ミスト [DVD]/ポニーキャニオン
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ガラス窓を破るほどの嵐の翌日、スーパーへ買い出しに出掛けたデヴィッド(トーマス・ジェーン)。軍人やパトカーが慌ただしく街を往来し、あっという間に店の外は濃い霧に覆われた。設備点検のために外に出た店員のジム(ウィリアム・サドラー)が不気味な物体に襲われると、店内の人々は次第に理性を失いはじめ……。 (シネマトゥデイ)



★嘘いつわりの無い、衝撃のラスト15分


かなり、賛否両論分かれる作品でしょうか。

しかし、否を唱える人は、きっと根本的にハッピーエンドしか評価できないのかと思ってしまいますね。


この映画は、「後味の悪い映画ランキング」を作らせたら、必ず上位に入るであろう、そのラストシーンの衝撃さで有名な作品です。

「衝撃のラスト」とかいったキャッチコピーはくさるほど見てきましたが、この映画に関してはまさに適切。だれしもが、見終わった後すぐには席を立てないような衝撃さです。


さて、原作はスティーブン・キング。そして監督はもちろん、フランク・ダラボン。

このラストは、原作にはなかったようで、監督自身のオリジナルだそうです。監督が、キングに「このラストにしようかと思うんですが」と聞いたところ、オーケーが出て「私も思いついていたらそうしてただろう」とまで言わせたらしいです。


内容に触れます。

あらすじを見ていただければわかるんですが、ある日街全体が濃い霧に覆われるんですね。

最初はその霧が晴れることを、出先のスーパーの中で気楽に待っていたわけですが、なにやら普通の霧ではないことがわかってきます。いきなり、店の外から、瀕死状態のおっさんが入ってきて、「霧の中に何かいる!」というわけです。こうして、スーパーで足止めを食らってしまう。霧の中に何がいるのかは依然不明なまま。しかし、人を死に追いやる恐怖の何かがいるのだけは感じられるのです。


まぁ、こんな感じです。l

結局昆虫系の新種モンスターが大量発生してるんですが。

それで、僕が言いたいことは、この映画は決してラストだけではないってことですね。

ラストシーンだけが有名で、そこまでがつまらない作品って結構あるんですよ。(「ヴィレッジ」とか)

ミストに関しては作品全体として、飽きさせない作りをしていて、終始ハラハラドキドキできます。

霧から避けるためにスーパーに閉じこもっていたのですが、その中の人間関係が次第におかしくなってきます。極限状態の人間心理は非常に怖いなと思わせますし、本当に怖いのは霧の中のモンスターではなく、人間なのだとまで思わせる描写は素晴らしいと思いました。


そして、問題のラストシーン。

僕はめっちゃ好きです。ハッピーエンドではないということだけは言っておきましょう。

しかし、それでもこのラストは素晴らしいと唸れる。

ラストシーンに至るまでの筋書きが非常にうまいんだろうな、と思いますね。

主人公はどんどん追いやられていって、選択肢がなくなっていくんです。

そして最後にはそうせざるを得なくなってしまう。

そこには決して、見る人に他の選択肢をうかばせないほどの絶望

この絶望の描き方が非常にうまかったと思うんです。

本人の気持ちになってみてください。なんとかなりそう、と思っていたところに、500メートルはありそうな怪物を目撃してしまう。(人間の想像を超える世界観の描き方も好き)

「もう終わりだ」以外にないと思うんですよね。


あのラストシーンにはまったくの不自然さはなく、ストレスもない。

もうそうせざるを得ない状況に持って行った筋書きが良かったわけです。

その結果、爽快なバッドエンドと、一見矛盾した表現がこの作品にはバシッとはまるように感じました。


多分最初から主人公は、ひかれたレールに沿っていたんだと思います。

全ての行動があのラストにつながってますし、もう変更はきかないんです。


この映画が嫌いな人、だったら他のラストシーンの案出してみてくださいよ。

出ないと思いますよ。だって、あのラストしかあり得ないのだから。

それでも批判するなら、それは単なるバッドエンド嫌いに他ならないわけです。。





ミュージック・フロム・バズ・ラーマンズ・華麗なるギャツビー/ユニバーサル インターナショナル
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ニック(トビー・マグワイア)が暮らす家の隣に建つ、ぜいを凝らした宮殿のような豪邸。ニックは、そこで毎晩のように盛大なパーティーを開く若き大富豪ジェイ・ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)と言葉を交わす仲になる。どこからやって来たのか、いかにしてばく大な富を得たのか、なぜパーティーを開催し続けるのか、日を追うごとに彼への疑問を大きく膨らませていくニック。やがて、名家の出身ながらも身寄りがないこと、戦争でさまざまな勲章を受けたことなどを明かされるが、ニックはこの話に疑念を持つ。 (シネマトゥデイ)



