら、新子や貴伊子を含む子供たちは
昭和の緩やかな時間の中、少しずつ成長していくのだった。
監督は「名犬ラッシー」「アリーテ姫」の片渕須直。
アニメーション製作は「時をかける少女」「ピアノの森」「サマーウォーズ」のマッドハウス。
声優陣は、主人公・新子に「Little DJ 小さな恋の物語」「ヘブンズ・ドア」の福田麻由子。
親友の貴伊子は「赤んぼ少女」「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」の水沢奈子。
主題歌はコトリンゴが手掛けている。



2010年07月23日発売■DVD:「マイマイ新子と千年の魔法」

髙樹のぶ子の自伝的小説「マイマイ新子」が原作であるにも関わらず
原作コミックでもあったのではないか?と思わせるほど、作画が丁寧で驚かされる。
「戦後の昭和」と「7世紀の都」を映像化するにあたり、
アニメという比較的自由な土壌の上で、とてもリアルに描かれているのが印象的だ。
私的には、「ピアノの森」や「サマーウォーズ」よりさらに上質に思えた。

タイトルや絵柄に反し、内容はかなり大人向け
(ノスタルジーを売りにしている、という意味では決して無い)なのだが、
題材的に子供を無視するわけにもいかなかったのか、
演出に迷いを感じる部分もある。
子供のエピソードが細かく描かれているのに対し、大人のエピソードが
比較的淡白だったりというちぐはぐさは、おそらく迷いの表れだろう。
原作を読んで観たわけではないので、どこまで掘り下げて描かれていたのかは不明だが、
大人の事情と子供の世界との対比がもう少しあった方が、私的には好み。

このお話には、劇的な結末は特にない。
決してバッドエンドではないし、だからと言ってハッピーエンドというわけでもない。
強いて言うなら「普通」の結末である。
いつもそこにあるのが当たり前で、わざわざ目標にしたりもしない。
失くしてしまうまで、その存在にすら気付かない。
日常における優先順位が低いために、特に自覚することもない。
私達は、そんな「普通」に囲まれて生活をしている。

見慣れた風景の中で、どれだけの大切な物を見出しながら生活しているだろう?
少なくとも私は、ちゃんと見ていない気がする。
日々の生活に追われ、消費するだけの生活を送っているうちに
遠い過去の歴史や、遠い未来への夢に想いを馳せることを忘れてしまいがちになる。
大人から受け取ったバトンを、如何にして子へ渡すか。
私達の命は、特にドラマティックなイベントもなく、脈々と受け継がれていく。
それが、千年前も今も、そして千年後の未来も、
決して変わる事の無い人間の姿なのかもしれない。

舞台になった周防の国を訪れるのも良いかもしれないが、
私としては、この映画をきっかけにして自分の田舎を見つめ直すことをお勧めしたい。
目を凝らして良く良く見ると、次の世代へ繋げていかなければいけない
「大切なもの」がきっと見つかるはず。そんな気がする。

音楽、主題歌も秀逸。
天才子役の名を欲しいままにしてきた福田麻由子は、ここでも流石の貫禄。
生半な声優では到底太刀打ち出来ない、素晴らしい演技を披露している。

公開劇場はこちら。
間もなく終了する地域も多いので、終了までに是非劇場へ。


配給会社の公式で、冒頭の5分間を丸ごと公開中。


■CD:「マイマイ新子と千年の魔法 オリジナル・サウンドトラック」
■CD:「trick & tweet / コトリンゴ」
コトリンゴ - trick & tweet - こどものせかい「こどものせかい / コトリンゴ」

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  タイトル:マイマイ新子と千年の魔法
    配給:松竹
   公開日:2009年11月21日
    監督:片渕須直
    声優:福田麻由子、水沢奈子、本上まなみ、他
 公式サイト:http://mai-mai.jp/
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