★単なる純愛ラブストーリーではない


いよいよ「華麗なるギャツビー」について書きます。

去年からずっと公開されるされるといわれながら先延ばしにされ、今年の六月公開となった作品です。

そして原作はF・スコット・フィツジェラルド。

このことが何を意味するのか。

私にとってこの記事を書くことにはそれなりの勇気が必要とされました。

なぜならば、この映画について書くことは、原作の小説についても書くということになるから。

原作はアメリカ文学最高峰の作品といわれており、英米文学を専攻してる私にとって、この映画の記事を書くことは並大抵の気持ちではできなかったのです。

と、まぁ自分勝手にハードルを上げてきたわけですが、ついに書くことにしました。


では、内容に触れていきます。

もちろん私は原作を読んでから映画を見に行った人のうちの一人なんですね。

それで、よく映画化されるときにいわれるのが、「原作のほうがよかったよ」という言葉。

たしかに二時間の枠に納めなくてはならないために、その点映画は非常に不利なわけですが、この映画に関してはむしろ利点のほうが多かったのではないかと思いました。


その理由の一つとして、いわずもがな、あの豪華絢爛たるパーティーシーン

これは素晴らしかった、本当に素晴らしかった。鳥肌が立ちましたね。

今までのギャツビーの映画化作品も、二作ほど見たんですが、月とすっぽんです。(2001年Ver.なんて、本作品を見た後だとお通夜かとおもってしまうほど地味)

これが僕にはドハマリでした。さすがはバズ・ラーマン監督といったところか。


それでもこのシーンは賛否両論あるみたいです。

たしかに気持ちはわかるんですね。舞台は1920年代のはずなのに、あんな度派手なパーティ。そしてバックミュージックにはクラブ調の音楽。ヒップホップまで流れる。

古典文学作品に現代文化要素を詰め込みすぎたという点。

わかります、わかるんですけどそこまでリアルな要素を追及する必要がありますかね。

きっと作品全体の雰囲気がそんな感じだから、パーティーシーンがそこまで浮いたように感じなかったと思います。

だからこその映画化じゃないですか。いちファンとして非常に楽しめるシーンでしたね。


もうひとつ、この映画の中で好きなシーンを上げると、やっぱりシャツ投げでしょう

なんでしょうね。今思い返すだけでも泣けてきます。音楽が卑怯かと思うくらいに素晴らしいですし。

あの宮殿やら、車やら、宝石なんかよりもなによりも、シャツがギャツビーの成功を象徴的にあらわすなんてこんなにくい演出ありますか。彼の人生を通してのカタルシスですよあのシーンは。


さて、この作品の核心についてですが、この作品は決して単なる純愛ラブストーリーではないということです。そのことについて考えるきっかけを与えてくれるのが、ニックのギャツビーに対してなげかける最後の言葉。

あの言葉についての解釈は人それぞれでしょうが、私は「価値観」というものに考えさせられましたね。


ニックは作品を通して、お金持ちに対して、なにやら冷めた視点を持っていました。

それは、トム・ブキャナンに対しても、ギャツビーに対しても。

「自分とは完全に考え方が違うんだ、金に力を言わせて毎週あんな度派手なパーティを開くなんてね」と、ギャツビーに対しては完全に一線を引いた付き合い方をしようとしていたはずです。

しかしながら、彼がどうやらお金というものに対する価値観がほかの金持ちの人間とは違うということに気づき始めるんですね。

ギャツビーがニックに心を開いて、内面を打ち明けていくたびに、ニックも次第に彼に対する印象が変わっていきます。そして、最後にあの言葉。


見終わった僕たちの心には、作品内でのニック同様、余韻とともにギャツビーの姿が何度も反芻されるのです。たしかにギャツビーのデイジーとの純愛はせつなく素晴らしいものがありますが、あくまでもそれはギャツビーの印象を際立たせるストーリーなのであり、決して、この映画のメインの要素ではないはずです。


だからこそ、この作品のタイトルは「The Great Gatsby(華麗なるギャツビー)」なんですよ。


自分の心に残ったギャツビーを思い返して、何時間も感慨にふけることのできる作品だなと思いました。

リトル・ミス・サンシャイン [DVD]/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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小太りの眼鏡っ子、オリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)の夢は美少女コンテストで優勝すること。地方予選で繰り上げ優勝した彼女は、独自の成功論に取りつかれる父リチャード(グレッグ・キニア)や母のシェリル(トニ・コレット)、自殺を図ったゲイの伯父フランク(スティーヴ・カレル)らと車で決勝大会の会場を目指す。 (シネマトゥデイ)



完璧な脚本。ヘンテコ家族が涙を誘う


こんばんは。

リトル・ミス・サンシャインを見ました。

久々に最高に気に入った作品でした。


五人家族に伯父が一人加わった六人のロードムービーです。

それはともかくこの家族、変わり者ばかり。

ワーキングマザーとして一家を支えるママの苦労をよそに、常に勝者であれ!と独自の成功論を振りかざし、見込み薄の出版に懸けるパパ。ヘロイン中毒で老人ホームを追い出されたぶっ飛びグランパに、自殺未遂をおこしたゲイの伯父。そしてニーチェにかぶれて、沈黙の誓いを実行している空軍パイロット志望の兄。

う~ん、なかなかです。


この家族バラバラ故の喧嘩が多発するわけですが、それを救うのが、末っ子のオリーブなんですね。

このような、イノセント性(無垢さ、純粋さ)に助けられる作品ってのは非常に多いなって思うわけですが、何度みても飽きませんね。気づかされることはとても多いです。


この作品では、勝ち組、負け組といった言葉が多発しますが、きっと言いたいことは終盤のおじいちゃんの言葉に集約されているのでしょう。

家族の大切さに気付きます。

裏切らないのは家族だけなんですよ。本当に。

今、どんなに大切な友達がいようとも、その友達と自分を繋いでる何かが切れた瞬間は非常に怖いなと思いますね。それに対し、家族というのは絶対の信頼があると思います。

何が起きても、何をされても、信じあえる・助け合える関係が家族なのかなと思います。

そんなことを思いますね。

僕は母子家庭で、一人っ子なので、家族というものに関してはちょっと特殊な環境に身をおいて育ちました。だからこそこの映画に感じたことはあるし、やっぱり家族愛を描く映画にめっぽう弱いんですよね。笑


さて、僕のことはどうでもよくて、話を作品の内容に戻しますね。

ラストももちろんすばらしいのですが、この作品は最初から最後まで終始笑顔で見れることが素晴らしい。

道中にめちゃめちゃトラブルんですよ。

でもね、なんか笑顔でみてられるというか、家族の会話の掛け合いが面白いですし、脚本が素晴らしいんでしょうね。


それで、ラストシーンですが、これは完璧でした。

泣けます。

フルモンティに似てますが、そこにはやっぱり含んでるものの重みが違います。

僕がいいたいことはですね、ネタばれになることを極力避けたいのですが、うん、やはりこれだけは言いたい。

そこには五人しかいないはずなのに、六人が生き生きと存在しているんです。

このことを感じて、うわーっとなってしまいましてね。


とまぁ、想い出に残ってるシーンは多々あるのですが、どうも書ききれない模様なので、ここらで終わりとしたいと思います。

とにかく完璧な作品でした。皆さんにもぜひみてもらいたいなって、ね。





ミッション:8ミニッツ [Blu-ray]/ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
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シカゴで乗客が全員死亡する列車爆破事故が起こり、事件を解明すべく政府の極秘ミッションが始動。爆破犠牲者が死亡する8分前の意識に入り込み、犯人を見つけ出すという任務遂行のため、軍のエリート、スティーヴンス(ジェイク・ギレンホール)が選ばれる。事件の真相に迫るため何度も8分間の任務を繰り返すたび、彼の中である疑惑が膨らんでいく。 (シネマトゥデイ)


★最高峰のSFサスペンス


かなりおもしろかったです。

久しぶりに見終わったあとにうなりましたね。

この作品ですが、サスペンスコーナーで常時一位だったのに、なぜこんなに見るのが遅れてしまったのかというと、主演の方をずっとニコラスケイジだと勘違いしてたんです。(似てないですか?)

「ニコラスケイジかぁ、なんかのらないなぁ」という理由で避けてたら、全然ニコラスじゃなかったです
だから見ました。笑


内容に触れていきます。

上記のあらすじだけじゃ難しい気がします。少し、設定が難しいんですよね。

もちろん、見ていけばわかるんですが、その説明の仕方も結構うまい。


主演のスティーブンスは、見知らぬ列車内で意識を取り戻します。

向かいの席に座っているのは見たとのない女性。彼女は自分に「アドバイスありがとう。とても助かったわ」と話しかけてくる。どうやら彼女は自分を知っているようだ、しかし私は彼女を知らない。

何が何だかわからずうろたえるスティーブンス。その様子に気づき「大丈夫、ショーン。どうかしたの?」

違う、私はショーンではない、何かがおかしい、いや、すべてがおかしい。

そんな感じでうろたえつづけ8分間が経ちます。そして、車内は大爆発が襲う。

これが最初の8分間のミッションでした。

死んでしまったと思ったスティーブンスですが、今度は小さいカプセルの中で目覚めます。モニターには先ほどの女性とは違う女性が映っており、彼女がいうには、どうやら私は今朝におきた列車爆破テロの現場に送り込まれてるらしい。意味がわからないまま、女性の「とにかく爆弾を探して!」という言葉だけを頼りにもう一度あの車内に転送されます。ミッション2スタート。


てな感じで、スティーブンスがいわゆる道先案内人のポジションを担っているわけですね。

観客と、スティーブンスの理解度はともにゼロからスタートするわけですから、スティーブンスが「これってどういうことなの?」みたいな質問をするたびに、観客もだんだんと設定を理解できていくわけです。


こういった手法は結構多いですが、それでもこの構成は大好きですね。のめりこみやすい。

しかも、この映画はあまり説明的じゃないんで、習うより慣れろ的な感じで、ミッションを繰り返すたびになんとなくわかっていくんですね。


それで、このミッションの繰り返しがたまらなくおもしろい

8分間だけですが、その場の彼の行動により、周りの行動も変わってくるわけです。

この様を何通りも見せてくれることがいかに人間の快感神経を刺激することか。

やっぱり、過去に戻ってやりなおしたい欲ってのは誰しもが強く持っていると思うんです。

それを見事やってくれるんで、僕は見ていて快感でたまりませんでしたね。にやにやしっぱなしでした。

残念ながら現実世界はリセット不可能。

映画を見終わった後はその現実に直面して少し鬱になりました。


それでですね、この作品は「バタフライエフェクト」って映画と非常に似てるんです。

もちろんバタフライエフェクトもおもしろかったんですが、この映画が勝る理由はですね

クライマックスが二度訪れるということです。

実はこの映画、「映画通ほど騙される」というキャッチコピーがついてまして、別に自分のことを映画通って言いたいわけではないんですが、僕は、一つ目のクライマックスで終わるんだと完全に思い込んでました。なぜならいわゆるストーリー的なものはその時点で成立してたからです。でも、そこから更なるクライマックスが始まるんですね。


このときの感動は「SAW」を初めて見たときに似ており、鳥肌が立ちました。

伏線あったんですよねぇ。。。忘れてたよ。

見事、ものの見事に伏線を回収。そして納得のエンド。


うなりますよそりゃ。


まぁ、ただ映画が終わった後のその後のストーリーを予想すると、ちょっと微妙な点は残りますね。

ショーンの気持ち考えろよ、お前は本当にそれでいいのかと。笑

まぁ、でもいいじゃないですか。その枠内ではめっちゃおもしろいわけですから。(だめだろ)

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大正から昭和にかけての日本。戦争や大震災、世界恐慌による不景気により、世間は閉塞感に覆われていた。航空機の設計者である堀越二郎はイタリア人飛行機製作者カプローニを尊敬し、いつか美しい飛行機を作り上げたいという野心を抱いていた。関東大震災のさなか汽車で出会った菜穂子とある日再会。二人は恋に落ちるが、菜穂子が結核にかかってしまう。 (シネマトゥデイ)


★声はともかく全体として中途半端


話題作。映画館でしっかりと見てきました。

別の映画を見に行ったときに予告編で、なんと四分間もの尺を割いて宣伝していました。

そして、その予告編の出来は素晴らしかった。荒井由美の「ひこうき雲」も素晴らしくジブリもこんな作品を作るんだな、見てみたいなと思った次第です。


さて、内容に触れていきます。

この作品内では二つの大きなストーリーが描かれます。

「二郎の設計者サクセスストーリー」そして「二郎と菜穂子の純愛ストーリー」のふたつです。

両者のストーリーが同時進行的に進んでいきます。

これが視聴者にどのような感想を抱かせるのか。


はじまり方はかなり好きでしたね。

飛行機にあこがれる二郎少年の夢から始まります。

この夢というのが、この作品で何度もアクセントとして出てきますが、唯一のジブリ色、といいますか。

この夢のシーンがあるからこそ、あぁ、ジブリだなぁと思いましたね。

その他のシーンはほんとうにファンタジー要素のない、シリアス一色のストーリーですから。


そして、震災、恐慌、戦争など、当時日本で実際に起きた出来事を背景に物語は進んでいきます。

この点ではやはり、中学生以下はなかなか厳しいんじゃないでしょうか。

中学生カップルの初デートとして、選択する映画としてはなかなか地雷要素があるというか。

大学生である僕も久しぶりに特高なんて言葉を聞いて、よく理解ができなかったところもありますし。


それでも、そこまで背景を理解せずともなんとかついていけるのは「二郎と菜穂子の純愛ストーリー」の魅力でしょう。

正直言って、「二郎の設計者サクセスストーリー」に関してはつまらないの一言でした。

確かに、二郎が成功していき、信頼を得ていくことの効果、そして、ラストシーンの好きだった飛行機が戦争に使われ、それが全て使い捨てのように扱われることの理不尽さ、矛盾さを投げかけているのはわかります。しかしながら、いかんせんサクセスストーリーの割合が重すぎる。

飛行機に興味ない人間にとって、それほどストーリー上に魅力がないサクセスストーリー部分を長々見せられることは睡眠導入剤であることに他なりません。

第一、最初にこの作品は二つの大きなストーリーにわかれてると僕は言いました。

見た人にそう思わせる時点で間違ってると思うんです。

僕たちが見たかったのは、明らかに「純愛ストーリー」の方です。

それなのに、面白みのないサクセスストーリーがあまりに長く、そしてまたそのテーマ性も崇高なものなために、二つの大きなストーリーと思わざるを得ない構成になってしまったのは僕はあまり好きでありませんでした。


しかし、さすがは天才監督といったところか「純愛ストーリー」の方は素晴らしい出来になっており、特に最後の方の菜穂子の決断、そしておばさんの「美しいところだけを見せたかったのね」といったセリフ。このシーンは言葉にできないほどにせつなく、また音楽の使い方も抜群に良い。印象に残るシーンだったと思います。


さて、問題の声優キャスティングについてですが、

正直僕はなんの違和感もなく受け入れることができました。

どうも受け入れることができなかった人は、作品に集中できず、その素晴らしいシーンも台無しになってしまい、散々な感想を言っておられるようですが。

どうでしょうかね。

僕はあのぐらい変わった性格をもった人間ならあの声でも全然良いと思うんですよね。

いや、かなり変わってる性格じゃないですか。

むしろ、極論ですが、あのキャラにはきはき、快活にしゃべられてしまうとその方が違和感ですし、一気にリアル感がなくなると思うんです。

きっと受け入れられなかった人は二郎の性格をうまくわかることができなかったのではないでしょうか。

声が気になって、ストーリーに影響が出てしまうことは非常にもったいないことです。


やはり二郎の性格ですが、かなり変わってましたよね。

とりわけ、監督が強く描こうとしたのが、純粋さと正義感の強さでしょう。

たしかに、そのような性格があったからこそ、あのような問題を抱えた菜穂子とも即決で結婚できる人間なんだ、菜穂子にふさわしいのは二郎しかいないんだ、というように描きたかったのはわかります。きっと彼なら「余命1カ月の花嫁」の実際の旦那のようなことはしないでしょう。笑

そのことはすごいわかります。わかるんですけど、だったらなおさら「純愛ストーリー」メインでいくべきかと。


どうしても僕には、設計者サクセスストーリーが強く感じてしまい、全体として、中途半端な印象を受けました。

繰り返しますが僕たちがみたいのは純愛ストーリーなのです。

サクセスストーリーはうまく、そのメインを生かせるサブ的ポジションまでなんとか印象を抑えられなかったのかな、というのが心残りです。

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金もなく恋人もいない藤本幸世(森山未來)に、怒とうのように恋のチャンスが訪れた“モテキ”から1年後。4人の女の子たちとの関係は終わってしまったが、再び新たな女の子たちが幸世に接近し始め、“セカンド・モテキ”がやって来ようとしていた。 (シネマトゥデイ)


★映画化失敗の典型的作品


恋に対する勇気をもらえたらいいなとこの映画を手に取ったのが、間違いだったのでしょうか。


前半は非常に良かったと思います。

僕は、漫画原作の映画化ってのは基本的に失敗すると思ってるんですね。

なぜかというと、二次元で許されることを三次元でやってしまうと、まったくの違和感しか残らず失敗することが多いからです。そこにはどうしても突っ込み所が生まれてしまい、

それを避ける方法としては、とことんシリアスにして、つっこみ所のないオリジナル脚本に改編する。

もしくは、とことんぶっとんだ過剰な演出をして、つっこむ気さえ起こさないレベルに持っていくのどちらかだと思います。

そして、この作品は完全なる後者でございます。


急にカラオケの歌詞テロップが画面に流れ、歌とともに主人公の失恋の気持ちを表そうが、

喜びの気持ちを表して、主人公が突然踊りだし、急にPerfumeご本人登場しようが、

すべて、ここまでぶっとんだ演出がなされると、つっこみより、笑いのほうが勝ってしまって受け入れてしまう。

漫画の二次元自体がすでにフィクション感満載なので、こういう演出で、フィクションですよー!っとおおっぴろげにすることはとてもいいことだと思います。


あとはですね、基本的に主人公の心の声が流れるので、僕たちの感情移入場所がない、ということでしょうか。この人はどういう気持ちなんだろう、というのをすべて語りで教えてくれるので。

しかし、その語りが童貞ばりばりのひねくれ卑屈語りなのでそれが結構面白かったりもするために、まぁそれはそれでいいのかなという気にもなりました。


という感じでここまでは、かなりのゴリゴリに押され、強引に受け入れさせれらながらも、結構楽しめてました。

しかしね、後半やっぱりシリアスになっていきます。

シリアスになった瞬間、この映画は崩壊です。

漫画原作の映画化のデメリットがもろにでてきてしまいます。


特にひどいのが、あのラストシーン。あれはなんなんですか?

僕はどう解釈すればよいのでしょう。

長澤まさみはなぜあそこで笑うのかっていう謎を観客にポイ投げです。

意味がわからない。

いや、もちろんさんざん悩んだ結果、主人公の愛の強さに負けて、最終的に主人公を選んだんだな、ってのはなんとなくわかります。

でもそうだとしても説明不足すぎる。観客に丸投げととられてもしょうがない。

そう、この作品は圧倒的に尺が足りないのです


前半まではそのぶっとんだ演出におもしろおかしく笑わせてもらいましたが、やはりシリアスになられるとそれなりの心情描写はどうしても必要不可欠となっています。

しかしいかんせん尺が足りないために、なぜそうなのか、という行動の意図がわからないし、

もう少しなぜ、その人のことを好きになったのかっていう説明も欲しいところですし、

でも二時間では足りない。

じゃあやっぱり映画化には向いてなかったんです。


まぁ、個人的にこの作品のメッセージとして好きなところはありますね。

愛のあるセックスシーンが一度も出ないところとか。

後ろから「あのさ・・・」と呼びかけ、意中の女の子二人がどちらも振り向いて、どちらに話しかけたつもりなのか、っていうカメラワークとか。


しかし女性はどうなんでしょうか。

そこまで楽しめないのでしょうか。男性諸君は、主人公の童貞語りはあるあるで結構面白いのですが。


まぁ、とはいえ、ラストシーンがどうも腑に落ちない、という点以外は、演出に助けられなかなか楽しめる作品となっています。

しかし、本作品がおそらくテーマにしているだろう、「恋は一途であるべきだ」的なテーマはなんとなくはわかりますが残念ながら説明不足すぎて、薄っぺらい伝え方にしか感じられなかった。そんな作品でした。

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ネバーランドの妖精の谷、ピクシー・ホロウにティンカー・ベルというかわいらしい妖精が誕生する。自然界に起こる“すばらしい事”は特別な才能を持った妖精たちの仕事だったが、彼女は自分がどんな才能を持って生まれてきたのかまだ知らず、やがて人間界の運命が自分の小さな手に委ねられることにも気付いていなかった。 (シネマトゥデイ)


★仕事に疲れてしまったお父さんにみてもらいたい大人向けアニメ


ティンカー・ベル。当然、みなさんしっての通り、ピーター・パンにでてくるみどりの妖精さんのことです。

一応この作品を見る前にピーター・パンをみてみたんですけど、みといてよかったですね。

まぁ、ただ、ピーター・パン自体はそこまで、おもしろくなかったというか、予想以上に子供向きだったので。。

大人でも楽しめるってのが、素晴らしいアニメだと思うんです。ただ、その点で、ピーター・パンはかなり子供向け、というかむしろ専用だったのでは、というレベルでした。ちょっと残念でした。


その一方でこのティンカー・ベルはまさに大人も楽しめる作品となっています。

子どもは、その映像の美しさ、神秘性に心を奪われ、

大人は、ティンカー・ベルから、仕事、というものに対する素敵なメッセージを受け取ります。


この作品のいいところはまず、その尺の短さでしょうね。

90分きっていますので、中だるみすることなく、テンポよく話が進んでいきます。

僕は基本的に二時間超える作品はそうとう面白くないとしんどいほうなので、かなり楽に見ることができてよかったです。


僕はこの作品のラストシーンの伏線の回収の仕方があっぱれだと思います。

その様はまさに爽快という言葉がぴったり。

結局はめでたし、めでたし、という子供向けの終わり方になるのですが、大人がみると子どもが見たのとは、まったく別の物語を見せられた気になるでしょう。

これはアニメにおける最高の演出で、まさにアニメとはそうであって欲しい。

ピクサー作品はその点で、10割打者といっても過言ではない完成度ですが、ティンカー・ベルも負けず劣らずのいい作品でした。


仕事と労働について、以前ブログで記事を書いたことがあるのですが、まさにこの作品につながる内容だと思います。

人生の楽しみ方なんて、きっと本人の解釈次第なんでしょう。

仕事、というものに対して、勇気と希望を与えてくれる素晴らしい作品です。 おすすめです。



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小中学校合わせても、たった6人の生徒しかいない田舎の分校に、東京から転校生の大沢(岡田将生)がやってきた。そよ(夏帆)は、都会の雰囲気漂う大沢に心ときめくが、彼の冷たく乱暴な言動に戸惑いを覚える。しかし、海水浴でのあるできごとをきっかけに、そよの大沢に対する印象が変化し始める……。 (シネマトゥデイ)


★夏帆がかわいすぎます


こんばんは。

今回は天然コケッコー。

夏帆と、岡田将生。なんですか、このコンビ。キャスティング良すぎでしょう。

男の子はみんな夏帆が大好きです。笑

そして、岡田将生は女の子に人気がめっちゃあるそうですが、この映画みて僕も共感しました。

彼って、声が良いんでしょうね。いや、顔はもちろんですけど。

そんな二人が中学二年生の夏から高校入学までの一年半を演じます。


観た動機ってのが、まぁ、青春ものがみたいなってことと、あとは夏ものがみたいなってことで借りたんですけど、ドンピシャでしたねーこの映画。あんまり期待してなかったんですよ。でも結構良かったですね。

海、森、スイカなどの夏の風物詩ももちろん、

お祭り、バレンタインデー、卒業。青春を感じるシーンばっかりじゃないですか。

クリスマスのシーンがないのは、やっぱりこの作品のメインの季節が夏だから具合が悪かったんですかね。


とにかくね、夏帆が好きな人は有無を言わさず見ろ。と。それほどこの作品における夏帆の魅力が素晴らしいんですよね。天然なところがとにかくかわいい。そして、ちょくちょく悪気もないのに失敗してしまって、めっちゃ反省するところもかわいい。


岡田将生はちょっと、少女マンガチックすぎですかね。

女の子が喜ぶツボを抑えすぎっていうか、まぁきっとできなくはないんでしょうけど、ほとんどの中学二年生にはあそこまでモテるようなこと言えもしないし、できもしないっすわな。


あとは、この作品の構成ですかね。

二時間の枠に一年半を収めなきゃいけないんで、シーンが結構多いんですよね。

これは僕は結構好きでして、

そのシーンごとシーンごと、しっかりラストになんらかしらオチつけて、次のシーンにいってくれるんで、結構楽しかったですね。

でも、別にたいしたこと起きないですよ

それに、この映画は基本的に田舎の良いところしか描いていない。


田舎って僕らがないものねだりで憧れてるだけで、実際何年も暮せって言われたらやっぱしんどいと思うんですよ。それをすっごい楽しそうに描いてるんで、みてる側はちょっとだまされちゃいますよね。

あと、東京に修学旅行にいくんですけど、それも結局田舎との対比で、田舎の方がいいよね、って結論にもっていってたんで。

だからって別にどうでもいいんですけど、結局雰囲気映画ってことには変わりないかな。


夏の景色はそこにストーリーなんてなくとも、見てるだけで、楽しいですし、

制服男女の恋愛を見てれば、それはやっぱ昔を思い出してせつない気持ちになりますよね。別にそこにストーリーはなくともです。

映像だけでも、なにか人の感情に訴えることができるのが映画の強みではありますが、まぁこの映画はその典型といいますか、「いいなぁ」っとにやにやすることの連続ですかね。


ただ、ストーリー的にはなにも起きないですが、

人物の心情描写は非常にうまいなっと思いました。

どういうことかというと、すごいあいまいに描くんですよ。

直接的には描かない。

なんで、夏帆泣いてるの?って、おもうんだけど、なんかその気持ちがわかってしまう。

あれっ、どうしてそこで黙るの?って、おもうんだけど、なんか気持ちがわかってしまう。

どうして、ちょっと不機嫌なの?って、おもうんだけど、なんか気持ちがわかってしまうんですよね~。


それがわかるたんびになんか胸に「じわ~」ってした感覚がきましてね。

まぁ、やっぱり雰囲気映画ですね、笑



ただね、しげちゃんパートだけはほんと意味わかんなかったですね。不快だから、全カットしてもらいたい。笑

やっぱりロリコンって客観的にみると気持ち悪いんですね。

とくに実行にうつそうとしようものならそれはほんと極刑に充てたい気持ちもわかりました。

ほんと夏帆をなんだと思ってるんですか。

まぁ、ここで必死になりすぎると、自分もロリコンだといってるようなものなんでそろそろやめましょう。笑


以上ですかね。

まぁ、今年の夏に一回くらいみてもいいと思いますよ!

最強のふたりコレクターズ・エディション(2枚組)(初回限定仕様) [DVD]/アミューズソフトエンタテインメント
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不慮の事故で全身麻痺(まひ)になってしまった大富豪のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、新しい介護者を探していた。スラム出身の黒人青年ドリス(オマール・シー)は生活保護の申請に必要な不採用通知を目当てに面接にきた不届き者だったが、フィリップは彼を採用することに。すべてが異なる二人はぶつかり合いながらも、次第に友情をはぐくんでいき……。 (シネマトゥデイ)


★いつかドリスあらわれないかしら


いやぁ~これはかなりおもしろかったですね。

もう、かなり。やっぱり思い出してみて、もっかい見てみたいなって思える映画っていい映画ですよね。

TSUTAYAの準新作ランキングでロングヒットをしているこの作品。

半額クーポンがあったので借りてみてみました。

それにしても、最初はあんまり気が進まなかったんですよね~。

ジャケットでみるだけでも、障害者を扱ってるわけで、なんかこう、障害者との接し方のお説教的な、はたまた、それに関するお涙ちょうだい的な。

僕24時間テレビすごい嫌いなんですよ


でも見終わってびっくりしました。

まずびっくりしたのは、もう2時間たってしまったの!?ということ。

あれほどのめりこんでみたことはなかなかないですね。


それと、泣いたんです。とりあえず、泣いたんですけど、

僕のまったく意図してなかったやり方で泣かされてしまった。

この作品には決してお涙ちょうだい的展開はございません。むしろ、その障害をネタにしてくるもんだから、笑ってしまう。


内容に触れていきます。

まず、冒頭から、見る者の心をつかむのがうまいこと、うまいこと。

いきなり、黒人青年と、おいぼれじいさんが乗ってる車を映すシーンから。

しかし、あまりのスピードの出しすぎにパトカーにみつかって追われてしまうんですね。

そこで黒人青年は言います。「警察をまくのに100ユーロ。のるか?」

するとじいさん。「のった。」

この瞬間から、あ、この映画思ってたのと違うと思いましたね。

最強のふたりってそういう感じね。と。

そして流れるアース・ウィンド&ファイアの「September」

洋楽とはいえ、日本でもとても有名な曲です。もうのりのりです。

オープニングはこの曲をバックに二人が軽快に運転する姿を映しながら、はじまります。

この演出は素晴らしいです。ほんとに。

基本的に映画の面白さって時代関係ないとは思うのですけど、こういう演出ごとやらせたら、現代映画は進歩してるなぁって感じますよね。



さて、あらすじを参考にしてもらいたいんですが、ドリスという破天荒な黒人青年が、全身まひの大富豪のフィリップの介護者として働くんですね。

この映画のもう一つ素晴らしいのは、ドリスのキャラクターです。


もちろん、非常識も甚だしいために、最初はめっちゃ周りに煙たがられるんです。

だって、全身不随の人の足に熱湯を何度もかけて「ほんとに感じないんだな!」とか笑いながら言っちゃう男です。笑 (このシーン実際普通に笑えますからご安心を。)


しかし、それでもラストに受け入れられる一番の理由は、ドリスにウソがない。ということです。

きっと今までの介護者はフィリップに対して、同情の面をもって接していたために、言いたいことも言わなかったことは多々あったのでしょう。


そんなドリスとフィリップは仲良くなるにつれて、次第に部屋の中から外へと行動範囲を広げていくわけです。その中のひとつにパラグライダーをやるシーン。

めちゃめちゃ気持ちよさそうです。超このシーン好きです。


それでまぁ、まとめに入るわけですが、この作品って二人の会話劇なんです。

いうなれば、彼らが知らないところで何かイベントが起きるようなサスペンス的要素はまるでない。

一歩間違えれば退屈な映画になってしまう。

なによりこの映画で素晴らしいのは、それをこんなにも観客をのめりこませるように作った監督の手腕でしょう。

ラストの終わり方も泣けますしね。なんだろう、ドリスってすごいいいやつ。


(てか、ラストに至るまでのシーン、絶対どっちか死ぬんだろうな。。やだな。。って思ってたら全然死ななかったですね。笑 久しぶりに誰も死なない映画を見ました。)


きっと、健常者である僕らもドリスのような存在を心のどこかで求めているんだろうなと考えさせられる映画でした。

健常者にもかかわらず、何か社会的なしがらみに束縛されている僕たちは、ある意味では障害者なのかもしれません。そんな窮屈な状況をドリスに救ってもらいたく思ってるのではないでしょうか。


素晴らしい映画です。おすすめです。

リング [DVD]/角川映画
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鈴木光司の人気ホラー小説を「女優霊」の中田秀夫監督が映画化。見ると死んでしまうという謎のビデオテープを巡って繰り広げられるホラー・サスペンス。テレビレポーターの浅川玲子は、見たら一週間後に死ぬというビデオテープの噂を耳にする。にわかには信じられない玲子だったが、姪の死をきっかけにビデオについて調べ始める。やがて、偶然手に入れた問題のビデオを確認のため見た玲子は、その内容に、噂が本当であることを確信する。が、それは7日後の自分の死を意味した……。(allcinema ONLINE)



★Jホラーの金字塔。一度見るだけでは惜しい


こんにちは。

30度を超える日が毎日続く中、ホラーが見たくなってくる季節になりました。

「クロユリ団地」からさかのぼること、15年前の作品です。

クロユリ団地はいまいちでしたが、この「リング」かなり面白いですよ。


「リング」といったら貞子がテレビから出てくるシーンだけが有名ですが、

見てない人も、見たことある人も、それだけしか頭に残ってないようでは、非常にもったいないことです。

たしかに、もはやネタバレでもなんでもないレベルで有名になってしまい、ある意味では結末がわかりきっているこの映画を見る気があまり進まないのはわかります。

しかし、それを差し置いても見る価値がこの映画にはあると思います。


一つには、この作品から、Jホラーが確立したといっても過言ではないということ。

そして、さらにこの作品が最初で最後。一番の傑作ということであります。

あんなにもラストのシーンばかりが有名になってしまい、営業妨害も甚だしいですが、

この作品の完成度とはすばらしい。

7日間というリミットがあるので、画面下に不協和音とともに、日付を表示するところから始まるこの映画の演出がまずすばらしい。というより、じめじめした不協和音を効果的にとりあげるのは、Jホラーぐらいななのではないでしょうか。ハリウッドホラーはなんかドデかい音を鳴らせば良いと思ってるように感じる時があります。


それに、身近なものを題材としている点。

ビデオですよね。もうDVD,はたまたBDにまで至っているメディアでしたが、当時はまだビデオでしたよね。女子高生を登場させる手法もなかなか効果的です。

日本の葬式の場面ってのも、もはや不気味な要素として効果的です。


とにかくね、すべてのいいとこどりなんですよ。


その後のJホラーで似たようなシーンがあったとすればそれはすべて、リングのパクリだといっても過言ではない。着信アリなんか、モロじゃないですか。身近なものに焦点をあてるということでね。

ひょっとしたら、自分にも同じことが起こるかもしれないって思わせるわけです。


話のプロットとしても、なかなかに優れてると思います。

緊張と緩和の連続です。

序盤の竹内結子が出てるシーンが顕著ですよね~。

呪いの電話か、思ったら、身内からの電話だったり。


ちなみにですが、部屋のシーンを映す時、よく登場人物が何やら、冷蔵庫から飲み物を取り出して、飲むって動きがよくみられると思うんですけど、見覚えありますかね。ドラマでもよくやることらしいんですけど。


大学でちょっと、映画の授業を受けてまして、聞いたんですけど、あれって時間稼ぎらしいんですね。

本作でいうと、竹内結子の友達がいったん部屋を出て、竹内一人になるんですが、そのあと冷蔵庫から麦茶取り出して飲むんです。そんで、飲んでるときに、なにやら消えていたテレビが点灯しだして・・・


ってところなんですけど。

要は、友達が出てって、一人になった瞬間テレビが点灯しだすのはちょっとつながり的に避けたいってことで、ちょっと間置くために、時間稼ぎが必要になるんですよ。

そこで、自然に時間稼ぎするために、一番自然な行動は何かっていったら、登場人物に飲み物を飲ませるってことらしいです。

なるほどね~。


はい、豆知識でした。


あと、僕が本作で素晴らしいと思ったところをあと数点。

ホラーとミステリーの融合ですね。

謎解きをストーリーにいれることで、単なるホラーにとどまらず、視聴者が飽きずにみることができる点。


あとはカメラワーク

本作では非常にテレビが象徴的にうつされてます。

ここでおもしろいのが、テレビに反射してる画を何度もとるんですよね。

おもしろいです。


最後に、昼に貞子を出現させたってとこです。

やっぱり、お化けとかって、夜に出るってみんな思ってるじゃないですか。

なにやら出そうだなって思ってたけど、太陽が出てきたらこっちのもん、みたいな。笑

リングはこの概念をぶちこわしてくれました。

これはね、僕たちは、安らぎの時間が無くなりましたね。笑



まぁ、そんなとこです。

一応、貞子出現後に、どんでん返しというか、解決策が語られるのですが(こちらもかなり有名で残念)

ちょっと、気が抜けるなぁ、とは思いましたけどね。

そんなことかい、って。

さすがにテンションが下がってしまうのは否めないですが、盛り上がったラストにさらなる盛り上がりを持ってくる構成は好きですね。


あとね、どうにもつっこみたいシーンがあって、呪いのビデオを検証するために、松嶋菜々子が会社のビデオ試写室みたいなとこで、早送りとか、スローでいろいろ検証してるシーンがあったんですけど、

あそこのドア鍵かけてないんですよねぇ。。。

都合よく、見終わった瞬間、同僚が入ってきたんですが。

あれ、万が一再生途中に同僚が入ってきたら、どう責任をとるつもりなんでしょうか。笑

みせられた側はたまったもんじゃありません。

あそこは、少なくとも、同僚がドアをノックして、松嶋が「ちょっと待ってね」といったん再生をやめ、ドアのカギを開け、中に招き入れる。という描写が絶対必要だと思います。


そこだけが僕はどうして、ちゃんとしてくれなったのかなぁって思うところです。


しかしながら、怖さは何年たっても一級品。

むしろその画質の粗さがまた怖さを増幅させております。

呪いのビデオの出来もすばらしい。

よくあんなもん考えられるもんだ。


前回見てから一年あいているくらいならぜひもう一度みてもらいたい作品。

おすすめです。